[O-0051] 学生における理学療法士像の変化
入学直後と臨床実習後の自己評価に着目して
Keywords:理学療法士像, 縦断研究, 動機づけ
【はじめに,目的】昨今の理学療法士を取り巻く状況が刻々と変化する中,理学療法士を目指して入学し卒業に至るまでの学生は,将来における目的意識や自身の能力に対する自己評価を見据え,日々学んでいる。予測として,本学3年制の学習過程の中で,1年次の時期よりも臨床実習を終えた3年次の学生の方が,将来,職業とする理学療法士像が明確に定まっているであろうと推察する。そこで今回,本学に入学した学生が抱く理学療法士像が,学内教育および臨床実習を経た最終学年において,いかに変化して行くかを経時的に縦断研究し,比較・検証したのでここに報告する。
【方法】平成24年度に本学1年次に入学し,平成26年度10月に臨床実習を全て修了した理学療法学科3年次の学生37名を対象とした。将来,自身が最も理想とする理学療法士像を10点満点とした場合,自身の現在の状態は1点~10点の内いずれに該当するかを回答させた。質問項目は,「知識」「技術」「身だしなみ」「話し方」「振る舞い」の5項目とし,入学直後から各実習後に実施してきた。今回は,入学直後および3年次臨床実習後の同一の学生に対して調査したものを用いた。統計処理は,Spss for Windows Ver16.0を使用し,上記の各項目における前後差の比較に,1元配置の分散分析を行い多重比較検定で検証した。また,Pearsonの相関係数で各項目間の関連性を求め,有意水準を1%未満とした。更に,各々の学生に対し入学当時と臨床実習後の自身とを比較して,理学療法士像が具体的にどのように変化したかを自由記載で求めた。有効回答率は100%であった。
【結果】入学時と臨床実習後の学生の理学療法士像について,「知識」は入学時1.22±0.47,実習後2.84±1.17,「技術」は入学時1.16±0.44,実習後2.78±1.30であり,さらに「身だしなみ」において入学時5.05±1.89,実習後6.65±1.56で臨床実習後に有意な上昇を認めた(p<0.01)。相関関係では,「知識」と「技術」は有意な相関を認めた(p<0.01,入学時r=0.879,実習後r=0.811)。また,「身だしなみ」と「話し方」(p<0.01,入学時r=0.511,実習後r=0.461),「身だしなみ」と「振る舞い」(p<0.01,入学時r=0.610,実習後r=0.522),「話し方」と「振る舞い」(p<0.01,入学時r=0.888,実習後r=0.804)についても有意な相関を認めた。しかし,「知識」や「技術」と情意領域との相関関係は「身だしなみ」の相関は高いものの,「話し方」や「振る舞い」においての相関関係は低い結果となった。更に,自由記載においても「技術」や「話し方」,「振舞い」の内容について,自身を中心に考える傾向にあった入学直後と比較し,臨床実習後では患者様を中心に見据えた理学療法士像の記載内容が多くなり,変化が見られた。
【考察】本研究における学生の入学直後と臨床実習後の理学療法士像の比較では,「知識」や「技術」さらには「身だしなみ」の項目に有意な上昇がみられ,また情意領域の3項目間においてはかなり強い相関関係を認めた。しかし,「知識」や「技術」に上昇が見られた反面,それらと「話し方」や「振舞い」の相関が弱い結果があり,必ずしも臨床実習後に「話し方」や「振舞い」が向上するものではないことを示唆した。これらの理由として,入学直後と臨床実習後の数値的変化だけでは読み取れない部分があるのではないかと考えられる。それは,対象とした各学生の自由記載にある通り,3年次の臨床実習に行く事で,現場のセラピストと自身の「話し方」や「振舞い」に少なからず違いを感じるようである。その結果,入学時に高い点数を自己評価として記入した同一の学生が,3年次では低い点数になっている事や,到達度不足を掲げている事として現れていると言える。しかし,臨床実習後に患者様を主体に考える意見が多く聞かれた事は,入学時は単に自身が将来なりたいと思うだけの理学療法士像と比べ,より現場のセラピストに近づきつつあると言える。今後も継続的に学生の理学療法士像を把握し,学内や臨床実習での動機づけを明確にすると共に,社会のニーズに見合う理学療法士の育成に努めて行きたいと考える。
【理学療法学研究としての意義】早期から具体的に学生自身の理学療法士像を考えさせる事は,学習に対する内的な動機づけを持って取り組むことを可能とし,学習効果を高める事に繋がると考える。よって,本研究は養成校として,教育の質の向上に役立つと考える。
【方法】平成24年度に本学1年次に入学し,平成26年度10月に臨床実習を全て修了した理学療法学科3年次の学生37名を対象とした。将来,自身が最も理想とする理学療法士像を10点満点とした場合,自身の現在の状態は1点~10点の内いずれに該当するかを回答させた。質問項目は,「知識」「技術」「身だしなみ」「話し方」「振る舞い」の5項目とし,入学直後から各実習後に実施してきた。今回は,入学直後および3年次臨床実習後の同一の学生に対して調査したものを用いた。統計処理は,Spss for Windows Ver16.0を使用し,上記の各項目における前後差の比較に,1元配置の分散分析を行い多重比較検定で検証した。また,Pearsonの相関係数で各項目間の関連性を求め,有意水準を1%未満とした。更に,各々の学生に対し入学当時と臨床実習後の自身とを比較して,理学療法士像が具体的にどのように変化したかを自由記載で求めた。有効回答率は100%であった。
【結果】入学時と臨床実習後の学生の理学療法士像について,「知識」は入学時1.22±0.47,実習後2.84±1.17,「技術」は入学時1.16±0.44,実習後2.78±1.30であり,さらに「身だしなみ」において入学時5.05±1.89,実習後6.65±1.56で臨床実習後に有意な上昇を認めた(p<0.01)。相関関係では,「知識」と「技術」は有意な相関を認めた(p<0.01,入学時r=0.879,実習後r=0.811)。また,「身だしなみ」と「話し方」(p<0.01,入学時r=0.511,実習後r=0.461),「身だしなみ」と「振る舞い」(p<0.01,入学時r=0.610,実習後r=0.522),「話し方」と「振る舞い」(p<0.01,入学時r=0.888,実習後r=0.804)についても有意な相関を認めた。しかし,「知識」や「技術」と情意領域との相関関係は「身だしなみ」の相関は高いものの,「話し方」や「振る舞い」においての相関関係は低い結果となった。更に,自由記載においても「技術」や「話し方」,「振舞い」の内容について,自身を中心に考える傾向にあった入学直後と比較し,臨床実習後では患者様を中心に見据えた理学療法士像の記載内容が多くなり,変化が見られた。
【考察】本研究における学生の入学直後と臨床実習後の理学療法士像の比較では,「知識」や「技術」さらには「身だしなみ」の項目に有意な上昇がみられ,また情意領域の3項目間においてはかなり強い相関関係を認めた。しかし,「知識」や「技術」に上昇が見られた反面,それらと「話し方」や「振舞い」の相関が弱い結果があり,必ずしも臨床実習後に「話し方」や「振舞い」が向上するものではないことを示唆した。これらの理由として,入学直後と臨床実習後の数値的変化だけでは読み取れない部分があるのではないかと考えられる。それは,対象とした各学生の自由記載にある通り,3年次の臨床実習に行く事で,現場のセラピストと自身の「話し方」や「振舞い」に少なからず違いを感じるようである。その結果,入学時に高い点数を自己評価として記入した同一の学生が,3年次では低い点数になっている事や,到達度不足を掲げている事として現れていると言える。しかし,臨床実習後に患者様を主体に考える意見が多く聞かれた事は,入学時は単に自身が将来なりたいと思うだけの理学療法士像と比べ,より現場のセラピストに近づきつつあると言える。今後も継続的に学生の理学療法士像を把握し,学内や臨床実習での動機づけを明確にすると共に,社会のニーズに見合う理学療法士の育成に努めて行きたいと考える。
【理学療法学研究としての意義】早期から具体的に学生自身の理学療法士像を考えさせる事は,学習に対する内的な動機づけを持って取り組むことを可能とし,学習効果を高める事に繋がると考える。よって,本研究は養成校として,教育の質の向上に役立つと考える。