[O-0052] 呼吸法による咳嗽発作の回避法の検討
キーワード:咳嗽, Chest wallメカニクス, 咳嗽回避呼吸法
【はじめに,目的】
咳嗽は排痰や誤嚥による異物を排出するといった肺を守る重要な防御神経反射の一つであるが,一方継続する連続する咳嗽は多大なエネルギーを消費して呼吸筋に大きな負荷となり,筋肉痛や時には肋骨骨折の原因となる。また周囲への気遣い配慮等よりADL・QOLの阻害因子となる。従来咳嗽の機序として吸気→声門閉鎖→呼吸筋収縮→声門解放といった過程が言われてきたが,我々はChest wallメカニクスの観点より咳嗽の機序を明らかにし,呼吸筋が主要な役割を持つことを報告してきた。今回,咳嗽を回避する呼吸法について検討したので報告する。
【方法】対象は健常成人とし。測定パラメータは,ニューモタコメーターにて換気量,気流速の換気諸量を計測し,レスピトレースを胸壁と腹壁に装着して胸部と腹部の動きを測定し,アイソ ボリューム法で校正したのち胸・腹部換気量(Vrc,Vab)を算出しK-Mダイアグラムで解析した。同時に胃・食道バールーン法にて胸腔内圧・腹腔内圧(Pes,Pga),および経横隔膜圧(⊿Pdi)を測定した。咳嗽時のChest wallメカニクスを解析し後,咳嗽を回避する呼吸法を検討した。咳嗽の誘発方法は,自発的誘発,自然咳,胡椒,カプサイシンによる刺激誘発により行った。
【結果】
①咳嗽時のchest wallメカニズム解析結果
K-Mダイアグラムの解析により,咳嗽時はまず横隔膜膜の収縮によって胸腔内は陰圧化と腹腔内陽圧度が増大し吸気フローが開始してより肺内への大気流入が起きる。吸気終了時には横隔膜(Pdi)は収縮に腹筋の収縮が加わり,胸部(Vrc)と腹部(Vab)はK-Mダイアグラム上のiso-volume lineに沿った動きが観察され,咳嗽のためのエネルギーを腹部に蓄積する状態が示唆された。その後腹腔内に蓄積されたエネルギー(Pab上昇)により一気に呼出が始まり(Vrc低下とPgaの上昇)咳嗽となる。以上咳嗽発生までの経過は①準備期:吸気による気量の蓄積②横隔膜収縮と腹部筋群による呼出エネルギーの腹腔内蓄積期③呼出(咳)の呼出期の三段階からなる。
②咳嗽の回避呼吸法
発生機序に基づき咳の回避法としては,①腹筋収縮によりFRCを下げて準備期を回避(Vabの低下)し,②頸部吸気筋による横隔膜収縮による腹部エネルギー蓄積の防止(Pdiの抑制,Pgaの抑制)する呼吸法が考えられた。具体的には,まず腹部を内方に引き込んだ状態で頚部吸気補筋を使って呼吸を行う呼吸法である。
【考察】
咳嗽は気道壁受容体から呼吸筋への不随意的神経反射であるが,一方呼吸筋は複数の筋群からなり随意的に調節収縮ができる。今回,咳嗽は腹筋と横隔膜の収縮により腹部に蓄えられたエネルギーが呼出力に変換して起きる機序が明らかになった。従って横隔膜,腹筋を随意的に作動させてchest wall configurationを変化させることにより腹腔内エネルギーを放出して咳嗽を回避できる方法が考えられる。過剰な連続する咳嗽は身体に対するダメージが大きく,COPD患者では換気メカニズムの破綻を来し呼吸筋疲労している状態では,より呼吸困難感を強めADL,さらにはQOLに影響を与えるため咳嗽のコントロールを必要とする場合もあると考える。今回の検討により,呼吸法での過剰な咳嗽による呼吸筋への負荷の軽減が可能と考えられた。
【理学療法研究としての意義】
咳嗽は呼吸器系を守る重要な防御反射であるが,頻回になると体力の消耗,呼吸筋疲労,周囲に対する心理的ストレス等の問題も起きてくる。これら過剰な咳嗽をコントロールすることで,外出時や活動の妨げを少なくし,また呼吸筋疲労の増長を回避することで,COPD患者のADLやQOLに寄与するものと考える。
咳嗽は排痰や誤嚥による異物を排出するといった肺を守る重要な防御神経反射の一つであるが,一方継続する連続する咳嗽は多大なエネルギーを消費して呼吸筋に大きな負荷となり,筋肉痛や時には肋骨骨折の原因となる。また周囲への気遣い配慮等よりADL・QOLの阻害因子となる。従来咳嗽の機序として吸気→声門閉鎖→呼吸筋収縮→声門解放といった過程が言われてきたが,我々はChest wallメカニクスの観点より咳嗽の機序を明らかにし,呼吸筋が主要な役割を持つことを報告してきた。今回,咳嗽を回避する呼吸法について検討したので報告する。
【方法】対象は健常成人とし。測定パラメータは,ニューモタコメーターにて換気量,気流速の換気諸量を計測し,レスピトレースを胸壁と腹壁に装着して胸部と腹部の動きを測定し,アイソ ボリューム法で校正したのち胸・腹部換気量(Vrc,Vab)を算出しK-Mダイアグラムで解析した。同時に胃・食道バールーン法にて胸腔内圧・腹腔内圧(Pes,Pga),および経横隔膜圧(⊿Pdi)を測定した。咳嗽時のChest wallメカニクスを解析し後,咳嗽を回避する呼吸法を検討した。咳嗽の誘発方法は,自発的誘発,自然咳,胡椒,カプサイシンによる刺激誘発により行った。
【結果】
①咳嗽時のchest wallメカニズム解析結果
K-Mダイアグラムの解析により,咳嗽時はまず横隔膜膜の収縮によって胸腔内は陰圧化と腹腔内陽圧度が増大し吸気フローが開始してより肺内への大気流入が起きる。吸気終了時には横隔膜(Pdi)は収縮に腹筋の収縮が加わり,胸部(Vrc)と腹部(Vab)はK-Mダイアグラム上のiso-volume lineに沿った動きが観察され,咳嗽のためのエネルギーを腹部に蓄積する状態が示唆された。その後腹腔内に蓄積されたエネルギー(Pab上昇)により一気に呼出が始まり(Vrc低下とPgaの上昇)咳嗽となる。以上咳嗽発生までの経過は①準備期:吸気による気量の蓄積②横隔膜収縮と腹部筋群による呼出エネルギーの腹腔内蓄積期③呼出(咳)の呼出期の三段階からなる。
②咳嗽の回避呼吸法
発生機序に基づき咳の回避法としては,①腹筋収縮によりFRCを下げて準備期を回避(Vabの低下)し,②頸部吸気筋による横隔膜収縮による腹部エネルギー蓄積の防止(Pdiの抑制,Pgaの抑制)する呼吸法が考えられた。具体的には,まず腹部を内方に引き込んだ状態で頚部吸気補筋を使って呼吸を行う呼吸法である。
【考察】
咳嗽は気道壁受容体から呼吸筋への不随意的神経反射であるが,一方呼吸筋は複数の筋群からなり随意的に調節収縮ができる。今回,咳嗽は腹筋と横隔膜の収縮により腹部に蓄えられたエネルギーが呼出力に変換して起きる機序が明らかになった。従って横隔膜,腹筋を随意的に作動させてchest wall configurationを変化させることにより腹腔内エネルギーを放出して咳嗽を回避できる方法が考えられる。過剰な連続する咳嗽は身体に対するダメージが大きく,COPD患者では換気メカニズムの破綻を来し呼吸筋疲労している状態では,より呼吸困難感を強めADL,さらにはQOLに影響を与えるため咳嗽のコントロールを必要とする場合もあると考える。今回の検討により,呼吸法での過剰な咳嗽による呼吸筋への負荷の軽減が可能と考えられた。
【理学療法研究としての意義】
咳嗽は呼吸器系を守る重要な防御反射であるが,頻回になると体力の消耗,呼吸筋疲労,周囲に対する心理的ストレス等の問題も起きてくる。これら過剰な咳嗽をコントロールすることで,外出時や活動の妨げを少なくし,また呼吸筋疲労の増長を回避することで,COPD患者のADLやQOLに寄与するものと考える。