[O-0084] 地域住民主体で運営している骨粗鬆症と転倒の予防教室参加者と一般住民の骨密度と体力の比較
Keywords:転倒予防, 生活習慣病予防, 健康増進
【はじめに,目的】
一昨年の本学会において,住民主体で行った骨粗鬆症と転倒の予防教室(以下予防教室)の長期的効果について発表した。その結果は骨粗鬆症や転倒の予防に効果があるといわれている体力は全体で維持向上している項目が多く,低下や変動していた項目も高い値を維持していた。しかし,骨密度は長期的には年齢とともに低下していた。そこで今回は,予防教室に参加していて運動が習慣化している住民(教室群)と,参加していない一般住民(一般群)を対象に骨密度と体力を比較分析して,予防教室の効果を検討することを目的とした。
【方法】
対象は女性で教室群89名(年齢:平均±SD;68.2±6.2歳),一般群82名(66.0±5.1歳)であった。身体特性(身長,体重,アームスパン)を測定し,骨密度は超音波法で踵骨の音響的評価値(OSI)を測定して若年成人平均値(YAM%)と同年齢平均値(同年齢%)を求めた。体力は握力,上体起こし,長座体前屈,開眼片足立ち,10m障害物歩行,6分間歩行を文部科学省の新体力テスト(65歳~79歳対象)の方法で,Time up and go test(TUG)を一般化している方法で測定した。統計分析はIBM SPSS Statistics 21を用いて,教室群と一般群の各測定値を正規検定後,t-検定ないしはMann-Whitney検定を行って比較した。
【結果】
教室群と一般群を比較すると,年齢と身体特性に有意差はなかった。骨密度は,教室群と一般群でYAM%(平均±SD)76.8±7.8%と75.9±9.1%,同年齢%92.0±9.0%と90.0±10.7%となり,YAM%,同年齢%ともに教室群は高いが有意差はなかった。体力は教室群と一般群を比較すると,開眼片足立ち時間が101.3±33.1秒と90.8±38.9秒で教室群が有意に長く(p=0.047),6分間歩行距離は568.2±65.7mと512.1±56.7mで教室群が有意に長距離を歩行し(p<0.001),障害物歩行時間は7.0±1.3秒と7.9±1.3秒(p<0.001),TUGは6.0±1.0秒と6.5±1.1秒(p=0.008)といずれも有意に速く,上体起こし回数も10.6±6.3回と7.3±6.1回と教室群が有意に多かった(p=0.001)。握力は25.6±3.6kgと26.3±3.7kg,長座体前屈は41.3±7.7cmと40.6±7.8cmとなり有意差はなかった。
【考察】
骨密度は両群とも低下しており,有意差はなかった。しかし,骨粗鬆症と転倒の予防に重要な体力といわれているバランス能力を示す開眼片足立ち時間,歩行能力の指標となる6分間歩行,10m障害物歩行,TUGと,体幹筋力を代表する起き上がり回数は教室群が有意に優れていた。教室の頻度は月1~2回なので,教室への参加だけではトレーニング効果はないと考えられる。教室は平成15年に最初の教室に参加し,その後平成20年に「骨粗鬆症と転倒の予防教室」リーダー養成教室に参加した住民が21年より主体となって運営している。教室では運動の基本を体得したリーダーが体操を指導し,年に数回食事会やレクリエーションもかねてウォーキングをしたり,小旅行へ行ったりして,仲間を作り長く運動を続けるようにしている。このようにして教室の参加者は仲間作りをしながら運動を習慣化させたため,一般群に比べて体力については優れていた項目が多かったと推察される。高齢者でも運動を習慣化し,仲間を作り楽しみながら継続していると体力は維持向上できることを示している。
【理学療法学研究としての意義】
寝たきりの原因として,循環器疾患についで骨折や関節疾患が挙げられている。高齢社会において健康寿命を延ばすためには,骨粗鬆症と転倒を予防することが重要である。本研究は,骨粗鬆症と転倒の予防に対して理学療法士が関与した運動指導によって,高齢になっても体力を維持増強できることを示している。
一昨年の本学会において,住民主体で行った骨粗鬆症と転倒の予防教室(以下予防教室)の長期的効果について発表した。その結果は骨粗鬆症や転倒の予防に効果があるといわれている体力は全体で維持向上している項目が多く,低下や変動していた項目も高い値を維持していた。しかし,骨密度は長期的には年齢とともに低下していた。そこで今回は,予防教室に参加していて運動が習慣化している住民(教室群)と,参加していない一般住民(一般群)を対象に骨密度と体力を比較分析して,予防教室の効果を検討することを目的とした。
【方法】
対象は女性で教室群89名(年齢:平均±SD;68.2±6.2歳),一般群82名(66.0±5.1歳)であった。身体特性(身長,体重,アームスパン)を測定し,骨密度は超音波法で踵骨の音響的評価値(OSI)を測定して若年成人平均値(YAM%)と同年齢平均値(同年齢%)を求めた。体力は握力,上体起こし,長座体前屈,開眼片足立ち,10m障害物歩行,6分間歩行を文部科学省の新体力テスト(65歳~79歳対象)の方法で,Time up and go test(TUG)を一般化している方法で測定した。統計分析はIBM SPSS Statistics 21を用いて,教室群と一般群の各測定値を正規検定後,t-検定ないしはMann-Whitney検定を行って比較した。
【結果】
教室群と一般群を比較すると,年齢と身体特性に有意差はなかった。骨密度は,教室群と一般群でYAM%(平均±SD)76.8±7.8%と75.9±9.1%,同年齢%92.0±9.0%と90.0±10.7%となり,YAM%,同年齢%ともに教室群は高いが有意差はなかった。体力は教室群と一般群を比較すると,開眼片足立ち時間が101.3±33.1秒と90.8±38.9秒で教室群が有意に長く(p=0.047),6分間歩行距離は568.2±65.7mと512.1±56.7mで教室群が有意に長距離を歩行し(p<0.001),障害物歩行時間は7.0±1.3秒と7.9±1.3秒(p<0.001),TUGは6.0±1.0秒と6.5±1.1秒(p=0.008)といずれも有意に速く,上体起こし回数も10.6±6.3回と7.3±6.1回と教室群が有意に多かった(p=0.001)。握力は25.6±3.6kgと26.3±3.7kg,長座体前屈は41.3±7.7cmと40.6±7.8cmとなり有意差はなかった。
【考察】
骨密度は両群とも低下しており,有意差はなかった。しかし,骨粗鬆症と転倒の予防に重要な体力といわれているバランス能力を示す開眼片足立ち時間,歩行能力の指標となる6分間歩行,10m障害物歩行,TUGと,体幹筋力を代表する起き上がり回数は教室群が有意に優れていた。教室の頻度は月1~2回なので,教室への参加だけではトレーニング効果はないと考えられる。教室は平成15年に最初の教室に参加し,その後平成20年に「骨粗鬆症と転倒の予防教室」リーダー養成教室に参加した住民が21年より主体となって運営している。教室では運動の基本を体得したリーダーが体操を指導し,年に数回食事会やレクリエーションもかねてウォーキングをしたり,小旅行へ行ったりして,仲間を作り長く運動を続けるようにしている。このようにして教室の参加者は仲間作りをしながら運動を習慣化させたため,一般群に比べて体力については優れていた項目が多かったと推察される。高齢者でも運動を習慣化し,仲間を作り楽しみながら継続していると体力は維持向上できることを示している。
【理学療法学研究としての意義】
寝たきりの原因として,循環器疾患についで骨折や関節疾患が挙げられている。高齢社会において健康寿命を延ばすためには,骨粗鬆症と転倒を予防することが重要である。本研究は,骨粗鬆症と転倒の予防に対して理学療法士が関与した運動指導によって,高齢になっても体力を維持増強できることを示している。