第50回日本理学療法学術大会

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口述

口述11

管理運営2

Fri. Jun 5, 2015 11:20 AM - 12:20 PM 第11会場 (ガラス棟 G610)

座長:日高正巳(兵庫医療大学 リハビリテーション学部)

[O-0086] 高齢化率30%を超える2025年問題に直面している高齢化疎地域の回復期リハビリテーション病棟の挑戦

~回復期病棟60日オペレーション~

新谷大輔, 橋本翔, 米田税 (恩賜財団済生会みすみ病院)

Keywords:FIM, 退院支援, EBM

【はじめに,目的】
わが国に回復期リハビリテーション病院(以下回復期)は1459施設,1547病棟,38316床存在し,人口10万人あたり53床存在する。回復期では在宅復帰を目的に医療・リハビリテーションが提供されている。回復期への入院期間は,各疾患により定められているが,回復期の報告で入棟期間の短縮に対する取り組みの報告は少なく,入院期間内に可能な限りの機能回復を図り,ADLの向上に努めるのが主流となっている。しかしながら,医療費の削減と必要な医療・リハビリテーションの提供とは相反し,回復期病棟であっても地域の社会資源の状況によって社会的入院を受け入れているという現状がある。当院では早期入棟,早期退院を実践し,住み慣れた地域に帰す,地域づくりに貢献するという取り組みを行っており,今後の2025年問題と回復期について考えていきた。
【方法】
平成25年4月から平成26年3月に回復期病棟退棟患者196名をA群,平成26年4月から9月に回復期病棟退棟患者121名をB群とした。このうち,急性期病棟へ治療のため転棟した患者,再入棟等の患者,死亡した患者を除外し,A群170名,B群113名を対象とした。調査項目は年齢,1日平均リハ単位数(以下平均単位),在院日数,発症から入棟までの日数(以下入棟まで日数),回復期入棟日数(以下入棟日数),入棟時FIM,退棟時FIM,FIM利得,FIM効率,在宅復帰率,自宅復帰率を調査した。統計には,それぞれのデータに対応のないt検定を用い,有意水準を0.05以下とした。
【結果】
それぞれの平均(A群/B群/p値)は,年齢(77.2±11.2/78.4±10.8/0.43847),平均単位(6.8±0.9/6.9±0.9/0.295156)在院日数(74.8±35.2/62.1±35.3/0.003208)入棟まで日数(11.6±8.2/10.5±8.1/0.089313)入棟日数(63.2±34.6/52.1±33.1/0.008936)入院時FIM(66.2±29.2/70.6±30.1/0.140048)退院時FIM(92.9±33.5/96.6±31.2/0.320905),FIM利得(26.7±19.1/26.0±18.4/0.196456)FIM効率(0.422/0.499)在宅復帰率(86/88)自宅復帰率(74/76)であった。
【考察】
A群とB群で有意差を認めた項目は,在院日数と入棟日数であった。これは,早期入棟,早期退院を目標に60日オペレーションを意識的に実施したことにある。具体的には入棟初月より,在宅復帰の希望の有無を確認し,施設希望の場合は1カ月目よりMSWによる施設への情報提供と入所調整を行うこと。在宅でも訪問リハで継続してリハビリテーションが行える説明を行った。回復期では理学療法による移動手段の獲得,作業療法による排泄の獲得,看護師による生活支援を主眼にチームアプローチを行い,早期に退院後も継続してリハビリテーションが必要な場合は訪問へと繋ぐシステムを構築し,過疎地域での地域資源の脆弱な部分を訪問リハビリテーションの充実で補った(3名体制から7名体制)。これらの取り組みにより早期の退院支援が可能になったと考察した。一方で,早期入棟,早期退院の取り組みにより,入棟時に軽症を選別する傾向にないか。退院時のFIMの点数が低下する可能性が考えられたがFIM利得の変化も含め有意差なく,むしろ在宅復帰率と自宅復帰率が向上した。さらに,FIM効率の高さは特筆する結果となった。
【理学療法学研究としての意義】
2025年問題に対し,回復期が行うべきリハビリテーションと適正運用について問題提起するとともに回復期の効果を示し,必要性を政府に示していきたい。