[O-0087] 大腿骨近位部骨折患者に対するリハビリテーション実施単位数とその必要性に関する検証
Keywords:大腿骨近位部骨折, 単位数, 回復期リハビリテーション病棟
【目的】
2006年4月の診療報酬改定より,回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)においては,1日9単位までのリハ施行が可能となった。リハ実施単位数増加に伴いADLが向上する等の有効性が報告されてはいるものの,その多くは脳血管疾患を対象としたものであり,運動器疾患に対しては2単位程度でも有効とする先行研究もある等,賛否が分かれている状況である。そこで今回,回復期リハ病棟において代表的な運動器疾患である大腿骨近位部骨折を対象とし,リハ実施単位数とその必要性に関して検証する事を目的とした。
【方法】
対象は,2010年4月から2014年5月までの期間に,当院回復期リハ病棟に入退院し,除外基準を満たさない患者123例。除外基準としては,重度の認知症等によりリハ実施困難,入院前のADLが要介助レベル,既往歴に脳血管疾患及び大腿骨近位部骨折を有する患者,合併症に心不全等の重篤内科的疾患を有する患者,他部位の骨折を併発,発症前の生活場所が自宅以外の患者,天井効果を除く目的から入院時FIM108~126点の患者とした。これらの患者を個別リハ実施単位数により,平均単位数が2.0~3.9単位までを2単位群10例(平均年齢92.7±10.1歳),4.0~5.9単位までを4単位群94例(平均年齢86.1±9.9歳),6.0~7.9単位までを6単位群19例(平均年齢85.8±5.5歳)の3群に分類した。調査項目としては,年齢,性別,発症日,入退院日,個別リハ単位数,入退院時及び入院から4週毎のFIM,転帰先に関して後方視的に調査を行い,これらより個別リハ平均単位数,平均在院日数,FIM利得,FIM効率,自宅復帰率を算出した。転帰先に関しては,より正確な自宅復帰率を調査する目的から,発症前と同住居に退院したものを自宅退院と定義し,自宅に相当するケアハウス等は施設とした。統計学的処理は,3群間の比較及び各群における入院経過とFIM効率との関係性に関してはKruskal-Wallis検定を用い,多重比較検定としてScheffeの方法を行った。また,個別リハ平均単位数とFIM利得との関係性に関してはSpearmanの順位相関係数を用いて検討を行い,いずれも有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
平均在院日数は2単位群39.3日,4単位群51.0日,6単位群59.8日であり,2単位群と6単位群との間で有意差が認められた(p<0.05)。FIM利得は2単位群17.0点,4単位群19.2点,6単位群21.4点であり,有意差は認められなかった。自宅復帰率は2単位群40.0%,4単位群70.2%,6単位群68.4%であり,2単位群と4単位及び6単位群との間で有意差が認められた(p<0.05)。各群における入院経過とFIM効率との関係性においては,4単位群にのみ入院時~4週と4~8週及び8~12週との間で有意差が認められた(p<0.01)。個別リハ平均単位数とFIM利得との関係性においては,有意な相関は認められなかった。
【考察】
3群間においてFIM利得に有意差が認められず,個別リハ平均単位数とFIM利得との関係性においても相関が示されなかった事から,リハ実施単位数増加に比例してADLが向上する結果は示されなかった。平均在院日数では,2単位群が有意に短縮していたが,自宅復帰率が低下していた事を考慮すると,早期に施設への退院調整がなされた事が影響を及ぼしていると思われる。各群における入院経過とFIM効率との関係性においては,4単位群にのみ有意差が認められ,入院後早期ほどFIM効率が大きい事が示された。これらの事から,自宅復帰を促す為には4単位以上のリハ実施単位数の必要性が伺えるが,これは本研究の基準を満たした対象者に対しての結果であり,認知症を有する患者,入院前より要介助レベルにある患者等に対しては別途検証が必要である。その為,今後は個々の病態に応じた比較検討を行うとともに,その質的内容に関しても検証する事が課題と考える。
【理学療法学研究としての意義】
リハビリテーションにおいて,効率性を求める事は重要であるが,質の高い社会復帰を果たす為には,一定数以上の介入は必要と思われる。本研究は,大腿骨近位部骨折患者に対するリハ実施単位数の必要性を検証する上で意義あるものであり,その一助になると考える。
2006年4月の診療報酬改定より,回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)においては,1日9単位までのリハ施行が可能となった。リハ実施単位数増加に伴いADLが向上する等の有効性が報告されてはいるものの,その多くは脳血管疾患を対象としたものであり,運動器疾患に対しては2単位程度でも有効とする先行研究もある等,賛否が分かれている状況である。そこで今回,回復期リハ病棟において代表的な運動器疾患である大腿骨近位部骨折を対象とし,リハ実施単位数とその必要性に関して検証する事を目的とした。
【方法】
対象は,2010年4月から2014年5月までの期間に,当院回復期リハ病棟に入退院し,除外基準を満たさない患者123例。除外基準としては,重度の認知症等によりリハ実施困難,入院前のADLが要介助レベル,既往歴に脳血管疾患及び大腿骨近位部骨折を有する患者,合併症に心不全等の重篤内科的疾患を有する患者,他部位の骨折を併発,発症前の生活場所が自宅以外の患者,天井効果を除く目的から入院時FIM108~126点の患者とした。これらの患者を個別リハ実施単位数により,平均単位数が2.0~3.9単位までを2単位群10例(平均年齢92.7±10.1歳),4.0~5.9単位までを4単位群94例(平均年齢86.1±9.9歳),6.0~7.9単位までを6単位群19例(平均年齢85.8±5.5歳)の3群に分類した。調査項目としては,年齢,性別,発症日,入退院日,個別リハ単位数,入退院時及び入院から4週毎のFIM,転帰先に関して後方視的に調査を行い,これらより個別リハ平均単位数,平均在院日数,FIM利得,FIM効率,自宅復帰率を算出した。転帰先に関しては,より正確な自宅復帰率を調査する目的から,発症前と同住居に退院したものを自宅退院と定義し,自宅に相当するケアハウス等は施設とした。統計学的処理は,3群間の比較及び各群における入院経過とFIM効率との関係性に関してはKruskal-Wallis検定を用い,多重比較検定としてScheffeの方法を行った。また,個別リハ平均単位数とFIM利得との関係性に関してはSpearmanの順位相関係数を用いて検討を行い,いずれも有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】
平均在院日数は2単位群39.3日,4単位群51.0日,6単位群59.8日であり,2単位群と6単位群との間で有意差が認められた(p<0.05)。FIM利得は2単位群17.0点,4単位群19.2点,6単位群21.4点であり,有意差は認められなかった。自宅復帰率は2単位群40.0%,4単位群70.2%,6単位群68.4%であり,2単位群と4単位及び6単位群との間で有意差が認められた(p<0.05)。各群における入院経過とFIM効率との関係性においては,4単位群にのみ入院時~4週と4~8週及び8~12週との間で有意差が認められた(p<0.01)。個別リハ平均単位数とFIM利得との関係性においては,有意な相関は認められなかった。
【考察】
3群間においてFIM利得に有意差が認められず,個別リハ平均単位数とFIM利得との関係性においても相関が示されなかった事から,リハ実施単位数増加に比例してADLが向上する結果は示されなかった。平均在院日数では,2単位群が有意に短縮していたが,自宅復帰率が低下していた事を考慮すると,早期に施設への退院調整がなされた事が影響を及ぼしていると思われる。各群における入院経過とFIM効率との関係性においては,4単位群にのみ有意差が認められ,入院後早期ほどFIM効率が大きい事が示された。これらの事から,自宅復帰を促す為には4単位以上のリハ実施単位数の必要性が伺えるが,これは本研究の基準を満たした対象者に対しての結果であり,認知症を有する患者,入院前より要介助レベルにある患者等に対しては別途検証が必要である。その為,今後は個々の病態に応じた比較検討を行うとともに,その質的内容に関しても検証する事が課題と考える。
【理学療法学研究としての意義】
リハビリテーションにおいて,効率性を求める事は重要であるが,質の高い社会復帰を果たす為には,一定数以上の介入は必要と思われる。本研究は,大腿骨近位部骨折患者に対するリハ実施単位数の必要性を検証する上で意義あるものであり,その一助になると考える。