第50回日本理学療法学術大会

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口述

口述11

管理運営2

Fri. Jun 5, 2015 11:20 AM - 12:20 PM 第11会場 (ガラス棟 G610)

座長:日高正巳(兵庫医療大学 リハビリテーション学部)

[O-0088] 当院における退院前訪問実施時期の疾患別による検討

野坂進之介, 今田健 (社会福祉法人こうほうえん錦海リハビリテーション病院リハビリテーション技術部)

Keywords:退院前訪問, 実施時期, 疾患別

【はじめに,目的】
当院の退院前訪問では,患者本人の動作確認や患者家族への介助指導,必要に応じた住環境整備の提案などを行っている。曽我は退院前訪問による住環境整備を行う上で,疾患の特異性を考慮することが重要であると述べている。当院の退院前訪問が疾患ごとによって実施時期が異なるのか疑問に感じた。本報告の目的は,当院における退院前訪問実施時期が疾患ごとで特徴を有するか明らかにすることである。
【方法】
対象は平成25年4月1日から平成26年3月31日までに当院に入退院した162例のうち,死亡または転帰先が急性期病院となった28例を除外した134例であった。方法は,ファイルメーカーと退院前訪問報告書より性別,年齢,転帰先,本人の同行の有無,疾患名,入院期間,入院日から退院前訪問実施日までの期間,電子カルテより退院前訪問実施日のFunctional independence measure(以下,FIM)総得点,入退院時のFIM総得点について後方視的に調査を行った。入院期間のどの時期に退院前訪問を実施しているかは,入院から退院前訪問実施までの平均期間を平均入院期間で割り算することにより算出した。また,疾患別では脳血管疾患,運動器疾患,廃用症候群の3群間,FIM総得点は入院日,退院前訪問実施日,退院日の3群間に分けて統計処理を行った。統計処理には,等分散で正規分布に従う場合は一元配置分散分析を行い,その後Tukey法による多重比較検定を行った。離散データの場合はKruskal-Wallis検定を行い,有意差が認められた場合にはSteel-Dwass法による多重比較検定を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
134例のうち退院前訪問の実施者は49例であり,退院前訪問の実施率は36.6%であった。退院前訪問の実施者49例のうち男性26例,女性23例であった。平均年齢は76.9±11.4歳であり,転帰先の内訳は,在宅への退院が45例,療養型病院への転院2例,老人保健施設への退所が2例であった。本人同行の有無は,同行有りが42例,同行なしが7例であり,同行ありが85.7%であった。疾患別では,脳血管疾患は29例の59.2%,運動器疾患は16例の33.7%,廃用症候群は4例の8.2%であった。全体の平均入院期間は91.1±40.5日であり,疾患別の平均入院期間は,脳血管疾患が108.8±41.5日,運動器疾患が66.9±20.3日,廃用症候群が60.3±25.8日であり,脳血管疾患と運動器疾患,脳血管疾患と廃用症候群の間に有意差を認めた。入院から退院前訪問実施までの平均期間は54.1±33.9日であり,疾患別では,脳血管疾患59.8±29.3日,運動器疾患41.0±18.3日,廃用症候群43.0±21.4日であり,疾患別の期間に有意差は認めなかった。退院前訪問時期はすべての疾患で入院期間の50%を上回り,入院期間の後半で退院前訪問を実施していることが分かった。入院日のFIMは73.5±24.0点,退院前訪問実施日のFIMは92.0±24.5点,退院時のFIMは96.6±25.9点であり,入院日と退院前訪問実施日,入院日と退院日に有意差を認め,退院前訪問実施日と退院日の間には有意差を認めなかった。
【考察】
入院から退院前訪問実施までの期間に疾患別で有意差がないことから,当院では疾患の分類が退院前訪問実施時期に与える影響は少ないと考えられる。今回の調査においては85.7%で患者本人も同行しており,退院前訪問実施日と退院日のFIM総得点に有意差がみられなかったことから,患者が退院時のゴールレベルに近くなってから退院前訪問を実施することが多いと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
平成26年度診療報酬改定では,入院時訪問指導加算を新設し,入院日数の短縮化が推進されている。退院前訪問実施時期の現状を把握することは,在宅復帰に向け計画的な入院の経過を送るうえでの一助になる。