第50回日本理学療法学術大会

講演情報

口述

口述11

管理運営2

2015年6月5日(金) 11:20 〜 12:20 第11会場 (ガラス棟 G610)

座長:日高正巳(兵庫医療大学 リハビリテーション学部)

[O-0090] 訪問リハビリテーション利用者が少ない地域での現状と今後の課題

國谷伸一1, 磯部紀仁1, 渡邊昌宏2 (1.医療法人社団聖嶺会立川記念病院, 2.つくば国際大学医療保健学部理学療法学科)

キーワード:訪問リハビリテーション, 介護支援専門員, 地域連携

【はじめに,目的】
訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)年間受給者数は,平成18年には40万名に満たなかったが平成21年では70万名を超過している。また,訪問リハ事業所数は平成18年には約2,100施設であったのが,平成21年では約3,000施設に増加している。訪問リハの利用者数は全国平均で要介護定者1,000名当たり約15名と報告されているが,当事業所がある茨城県では約8名であり全国平均の約1/2と少ない。
このように全国的に訪問リハの受給者や事業所数は増加傾向であるが,茨城県は訪問リハの利用者が少ない地域といえる。本研究の目的は,当事業所開設後3ヶ月間の訪問リハ利用状況を把握し,訪問リハ利用者が少ない地域のサービスのあり方を検討することである。
【方法】
対象は当事業所開設月である平成26年6月から9月までの訪問リハ利用者35名(男性13名,女性22名,年齢78.8±11.9歳)とした。調査項目は,①利用保険,②住居,③世帯,④主病名,⑤かかりつけ医,⑥担当介護支援専門員(以下,担当ケアマネ,⑦利用前所在地,⑧訪問リハ相談先施設とし,訪問リハ申込書,指示書,居宅サービス計画書から抽出した。
【結果】
調査項目の結果,①利用保険:医療保険3%,介護保険97%,②住居:自宅74%,サービス付き高齢者向け住宅26%,③世帯:核家族世帯31%,単独世帯40%,④主病名:骨関節疾患48%,脳血管疾患28%,腎疾患9%,呼吸器疾患6%,神経難病3%,がん3%,廃用症候群3%,⑤かかりつけ医:協力病院57%,他院43%,⑥担当ケアマネ:法人内事業所34%,法人関連事業所9%,法人関連外事業所54%,⑦利用前所在地:在宅43%,協力病院34%,他院23%,⑧訪問リハ相談先施設:協力病院57%,法人内事業所20%,法人関連事業所3%,法人関連外事業所20%であった。
【考察】
茨城県内の訪問リハ対象者の利用保険占有率は医療保険15%,介護保険85%と報告されている。当事業所の利用者において介護保険が多数を占め同様の傾向であった。住居に関しては,介護保険が多いことから訪問リハが利用できる「自宅」と「サービス付き高齢者向け住宅」が多くなっていたと考えられた。また,利用者の世帯では核家族世帯と単独世帯が多く,全国での介護保険利用者の世帯傾向(核家族世帯:31.4%,単独世帯:26.1%)と類似していた。疾患別にみても全国の傾向に準じていた。
当事業所では,かかりつけ医が「協力病院」や担当ケアマネが「法人内事業所」である利用者が多い。また,利用者が訪問リハの相談をした施設も同様に「協力病院」と「法人内事業所」であった。訪問リハ利用者の導入のきっかけは,家族,利用者本人の希望,次いでケアマネからの紹介であると報告されている。一般的に,訪問リハの利用者は,入院した医療機関や関連事業所経由で申込みすることが多いといわれており,当事業所も同様の傾向を示していたといえる。つまり,訪問リハ事業所と関係がある医療機関や事業所へ,本人や家族が申し込んだことから訪問リハの導入につながっている可能性がある。このことから,訪問リハ利用者が少ない地域では,関連外の事業所などに積極的な訪問リハの情報提供をおこなうことで,リハビリの必要度が高い利用者にサービスを提供しやすくなると推察された。
在宅サービスを展開する上で,介護保険サービスの立案を担っているケアマネとの関わりを欠くことは不可能である。本研究から,訪問リハ利用者の少ない地域では,訪問リハに関する情報提供を関連事業所以外へ積極的におこなう必要性が示唆された。今後,訪問リハ事業所が少ない地域では地域全体に訪問リハの情報提供をおこなうことで導入しやすい環境ができ,潜在化された在宅要介護者の介護度軽減や在宅生活維持に貢献できると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
訪問リハは事業所数が増加している反面,利用者数には地域格差が生じている。
本研究は,訪問リハの利用者が少ない地域において訪問リハを普及させるための一資料になると考えられる。