[O-0114] 足趾肢位と足内側縦アーチとの関連性
Keywords:足趾, 足内側縦アーチ, 足内在筋
【目的】
第42,43,46,47,48,49回理学療法学術大会において,我々は臨床研究,表面筋電図による実験研究,横断研究や縦断研究において,足内側縦アーチ(MLA)と母趾以外の足趾底屈エクササイズとの関連性を示してきた。その際の足趾肢位は,遠位趾節間関節(DIP関節)は伸展位,近位趾節間関節(PIP関節)は屈曲位,中足趾節間関節(MTP関節)は中間位から屈曲位に設定した。Jam(2006)らは足内在筋の走行から,Jarrett(1980)は屍体研究から,足趾DIP関節伸展,PIP関節とMTP関節屈曲で足内在筋が働き,DIP関節屈曲で足外在筋が機能すると主張した。Janda V(2007)らも足内在筋を促通するには類似したエクササイズを推奨している。以上から我々が考案した母趾以外の足趾底屈エクササイズは足内在筋の関与が示唆された。
しかしながら,昨年までの報告では,上記の足趾肢位の根拠が不明確のまま足趾エクササイズを介入した。例えばDIP関節伸展位で行う方法はすでに検証したが,MTP関節伸展位で足趾底屈エクササイズを行う方法との比較はしていなかった。そのために本研究は足趾肢位の違いに着目した。
以上から本研究はDIP関節伸展位による母趾以外での足趾底屈エクササイズ(DIPE)と,MTP関節伸展位による母趾以外での足趾底屈エクササイズ(MTPE)を行った。両エクササイズ前後のMLAの形態学的変化を比較した。目的はMLAの形態学的変化と足趾肢位との関係を明確にするである。
【対象と方法】
対象は,特に足趾運動をしても問題なく,過去6ヶ月間足関節周囲の傷害により医療機関にかかっていない健常者14名,14足(男8名,女6名)とした。対象者の平均年齢は20.9±0.3歳,平均身長163.9±8.5cm,平均体重56.6±10.5 kgであった。すべての被験者に対して十分な実験説明を行った後,同意を得えてから実験を開始した。
被験者にはDIPEとMTPEの2種類の母趾以外の足趾底屈エクササイズを施行させた。各足趾底屈エクササイズは膝上に3kgの重錘をのせ,頭部が膝の直上にくるまで体幹伸展位で前傾させた。そして検者が足背部に約80%MVC程度の抵抗をかけて10回施行した。測定手順はランダムに足趾エクササイズを選択し,その間隔は十分開けて行った。
MLAの測定は,Brody(1982)が考案したNavicular dropを独自に修正したModified navicular drop test(以下NDT)とした。なお,NDTの信頼性は0.88(1.1),0.86(2.1)であり,その方法は坐位足部荷重量を体重20%で計測するものである(城下2013)。
測定結果は統計処理ウィルコクソンの符号順位検定で2つのエクササイズの比較を行った。尚有意水準5%にて解析し統計ソフトIBM SPSS Statistics21を使用した。
【結果】
介入前のNDTは4.63±1.61mmとあった。DIPE後のNDTは3.95mm±1.59mm(p=0.002)となり有意差を示した,一方でMTPEのNDTは4.81±1.46mm(p=0.21)となり有意差を示さなかった。
【考察】
本研究は我々が考案した母趾以外の足趾底屈エクササイズについて足趾肢位を変えて比較したものである。
MTPEに関しては,MLAと関連性を示さなかった。Hicks(1954)は母趾以外の足趾ではMTP関節伸展5°以上でウインドラス機構が起こると報告した。MTPEはDIPEと比較してMTP関節を伸展することからウインドラスの巻き上げ現象が生じることは明らかである。しかしながら,MLAとの形態学的関連性を示さなかった。
以上から,ウインドラス機構はMTP関節伸展位では巻き上げ現象が起こるが足趾中間位でそれを維持する効果は低いことが本研究結果から示された。一方でDIPEはこれまでの方法であり,先行研究と類似した結果となった,改めて確認することができた。
注意すべき解釈は本研究結果と屍体研究やMRIでの断面積を計測する研究だけでDIPEが足内在筋のエクササイズであることを断定できないということである。なぜなら足内在筋は短母趾屈筋以外の直接計測することが不可能であり,直接的に足内在筋の計測ができない限りDIPEと足内在筋の関連性を明確にすることはできないからである。
MLA研究の大きな課題は足内在筋の解析をどのように遂行していくべきかと我々は考えている。
【理学療法学研究としての意義】
本研究から,足趾底屈エクササイズを施行する場合,足趾肢位に注意を払い臨床展開する必要があった。
第42,43,46,47,48,49回理学療法学術大会において,我々は臨床研究,表面筋電図による実験研究,横断研究や縦断研究において,足内側縦アーチ(MLA)と母趾以外の足趾底屈エクササイズとの関連性を示してきた。その際の足趾肢位は,遠位趾節間関節(DIP関節)は伸展位,近位趾節間関節(PIP関節)は屈曲位,中足趾節間関節(MTP関節)は中間位から屈曲位に設定した。Jam(2006)らは足内在筋の走行から,Jarrett(1980)は屍体研究から,足趾DIP関節伸展,PIP関節とMTP関節屈曲で足内在筋が働き,DIP関節屈曲で足外在筋が機能すると主張した。Janda V(2007)らも足内在筋を促通するには類似したエクササイズを推奨している。以上から我々が考案した母趾以外の足趾底屈エクササイズは足内在筋の関与が示唆された。
しかしながら,昨年までの報告では,上記の足趾肢位の根拠が不明確のまま足趾エクササイズを介入した。例えばDIP関節伸展位で行う方法はすでに検証したが,MTP関節伸展位で足趾底屈エクササイズを行う方法との比較はしていなかった。そのために本研究は足趾肢位の違いに着目した。
以上から本研究はDIP関節伸展位による母趾以外での足趾底屈エクササイズ(DIPE)と,MTP関節伸展位による母趾以外での足趾底屈エクササイズ(MTPE)を行った。両エクササイズ前後のMLAの形態学的変化を比較した。目的はMLAの形態学的変化と足趾肢位との関係を明確にするである。
【対象と方法】
対象は,特に足趾運動をしても問題なく,過去6ヶ月間足関節周囲の傷害により医療機関にかかっていない健常者14名,14足(男8名,女6名)とした。対象者の平均年齢は20.9±0.3歳,平均身長163.9±8.5cm,平均体重56.6±10.5 kgであった。すべての被験者に対して十分な実験説明を行った後,同意を得えてから実験を開始した。
被験者にはDIPEとMTPEの2種類の母趾以外の足趾底屈エクササイズを施行させた。各足趾底屈エクササイズは膝上に3kgの重錘をのせ,頭部が膝の直上にくるまで体幹伸展位で前傾させた。そして検者が足背部に約80%MVC程度の抵抗をかけて10回施行した。測定手順はランダムに足趾エクササイズを選択し,その間隔は十分開けて行った。
MLAの測定は,Brody(1982)が考案したNavicular dropを独自に修正したModified navicular drop test(以下NDT)とした。なお,NDTの信頼性は0.88(1.1),0.86(2.1)であり,その方法は坐位足部荷重量を体重20%で計測するものである(城下2013)。
測定結果は統計処理ウィルコクソンの符号順位検定で2つのエクササイズの比較を行った。尚有意水準5%にて解析し統計ソフトIBM SPSS Statistics21を使用した。
【結果】
介入前のNDTは4.63±1.61mmとあった。DIPE後のNDTは3.95mm±1.59mm(p=0.002)となり有意差を示した,一方でMTPEのNDTは4.81±1.46mm(p=0.21)となり有意差を示さなかった。
【考察】
本研究は我々が考案した母趾以外の足趾底屈エクササイズについて足趾肢位を変えて比較したものである。
MTPEに関しては,MLAと関連性を示さなかった。Hicks(1954)は母趾以外の足趾ではMTP関節伸展5°以上でウインドラス機構が起こると報告した。MTPEはDIPEと比較してMTP関節を伸展することからウインドラスの巻き上げ現象が生じることは明らかである。しかしながら,MLAとの形態学的関連性を示さなかった。
以上から,ウインドラス機構はMTP関節伸展位では巻き上げ現象が起こるが足趾中間位でそれを維持する効果は低いことが本研究結果から示された。一方でDIPEはこれまでの方法であり,先行研究と類似した結果となった,改めて確認することができた。
注意すべき解釈は本研究結果と屍体研究やMRIでの断面積を計測する研究だけでDIPEが足内在筋のエクササイズであることを断定できないということである。なぜなら足内在筋は短母趾屈筋以外の直接計測することが不可能であり,直接的に足内在筋の計測ができない限りDIPEと足内在筋の関連性を明確にすることはできないからである。
MLA研究の大きな課題は足内在筋の解析をどのように遂行していくべきかと我々は考えている。
【理学療法学研究としての意義】
本研究から,足趾底屈エクササイズを施行する場合,足趾肢位に注意を払い臨床展開する必要があった。