[O-0124] 腰椎すべり症患者の体幹筋断面積および脂肪変性
疼痛,日常生活動作障害との関連性
キーワード:腰椎すべり症, 筋断面積, 脂肪変性
【はじめに,目的】
腰椎すべり症は,椎間関節における不安定性により,疼痛や痺れ,日常生活動作(以下ADL)障害が生じる。先行研究では,腰椎すべり症における疼痛・機能障害に対し,体幹深層筋群の重要性が指摘されているが,体幹深層筋群と疼痛,ADLの関連性を検討した報告は少ない。近年,コンピューター断層撮影(Computed Tomography:以下CT)画像を用いた筋断面積・脂肪変性の評価が体幹深層筋群の評価として有用とされていることから,本研究では,腰椎すべり症患者における体幹深層筋群の萎縮・変性と疼痛・痺れおよび,ADLとの関連性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
慢性期の腰椎すべり症患者28例(男性12名,女性16名,平均年齢70.6±8.7歳)を対象とした。体幹深層筋群の評価には,CT画像から筋断面積・脂肪変性を求め,腰痛,殿部・下肢痛,痺れの評価にはVisual Analogue Scale(0mm:なし~,100mm:今まで経験した中で最も強く,耐え難い痛み・痺れ)を用いた。また,ADL障害の指標としてOswestry low back pain disability index(以下ODI)を用いた。CT画像よりL3,L4,L5高位における両側の多裂筋(以下MF),最長筋+腸肋筋(以下LES),MF+LESの脊柱起立筋群(以下PA),大腰筋(以下PS)の筋断面積,脂肪変性を画像解析ソフトウェアにて計測した。筋断面積は(筋断面積/L4椎体断面積)の式にて正規化し,左右・各高位の平均値を各筋の値とし,脂肪変性は筋断面積内の平均CT値を指標とし,左右・各高位の平均値を各筋の値とした。統計学的解析として,筋断面積,脂肪変性,腰痛や殿部・下肢痛および痺れ,ODIの関連性を明らかにするために,Spearmanの順位相関係数を用いた。危険率5%未満を有意とした。
【結果】
各筋の筋断面積と年齢,ODI,腰痛,殿部・下肢痛,痺れには有意な相関関係は認められなかった。MF,LESの脂肪変性と年齢は有意な相関関係(p<0.01)を認めたが,PSの脂肪変性と年齢には有意な相関関係を認めなかった。また,MF,LESの脂肪変性とODIには有意な相関関係を認めなかったが,PSの脂肪変性のみODIと有意な負の相関関係(r=-0.40,p=0.03)を認めた。また,MF,LESの脂肪変性と腰痛,殿部・下肢痛,痺れには有意な相関関係を認めなかったが,PSの脂肪変性のみ痺れのVASと有意な負の相関関係(r=-0.42,p=0.02)を認めた。
【考察】
本研究では,PSの脂肪変性はODIや痺れと有意な負の相関関係を示し,一方でMFやLESの脂肪変性はADLと有意な相関関係を認めなかった。このことから,PSはMFやLESに比べADL障害に密接に関連していると考えられる。脂肪変性とは一般的に筋の質の評価として用いられており,PSの筋の質がADL障害の程度や痺れの程度に影響を与えていることが示唆されたと言える。したがって,腰椎すべり症患者では,ADL障害や痺れの増悪を防ぐためには,PSの筋の質に着目し,PSの筋機能維持・向上を図ることが重要であると考えられる。また。ADL障害がPSの筋機能の低下を引き起こしている可能性も考えられ,腰椎すべり症患者において,PSの筋機能およびADL障害に着目し,これらの低下による悪循環を防ぐことが重要であると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究において,PSの脂肪変性とADLおよび痺れに関連があることが明らかとなった。これまで腰椎すべり症患者においてはMFの重要性が報告されることが多かったが,本研究はCT画像を用いPSの筋機能の重要性を示し,今後腰椎すべり症患者を対象とした理学療法における活用を含め,理学療法研究の発展に貢献するものであると考える。
腰椎すべり症は,椎間関節における不安定性により,疼痛や痺れ,日常生活動作(以下ADL)障害が生じる。先行研究では,腰椎すべり症における疼痛・機能障害に対し,体幹深層筋群の重要性が指摘されているが,体幹深層筋群と疼痛,ADLの関連性を検討した報告は少ない。近年,コンピューター断層撮影(Computed Tomography:以下CT)画像を用いた筋断面積・脂肪変性の評価が体幹深層筋群の評価として有用とされていることから,本研究では,腰椎すべり症患者における体幹深層筋群の萎縮・変性と疼痛・痺れおよび,ADLとの関連性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
慢性期の腰椎すべり症患者28例(男性12名,女性16名,平均年齢70.6±8.7歳)を対象とした。体幹深層筋群の評価には,CT画像から筋断面積・脂肪変性を求め,腰痛,殿部・下肢痛,痺れの評価にはVisual Analogue Scale(0mm:なし~,100mm:今まで経験した中で最も強く,耐え難い痛み・痺れ)を用いた。また,ADL障害の指標としてOswestry low back pain disability index(以下ODI)を用いた。CT画像よりL3,L4,L5高位における両側の多裂筋(以下MF),最長筋+腸肋筋(以下LES),MF+LESの脊柱起立筋群(以下PA),大腰筋(以下PS)の筋断面積,脂肪変性を画像解析ソフトウェアにて計測した。筋断面積は(筋断面積/L4椎体断面積)の式にて正規化し,左右・各高位の平均値を各筋の値とし,脂肪変性は筋断面積内の平均CT値を指標とし,左右・各高位の平均値を各筋の値とした。統計学的解析として,筋断面積,脂肪変性,腰痛や殿部・下肢痛および痺れ,ODIの関連性を明らかにするために,Spearmanの順位相関係数を用いた。危険率5%未満を有意とした。
【結果】
各筋の筋断面積と年齢,ODI,腰痛,殿部・下肢痛,痺れには有意な相関関係は認められなかった。MF,LESの脂肪変性と年齢は有意な相関関係(p<0.01)を認めたが,PSの脂肪変性と年齢には有意な相関関係を認めなかった。また,MF,LESの脂肪変性とODIには有意な相関関係を認めなかったが,PSの脂肪変性のみODIと有意な負の相関関係(r=-0.40,p=0.03)を認めた。また,MF,LESの脂肪変性と腰痛,殿部・下肢痛,痺れには有意な相関関係を認めなかったが,PSの脂肪変性のみ痺れのVASと有意な負の相関関係(r=-0.42,p=0.02)を認めた。
【考察】
本研究では,PSの脂肪変性はODIや痺れと有意な負の相関関係を示し,一方でMFやLESの脂肪変性はADLと有意な相関関係を認めなかった。このことから,PSはMFやLESに比べADL障害に密接に関連していると考えられる。脂肪変性とは一般的に筋の質の評価として用いられており,PSの筋の質がADL障害の程度や痺れの程度に影響を与えていることが示唆されたと言える。したがって,腰椎すべり症患者では,ADL障害や痺れの増悪を防ぐためには,PSの筋の質に着目し,PSの筋機能維持・向上を図ることが重要であると考えられる。また。ADL障害がPSの筋機能の低下を引き起こしている可能性も考えられ,腰椎すべり症患者において,PSの筋機能およびADL障害に着目し,これらの低下による悪循環を防ぐことが重要であると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
本研究において,PSの脂肪変性とADLおよび痺れに関連があることが明らかとなった。これまで腰椎すべり症患者においてはMFの重要性が報告されることが多かったが,本研究はCT画像を用いPSの筋機能の重要性を示し,今後腰椎すべり症患者を対象とした理学療法における活用を含め,理学療法研究の発展に貢献するものであると考える。