[O-0131] 回復期リハビリテーション病棟における生活イメージの重要性
~E-SASのころばない自信を用いたアンケート結果より~
キーワード:FIM, ころばない自信, 生活イメージ
【はじめに】当院では,各患者の退院後の生活を想定した目標を設定し,適宜カンファレンスを行い検討・修正している。また,入院中に獲得した能力が在宅生活において維持できているのかを確認するために,回復期リハビリテーション病棟退院後の在宅復帰患者に対し,アンケート調査を行っている。先行研究ではFIMのみを用いたアンケート調査を行い,在宅生活におけるFIMの変化を捉えることができた。しかし,退院後の生活を時系列で評価することができておらず,心理的変化を捉えることもできていなかった。そこで,退院時より経時的にFIMと心理面を調査したところ,入院中に行う課題が見つかったため報告する。
【方法】対象は,平成24年2月から12月までの期間に当院回復期リハビリテーション病棟から自宅退院された患者105名とし,郵送によるアンケート調査を退院日より1ヶ月後,3ヶ月後,6ヶ月後の計3回行った。アンケートの内容は,Flow-FIM(藤田保健衛生大学七栗サナトリウム作成の質問紙),ころばない自信(日本理学療法士協会Elderly Status Assessment Setより抽出),役割アンケートの3種類の評価表を用いて,自宅退院後のADL状況を本人もしくはご家族に記入を依頼した。また,カルテから入退院時のFIM,年齢,性別,疾患,在院日数,同居人の有無を調査した。役割アンケートでは,自宅内外でしていること,外出頻度,転倒の有無を調査した。分析は,ころばない自信の退院時点数と退院1,3,6ヶ月後の点数を比較。FIM(歩行得点,運動項目点数,認知項目点数)ところばない自信の退院時,退院1,3,6ヶ月後の各時期で比較した。また,年齢,性別,疾患,在院日数,同居人の有無ところばない自信との関係を比較した。統計処理には,Wilcoxon signed-rank test,Spearmanの順位相関係数を用いた。有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】退院から6ヶ月後まで継続して返信を頂けたアンケートの有効回答数は105名中32名。内訳は,平均年齢76.0±10.2歳,男性18名,女性14名であった。疾患内訳は脳血管障害18名,運動器障害14名であった。在院日数は101.3±37.3日。同居人の有無は,有り26名,無し6名であった。ころばない自信を各期間で比較すると,退院時から1ヶ月後は有意に低下し,退院時から3ヶ月後の差はなく,退院時から6ヶ月後は有意に低下した。各期間との間には有意差は認めなかった。ころばない自信とFIM(歩行・運動項目・認知項目)では正の相関を認めた。ころばない自信と年齢,性別,疾患,在院日数,転倒歴とは相関を認めなかった。
【考察】ころばない自信とは,転倒に関する自己効力感を意味し,自己効力感が低いと活動性の低下となりやすいといわれている。今回の調査結果では,退院時のころばない自信は退院1ヶ月後に低下し,退院3ヶ月後には退院時と同等となるが,退院6ヶ月後には再び低下することがわかった。退院時から退院1ヶ月後の変化に焦点をあてて考えると,退院時のころばない自信アンケートは,実際に在宅生活を経験する前に実施するため,実生活を想像した上での自信となる。結果,在宅生活イメージが実生活には結びつかず,1ヶ月間の在宅生活を経て,「思ったよりできなかった」と自信を無くしてしまったのではないかと考える。例えばころばない自信の「服を着たり,脱いだりする」の項目では,入院生活と在宅生活では環境や方法が変化するという患者の認識は少なく,入院生活でできたことは今後もできると自信をもつことが多いと考える。しかし,更衣のためにどこへ移動するのか,どこで着替えるのか,その際の姿勢はどうかなども含めて自信があるか否かは判定できずに過大評価してしまったのではないだろうか。一方,セラピストは個々の在宅生活のイメージを捉えきれておらず,課題が曖昧になっていることで,生活動作をできる・できないのみで判断したことで患者の過大評価を助長してしまったのではないだろうか。今後セラピストは患者に対し,病前の生活様式や具体的な方法・手段を入院生活でも,より積極的に導入し在宅生活のイメージ作りができるよう促す必要があり,患者には退院時の能力を維持・向上できるように,成功体験を積み重ねることで自己効力感が増すよう日々の動作を増やしていく必要があると考える。
【理学療法学研究としての意義】退院時のころばない自信は,入院生活での経験に基づく判断によるもので,退院後の在宅生活イメージと乖離していることが多いと示されたことから,生活イメージについてセラピストと患者で共通認識を持つことが,入院中のリハビリテーションプログラムを進める上で重要である。
【方法】対象は,平成24年2月から12月までの期間に当院回復期リハビリテーション病棟から自宅退院された患者105名とし,郵送によるアンケート調査を退院日より1ヶ月後,3ヶ月後,6ヶ月後の計3回行った。アンケートの内容は,Flow-FIM(藤田保健衛生大学七栗サナトリウム作成の質問紙),ころばない自信(日本理学療法士協会Elderly Status Assessment Setより抽出),役割アンケートの3種類の評価表を用いて,自宅退院後のADL状況を本人もしくはご家族に記入を依頼した。また,カルテから入退院時のFIM,年齢,性別,疾患,在院日数,同居人の有無を調査した。役割アンケートでは,自宅内外でしていること,外出頻度,転倒の有無を調査した。分析は,ころばない自信の退院時点数と退院1,3,6ヶ月後の点数を比較。FIM(歩行得点,運動項目点数,認知項目点数)ところばない自信の退院時,退院1,3,6ヶ月後の各時期で比較した。また,年齢,性別,疾患,在院日数,同居人の有無ところばない自信との関係を比較した。統計処理には,Wilcoxon signed-rank test,Spearmanの順位相関係数を用いた。有意水準は危険率5%未満とした。
【結果】退院から6ヶ月後まで継続して返信を頂けたアンケートの有効回答数は105名中32名。内訳は,平均年齢76.0±10.2歳,男性18名,女性14名であった。疾患内訳は脳血管障害18名,運動器障害14名であった。在院日数は101.3±37.3日。同居人の有無は,有り26名,無し6名であった。ころばない自信を各期間で比較すると,退院時から1ヶ月後は有意に低下し,退院時から3ヶ月後の差はなく,退院時から6ヶ月後は有意に低下した。各期間との間には有意差は認めなかった。ころばない自信とFIM(歩行・運動項目・認知項目)では正の相関を認めた。ころばない自信と年齢,性別,疾患,在院日数,転倒歴とは相関を認めなかった。
【考察】ころばない自信とは,転倒に関する自己効力感を意味し,自己効力感が低いと活動性の低下となりやすいといわれている。今回の調査結果では,退院時のころばない自信は退院1ヶ月後に低下し,退院3ヶ月後には退院時と同等となるが,退院6ヶ月後には再び低下することがわかった。退院時から退院1ヶ月後の変化に焦点をあてて考えると,退院時のころばない自信アンケートは,実際に在宅生活を経験する前に実施するため,実生活を想像した上での自信となる。結果,在宅生活イメージが実生活には結びつかず,1ヶ月間の在宅生活を経て,「思ったよりできなかった」と自信を無くしてしまったのではないかと考える。例えばころばない自信の「服を着たり,脱いだりする」の項目では,入院生活と在宅生活では環境や方法が変化するという患者の認識は少なく,入院生活でできたことは今後もできると自信をもつことが多いと考える。しかし,更衣のためにどこへ移動するのか,どこで着替えるのか,その際の姿勢はどうかなども含めて自信があるか否かは判定できずに過大評価してしまったのではないだろうか。一方,セラピストは個々の在宅生活のイメージを捉えきれておらず,課題が曖昧になっていることで,生活動作をできる・できないのみで判断したことで患者の過大評価を助長してしまったのではないだろうか。今後セラピストは患者に対し,病前の生活様式や具体的な方法・手段を入院生活でも,より積極的に導入し在宅生活のイメージ作りができるよう促す必要があり,患者には退院時の能力を維持・向上できるように,成功体験を積み重ねることで自己効力感が増すよう日々の動作を増やしていく必要があると考える。
【理学療法学研究としての意義】退院時のころばない自信は,入院生活での経験に基づく判断によるもので,退院後の在宅生活イメージと乖離していることが多いと示されたことから,生活イメージについてセラピストと患者で共通認識を持つことが,入院中のリハビリテーションプログラムを進める上で重要である。