[O-0135] 回復期リハビリテーション病棟における脳卒中者の日常生活の回復と社会的サポートの関係
Keywords:社会的サポート, 脳卒中, 回復期
【はじめに,目的】
障害は社会環境的要因に大きく左右され,同じような動作能力を持っていたとしても,社会的なサポートや適切な環境調整の有無により活動や参加のレベルは異なる。実際,脳卒中からの回復に対して,豊富な社会的サポートは帰結を改善し(Glass et al, 1992),豊かな環境は社会的活動を1.2倍増加する(Janssen et al, 2014)。しかし,社会的サポートといっても多様であり,Glassら(1992)のようにADLのような帰結を改善するとするものもあれば,Mantら(2000)のようにQOLを改善するとするものもある。このように,社会的サポートはその介入方法が多様であるだけでなく,その効果は身体機能面のみならず,心理・精神的側面へも及ぼされる可能性があるが,その関係性は必ずしも明らかではない。そこで,本研究は回復期病棟入院時点における社会的サポートの状態と身体機能面,心理・精神的側面の関係を明らかにし,社会的サポートが退院時の帰結に及ぼす影響を調査することを目的とした。
【方法】
対象は脳卒中により当院回復期病棟に入院した23名(男性20名,女性3名;年齢69.9±13.8歳;発症からの期間27.6±19.5日)である。評価項目は回復期病棟入院時点における社会的サポートの状態として家族の協力度,お見舞い頻度,身体機能面としてABMS,10m歩行,TUG,FBS,等尺性最大膝伸展筋力,下肢BS,BI,mRS,心理・精神的側面としてCES-D,やる気スコア,Vitality Index,自尊感情尺度,SS-QOLとした。退院時の帰結として,回復期病棟退院時のBI,mRS,入院日数を調査した。家族の協力度とお見舞い頻度は「非常に協力的である・頻繁にお見舞いに来る」から「全く協力的でない・全くお見舞いに来ない」まで5段階のカテゴリカルスケールとし,担当セラピストが判断し評定した。入院時点における社会的側面と身体機能面,心理・精神的側面の関連性を調べるために相関分析,重回帰分析を用い,入院時点における社会的側面と退院時の帰結の関連性を調べるために,入院時点における家族の協力度とお見舞い頻度と退院時のBI,mRSおよび入院日数の相関係数を算出した。統計解析はSPSS version 17.0を用い有意水準は5%とした。
【結果】
入院日数は102.3±51.2日,家族の協力度およびお見舞い頻度の中央値(最大-最小)はそれぞれ4(5-2)および4(5-1)であり,退院時BIは86.4±17.4点であった。入院時における社会的側面と身体機能面,心理・精神的側面の関連性として,家族の協力度は麻痺側膝伸展筋力と,お見舞い頻度は下肢BS,麻痺側膝伸展筋力,家族の協力度,SS-QOLの下位項目である活動性および思考と相関を示した(それぞれr=-0.465,-0.423,-0.686,0.822,-0.459,-0.457)。お見舞い頻度は家族の協力度と麻痺側膝伸展筋力により変数の78.1%が説明された。また,入院時の社会的側面と退院時の帰結の関連性として,お見舞い頻度は入院日数と相関を示した(r=0.477)。退院時のBIは入院日数と相関を示したが,お見舞い頻度を制御変数とした偏相関を算出すると退院時BIと入院日数の相関はなくなった(r=-0.500から-0.386へ)。
【考察】
入院時,家族の協力度とお見舞い頻度は強い関連を示し,お見舞い頻度は麻痺の程度が重いほど,対象者の主観的な活動性が低いほど多い傾向にあった。これは,対象者のリハビリテーションに協力的な姿勢を示す家族は対象者との関係性も良好であり,当然の結果としてお見舞い頻度も多くなり,加えて対象者が重症であるほどさらに多くなる傾向にあることを示す。次に,退院時の帰結に対する社会的サポートの影響について,入院時に前記のような特徴を持ったお見舞い頻度は入院日数と関連した。このお見舞い頻度を制御変数とすることで,退院時BIと入院日数の関連がなくなった。今回の対象者は2例を除き在宅復帰されていることから,今回のような家族との関係性という観点を含む社会的サポートは,退院時のBIに関わらず在宅復帰を促すことが考えられる。また,重症なほどお見舞い頻度が多かったことから,入院期間は延びるが,社会的サポートが重症者の回復を促進した可能性も考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
今回の結果の多くは経験的に自明なことであるように思われるが,それを統計的分析結果により報告したものは我々の知る限りにおいてはない。また,社会的サポートの評価はきわめて主観的であるが,その分,臨床的である。対象者の家族を含めた関係者を巻き込んだリハビリテーション介入が重要であるという経験的事実を裏付ける結果が示された。
障害は社会環境的要因に大きく左右され,同じような動作能力を持っていたとしても,社会的なサポートや適切な環境調整の有無により活動や参加のレベルは異なる。実際,脳卒中からの回復に対して,豊富な社会的サポートは帰結を改善し(Glass et al, 1992),豊かな環境は社会的活動を1.2倍増加する(Janssen et al, 2014)。しかし,社会的サポートといっても多様であり,Glassら(1992)のようにADLのような帰結を改善するとするものもあれば,Mantら(2000)のようにQOLを改善するとするものもある。このように,社会的サポートはその介入方法が多様であるだけでなく,その効果は身体機能面のみならず,心理・精神的側面へも及ぼされる可能性があるが,その関係性は必ずしも明らかではない。そこで,本研究は回復期病棟入院時点における社会的サポートの状態と身体機能面,心理・精神的側面の関係を明らかにし,社会的サポートが退院時の帰結に及ぼす影響を調査することを目的とした。
【方法】
対象は脳卒中により当院回復期病棟に入院した23名(男性20名,女性3名;年齢69.9±13.8歳;発症からの期間27.6±19.5日)である。評価項目は回復期病棟入院時点における社会的サポートの状態として家族の協力度,お見舞い頻度,身体機能面としてABMS,10m歩行,TUG,FBS,等尺性最大膝伸展筋力,下肢BS,BI,mRS,心理・精神的側面としてCES-D,やる気スコア,Vitality Index,自尊感情尺度,SS-QOLとした。退院時の帰結として,回復期病棟退院時のBI,mRS,入院日数を調査した。家族の協力度とお見舞い頻度は「非常に協力的である・頻繁にお見舞いに来る」から「全く協力的でない・全くお見舞いに来ない」まで5段階のカテゴリカルスケールとし,担当セラピストが判断し評定した。入院時点における社会的側面と身体機能面,心理・精神的側面の関連性を調べるために相関分析,重回帰分析を用い,入院時点における社会的側面と退院時の帰結の関連性を調べるために,入院時点における家族の協力度とお見舞い頻度と退院時のBI,mRSおよび入院日数の相関係数を算出した。統計解析はSPSS version 17.0を用い有意水準は5%とした。
【結果】
入院日数は102.3±51.2日,家族の協力度およびお見舞い頻度の中央値(最大-最小)はそれぞれ4(5-2)および4(5-1)であり,退院時BIは86.4±17.4点であった。入院時における社会的側面と身体機能面,心理・精神的側面の関連性として,家族の協力度は麻痺側膝伸展筋力と,お見舞い頻度は下肢BS,麻痺側膝伸展筋力,家族の協力度,SS-QOLの下位項目である活動性および思考と相関を示した(それぞれr=-0.465,-0.423,-0.686,0.822,-0.459,-0.457)。お見舞い頻度は家族の協力度と麻痺側膝伸展筋力により変数の78.1%が説明された。また,入院時の社会的側面と退院時の帰結の関連性として,お見舞い頻度は入院日数と相関を示した(r=0.477)。退院時のBIは入院日数と相関を示したが,お見舞い頻度を制御変数とした偏相関を算出すると退院時BIと入院日数の相関はなくなった(r=-0.500から-0.386へ)。
【考察】
入院時,家族の協力度とお見舞い頻度は強い関連を示し,お見舞い頻度は麻痺の程度が重いほど,対象者の主観的な活動性が低いほど多い傾向にあった。これは,対象者のリハビリテーションに協力的な姿勢を示す家族は対象者との関係性も良好であり,当然の結果としてお見舞い頻度も多くなり,加えて対象者が重症であるほどさらに多くなる傾向にあることを示す。次に,退院時の帰結に対する社会的サポートの影響について,入院時に前記のような特徴を持ったお見舞い頻度は入院日数と関連した。このお見舞い頻度を制御変数とすることで,退院時BIと入院日数の関連がなくなった。今回の対象者は2例を除き在宅復帰されていることから,今回のような家族との関係性という観点を含む社会的サポートは,退院時のBIに関わらず在宅復帰を促すことが考えられる。また,重症なほどお見舞い頻度が多かったことから,入院期間は延びるが,社会的サポートが重症者の回復を促進した可能性も考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
今回の結果の多くは経験的に自明なことであるように思われるが,それを統計的分析結果により報告したものは我々の知る限りにおいてはない。また,社会的サポートの評価はきわめて主観的であるが,その分,臨床的である。対象者の家族を含めた関係者を巻き込んだリハビリテーション介入が重要であるという経験的事実を裏付ける結果が示された。