[O-0136] 回復期リハビリテーション病棟退院後の転倒自己効力感低下要因に関する検討
Keywords:回復期, 自宅退院, 転倒自己効力感
【はじめに】
転倒自己効力感の低下・転倒恐怖感は,身体機能,ADLとIADLの低下,外出の自粛,うつ傾向などと関連性が強いことが報告されている。骨折後の転倒恐怖感は身体機能の改善とともに退院後4週間で低下することが報告されているが,入院中に十分な移動能力の改善がみられず退院後に機能低下が出現する症例については,転倒自己効力感の改善は期待できないと予測される。しかし入院中から退院後の転倒自己効力感を継続的に評価した先行報告は極めて少なく,変化の要因についても詳細な検討は行われていない。本研究は,退院前後の転倒自己効力感の変化と心身的特徴や退院後の生活を含む関連要因を前向きに調査し,退院後の短期間で転倒自己効力感が変化した患者の特徴について探索することを目的とした。
【方法】
対象は2013年8月から2014年8月に当法人回復期リハビリテーション病棟を退院した患者144名のうち,自宅へ退院し屋内歩行が自立であった44名中(男性17名,女性27名,年齢78.3±9.5歳),Mini-Mental State Examination(以下MMSE)24点以上で,活動量計の管理ができ前向きに追跡調査が可能であった6名(男性1名,女性5名,年齢78.0±13.4歳)。基本情報は年齢,疾患,同居人の有無,MMSE,受傷・発症前能力,理学療法実施日数とし,入院時の指標は,退院前10m歩行時間・歩数(緩歩・速歩),Timed up and Go test(以下TUG),自宅内・外移動能力,退院時Barthel Index,理学療法プログラム(以下PT),外出外泊・屋内導線段差・自主訓練指導の有無とした。入院中から退院後の指標は,転倒予防自己効力感尺度(the fall-prevention self efficacy scale(以下FPSE)),退院前後身体活動量(活動強度・歩数)とし,退院後の指標は,退院後利用サービス内容と利用頻度を調査した。FPSEは退院3.3±3.0日前と退院10.0±3.0日後に療法士が行い,減点項目が確認された際はその理由を聴取した。身体活動量はアクティマーカー(Panasonic社製)を使用し,退院8.5±2.1日前から,退院9.5±3.1日後まで測定した。分析は退院後にFPSEが低下した群(低下群)と変化なしもしくは向上した群(維持向上群)に分け比較した。
【結果】
入院中のFPSEは両群ほぼ同様も,退院後は低下群4名,維持向上群2名であった。低下群のFPSEの減点項目の理由は,各動作において理由が生活の中で具体的になっていたことや行っていない動作の想定時の自信の低下が主な傾向であった。退院後に屋内の移動形態が受傷・発症前より低下した患者は低下群3名,維持向上群0名であった。歩行時間は緩歩は低下群16.9±8.6秒,維持向上群14.0±1.4秒,速歩は低下群13.4±9.0秒,維持向上群11.7±0.2秒,TUGは低下群16.9±9.3秒,維持向上群は14.9±1.8秒であった。平均歩数は入院中は低下群1258.4±443.0歩,維持向上群2169.0±570.3歩,退院後は低下群706.9±572.8歩,維持向上群1436.4±1866.5歩であった。その他特徴的な傾向はみられなかった。
【考察】
低下群は,受傷・発症により自宅内の移動能力が低下し,入院中から維持向上群と比較し歩行速度が低く,歩数が低い値を認めたが,入院中は維持向上群とFPSEはほぼ同様であった。しかし,退院後にFPSEが短期間で低下し,低下理由が具体化されたことから,自宅環境下での制御(生活)体験や生理的自覚により転倒自己効力感と歩数が低下したことが考えられた。維持向上群も,退院後の平均歩数の低下を認めたことから,身体・精神機能の関連要因の変化により,今後転倒自己効力感の低下の可能性が予測された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の意義は,退院後の短期間で転倒自己効力感と活動量の低下を認める患者が存在し,その傾向も入院中から予測できる可能性を示した点にあり,入院中から自宅を具体的に想定した生活動作練習や転倒自己効力感尺度を利用したPTの実施,活動量の向上について検討・再考の必要性の意義を示したと考える。また退院後の介護保険サービス内容についても再考の必要性を示した。
転倒自己効力感の低下・転倒恐怖感は,身体機能,ADLとIADLの低下,外出の自粛,うつ傾向などと関連性が強いことが報告されている。骨折後の転倒恐怖感は身体機能の改善とともに退院後4週間で低下することが報告されているが,入院中に十分な移動能力の改善がみられず退院後に機能低下が出現する症例については,転倒自己効力感の改善は期待できないと予測される。しかし入院中から退院後の転倒自己効力感を継続的に評価した先行報告は極めて少なく,変化の要因についても詳細な検討は行われていない。本研究は,退院前後の転倒自己効力感の変化と心身的特徴や退院後の生活を含む関連要因を前向きに調査し,退院後の短期間で転倒自己効力感が変化した患者の特徴について探索することを目的とした。
【方法】
対象は2013年8月から2014年8月に当法人回復期リハビリテーション病棟を退院した患者144名のうち,自宅へ退院し屋内歩行が自立であった44名中(男性17名,女性27名,年齢78.3±9.5歳),Mini-Mental State Examination(以下MMSE)24点以上で,活動量計の管理ができ前向きに追跡調査が可能であった6名(男性1名,女性5名,年齢78.0±13.4歳)。基本情報は年齢,疾患,同居人の有無,MMSE,受傷・発症前能力,理学療法実施日数とし,入院時の指標は,退院前10m歩行時間・歩数(緩歩・速歩),Timed up and Go test(以下TUG),自宅内・外移動能力,退院時Barthel Index,理学療法プログラム(以下PT),外出外泊・屋内導線段差・自主訓練指導の有無とした。入院中から退院後の指標は,転倒予防自己効力感尺度(the fall-prevention self efficacy scale(以下FPSE)),退院前後身体活動量(活動強度・歩数)とし,退院後の指標は,退院後利用サービス内容と利用頻度を調査した。FPSEは退院3.3±3.0日前と退院10.0±3.0日後に療法士が行い,減点項目が確認された際はその理由を聴取した。身体活動量はアクティマーカー(Panasonic社製)を使用し,退院8.5±2.1日前から,退院9.5±3.1日後まで測定した。分析は退院後にFPSEが低下した群(低下群)と変化なしもしくは向上した群(維持向上群)に分け比較した。
【結果】
入院中のFPSEは両群ほぼ同様も,退院後は低下群4名,維持向上群2名であった。低下群のFPSEの減点項目の理由は,各動作において理由が生活の中で具体的になっていたことや行っていない動作の想定時の自信の低下が主な傾向であった。退院後に屋内の移動形態が受傷・発症前より低下した患者は低下群3名,維持向上群0名であった。歩行時間は緩歩は低下群16.9±8.6秒,維持向上群14.0±1.4秒,速歩は低下群13.4±9.0秒,維持向上群11.7±0.2秒,TUGは低下群16.9±9.3秒,維持向上群は14.9±1.8秒であった。平均歩数は入院中は低下群1258.4±443.0歩,維持向上群2169.0±570.3歩,退院後は低下群706.9±572.8歩,維持向上群1436.4±1866.5歩であった。その他特徴的な傾向はみられなかった。
【考察】
低下群は,受傷・発症により自宅内の移動能力が低下し,入院中から維持向上群と比較し歩行速度が低く,歩数が低い値を認めたが,入院中は維持向上群とFPSEはほぼ同様であった。しかし,退院後にFPSEが短期間で低下し,低下理由が具体化されたことから,自宅環境下での制御(生活)体験や生理的自覚により転倒自己効力感と歩数が低下したことが考えられた。維持向上群も,退院後の平均歩数の低下を認めたことから,身体・精神機能の関連要因の変化により,今後転倒自己効力感の低下の可能性が予測された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の意義は,退院後の短期間で転倒自己効力感と活動量の低下を認める患者が存在し,その傾向も入院中から予測できる可能性を示した点にあり,入院中から自宅を具体的に想定した生活動作練習や転倒自己効力感尺度を利用したPTの実施,活動量の向上について検討・再考の必要性の意義を示したと考える。また退院後の介護保険サービス内容についても再考の必要性を示した。