[O-0146] 常圧低酸素環境への急性暴露における組織酸素量および同環境下の一週間の身体活動による血液性状の影響
キーワード:常圧低酸素環境, 呼吸循環応答, ヘモグロビン
【はじめに】
高地のような低酸素環境では,大気の酸素分圧の低下あるいは室内の酸素濃度低下に伴い肺胞内の酸素分圧が低下するため,動脈血の酸素飽和度が低下し組織への酸素供給量が減少し,呼吸循環系への負荷は増加する。そのため,低酸素環境は環境負荷として作用し,トレーニング環境として利用されている。
今回研究では,常圧低酸素環境に急性暴露させた時の組織酸素量への影響と同環境下の一週間の身体活動による血液性状への影響を検討したので報告する。
【方法および結果】
実験1として常圧低酸素環境に急性暴露させた場合の酸素摂取量への影響を,実験2として同環境に一週間の身体活動による血液性状への影響を検討した。両実験の環境は,塩化ビニール製テント(容積4.0m3)を用い,膜分離方式の高・低酸素空気発生装置(分離膜:宇部興産製UBEN2セパレーター,コンプレッサー:アネスト岩田製SLP-22C)を用いて低酸素濃度環境(酸素濃度14.5%,0.7atm,高度3000m相当:以下,低酸素),と通常酸素濃度環境(酸素濃度20.9%,1.0atm:以下,通常酸素)を準備した。リスク管理として動脈血酸素飽和度を測定した。
実験1:対象は,健常男子6名(平均年齢20.5歳,平均身長166.3cm,平均体重62.2kg)。被検者に十分な安静坐位を取らせた後,最初に通常酸素での30分間安静坐位を,その後に低酸素での30分間安静坐位での測定を行った。測定項目は,酸素脈(VO2/HR)および心拍数(HR:拍/分)とし,測定機器は呼気学分析装置(ミナト医科学社製:AE-300)を用いた。各データは開始から終了まで30秒間隔で記録し,5分間ごとのstage1からstage6までの平均値を採用し比較検討した。統計学的手法は,各条件間では対応のあるt検定を用い,統計学的有意差は5%未満とした。
結果:酸素脈は,低酸素,通常酸素条件の順にそれぞれstage1:2.30±0.49ml/拍,2.62±0.40ml/拍,stage2:2.25±0.49ml/拍,2.58±0.36ml/拍,stage3:2.35±0.51ml/拍,2.65±0.52ml/拍,stage4:2.41±0.60ml/拍,2.57±0.48ml/拍,stage5:2.37±0.48ml/拍,2.74±0.53ml/拍,stage6:2.40±0.46ml/拍,2.72±0.51ml/拍であり,stage4以外のすべてのstageで低酸素が通常酸素より有意に低値であった。HRはstage1では低酸素が高値な傾向を示し,stage2以後は低酸素が通常酸素より有意に高値を示した。
実験2:対象は,健常男子7名(平均年齢20.4歳,平均身長171.6±6.4cm,平均体重66.6±10.2kg)であった。被験者の常圧酸素環境下でのヘモグロビン値(以下,SpHb)を実験前後で測定した。測定機器は,SpHbでは非侵襲のへモグロビン測定機器(マシモジャパン社製Pronto-7TM),実験環境下に急性暴露させたのち通常環境で測定したATポイントの運動負荷量を自転車エルゴメータ(コンビ社製,エルゴメータ232C)で負荷し,1日30分の同運動を1週間施行した。統計学的手法は,対応のあるt検定を用い,統計学的有意差は5%未満とした。
結果:SpHb値は実験前,実験後に順にそれぞれ14.7±0.7 g/dl,15.1±0.8 g/dlであり,統計学的に有意差を認め実験後が高値を示した。
【考察】
実験1の結果で酸素脈は,低酸素では通常酸素に比べ低値であった。酸素脈は,一回の心拍出量がどれだけ酸素消費に関与しているかを示し,この値が低値であることは,組織での酸素量が少ないことを示す。その代償としては,循環血流量の増加させるためのHR増加が考えられ,本研究結果も同様を示した。
実験2の結果でSpHbは,実験前の14.7±0.7g/dlから実験後は15.1±0.8 g/dlと増加量は3%を認めた。低圧低酸素環境下のいわゆる高地環境(標高2,500m)でのトレーニングにおいては一週間で平均1%のヘモグロビン増加を見せたと報告されている。本研究結果は標高が3,000m相当条件の環境ではあるが約3倍の効果を示した。常圧低酸素環境は低圧低酸素環境と同様に組織での酸素量を減少させ,その代償として即時的にはHRの増加,その後には血液性状でのヘモグロビン増加に影響を効果的に与える可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
常圧低酸素環境のトレーニング環境としての有効性を示すことができた。また,血液性状のヘモグロビン測定を非侵襲へモグロビン測定機器を用いることで理学療法場面での継続的で安全性のある評価法の可能性を示した。
高地のような低酸素環境では,大気の酸素分圧の低下あるいは室内の酸素濃度低下に伴い肺胞内の酸素分圧が低下するため,動脈血の酸素飽和度が低下し組織への酸素供給量が減少し,呼吸循環系への負荷は増加する。そのため,低酸素環境は環境負荷として作用し,トレーニング環境として利用されている。
今回研究では,常圧低酸素環境に急性暴露させた時の組織酸素量への影響と同環境下の一週間の身体活動による血液性状への影響を検討したので報告する。
【方法および結果】
実験1として常圧低酸素環境に急性暴露させた場合の酸素摂取量への影響を,実験2として同環境に一週間の身体活動による血液性状への影響を検討した。両実験の環境は,塩化ビニール製テント(容積4.0m3)を用い,膜分離方式の高・低酸素空気発生装置(分離膜:宇部興産製UBEN2セパレーター,コンプレッサー:アネスト岩田製SLP-22C)を用いて低酸素濃度環境(酸素濃度14.5%,0.7atm,高度3000m相当:以下,低酸素),と通常酸素濃度環境(酸素濃度20.9%,1.0atm:以下,通常酸素)を準備した。リスク管理として動脈血酸素飽和度を測定した。
実験1:対象は,健常男子6名(平均年齢20.5歳,平均身長166.3cm,平均体重62.2kg)。被検者に十分な安静坐位を取らせた後,最初に通常酸素での30分間安静坐位を,その後に低酸素での30分間安静坐位での測定を行った。測定項目は,酸素脈(VO2/HR)および心拍数(HR:拍/分)とし,測定機器は呼気学分析装置(ミナト医科学社製:AE-300)を用いた。各データは開始から終了まで30秒間隔で記録し,5分間ごとのstage1からstage6までの平均値を採用し比較検討した。統計学的手法は,各条件間では対応のあるt検定を用い,統計学的有意差は5%未満とした。
結果:酸素脈は,低酸素,通常酸素条件の順にそれぞれstage1:2.30±0.49ml/拍,2.62±0.40ml/拍,stage2:2.25±0.49ml/拍,2.58±0.36ml/拍,stage3:2.35±0.51ml/拍,2.65±0.52ml/拍,stage4:2.41±0.60ml/拍,2.57±0.48ml/拍,stage5:2.37±0.48ml/拍,2.74±0.53ml/拍,stage6:2.40±0.46ml/拍,2.72±0.51ml/拍であり,stage4以外のすべてのstageで低酸素が通常酸素より有意に低値であった。HRはstage1では低酸素が高値な傾向を示し,stage2以後は低酸素が通常酸素より有意に高値を示した。
実験2:対象は,健常男子7名(平均年齢20.4歳,平均身長171.6±6.4cm,平均体重66.6±10.2kg)であった。被験者の常圧酸素環境下でのヘモグロビン値(以下,SpHb)を実験前後で測定した。測定機器は,SpHbでは非侵襲のへモグロビン測定機器(マシモジャパン社製Pronto-7TM),実験環境下に急性暴露させたのち通常環境で測定したATポイントの運動負荷量を自転車エルゴメータ(コンビ社製,エルゴメータ232C)で負荷し,1日30分の同運動を1週間施行した。統計学的手法は,対応のあるt検定を用い,統計学的有意差は5%未満とした。
結果:SpHb値は実験前,実験後に順にそれぞれ14.7±0.7 g/dl,15.1±0.8 g/dlであり,統計学的に有意差を認め実験後が高値を示した。
【考察】
実験1の結果で酸素脈は,低酸素では通常酸素に比べ低値であった。酸素脈は,一回の心拍出量がどれだけ酸素消費に関与しているかを示し,この値が低値であることは,組織での酸素量が少ないことを示す。その代償としては,循環血流量の増加させるためのHR増加が考えられ,本研究結果も同様を示した。
実験2の結果でSpHbは,実験前の14.7±0.7g/dlから実験後は15.1±0.8 g/dlと増加量は3%を認めた。低圧低酸素環境下のいわゆる高地環境(標高2,500m)でのトレーニングにおいては一週間で平均1%のヘモグロビン増加を見せたと報告されている。本研究結果は標高が3,000m相当条件の環境ではあるが約3倍の効果を示した。常圧低酸素環境は低圧低酸素環境と同様に組織での酸素量を減少させ,その代償として即時的にはHRの増加,その後には血液性状でのヘモグロビン増加に影響を効果的に与える可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
常圧低酸素環境のトレーニング環境としての有効性を示すことができた。また,血液性状のヘモグロビン測定を非侵襲へモグロビン測定機器を用いることで理学療法場面での継続的で安全性のある評価法の可能性を示した。