[O-0152] ロボットスーツHALを使用した脳卒中片麻痺患者の歩行速度,歩行周期の検討
Keywords:HAL, 脳卒中, 歩行
【はじめに,目的】
脳・神経系と筋骨格系の両方を捉えている神経理学療法は,近年重要なキーワードとなっている。また,ロボットスーツHAL(Hybrid Assistive Limb:以下,HAL)は神経理学療法を開拓する最新のテクノロジーとして近年,世界的に注目を集めており,ヨーロッパでも使用され始めている。主に,起立や歩行練習等に用いられており,歩行速度や歩幅を中心に歩行能力の改善が認められている。本研究の目的は,脳卒中片麻痺患者にHALを使用し立位や歩行練習を行うことで,歩行速度,立脚相と遊脚相時間の歩行周期に対する割合にどのような影響を与えているかを明らかにすることであった。
【方法】
対象は,2014年6月から10月まで当院の回復期病棟に入院した脳卒中片麻痺患者で,歩行補助具や装具の有無に関わらず,見守りまたは自立で10m歩行可能な7名とした。
HALを使用し,主に立位,歩行練習を5日間連続で行い,介入後に10m歩行を測定した。1回介入後を即時効果,5回介入後を治療効果とし,評価項目は,①歩行速度,②麻痺側・非麻痺側立脚相と遊脚相時間の歩行周期に対する割合(以下,立脚相割合,遊脚相割合)とした。遊脚相と立脚相割合は,10m歩行時に動画を撮影し(frame rate 30fps),動画編集ソフトウェアVirtual Dub Mod(Virtual Dub Mod project)により動画を写真に変換した後,麻痺側・非麻痺側の1歩行周期における立脚相と遊脚相割合を算出し,5歩行周期の平均をそれぞれ算出した。得られたデータは,統計ソフトR ver 3.0.2(R project)を用い,一元配置分散分析を行った後,Tukey-Kramer法により多重比較検定にて解析した。有意水準は0.05とした。
【結果】
連続5日間のHALを使用した練習により,歩行速度が有意に向上した(p<0.05)。また,多重比較検定の結果,介入前と4日目,介入前と5日目の間に有意差を認めた(p<0.05)。
麻痺側立脚相,遊脚相割合は即時効果,治療効果ともに有意差を認めなかった。非麻痺側立脚相,遊脚相割合はともに有意差を認めた(p<0.05)。多重比較検定の結果,非麻痺側立脚相割合では即時効果と治療効果の間に有意差を認め(p<0.05),非麻痺側遊脚相割合では介入前と即時効果,介入前と治療効果の間に有意差を認めた(p<0.05)。
【考察】
本研究結果では,HALを使用して立位や歩行練習を行うことで,4日目以降に歩行速度が向上すること,また,非麻痺側立脚相割合の減少を認めた。HALでは,モニターを使用しながら,重心の位置や生体電位をリアルタイムで確認できるため,患者や治療者も動作を修正しやすい。その結果,重心移動が円滑に行えるようになったことが予測される。HALでの運動学習による効果は4日以上必要であることが示唆された。
また,非麻痺側遊脚相割合の減少を認めているが,非麻痺側遊脚相と対応する麻痺側単脚支持時間が延長したことが考えられる。よって,HALを使用して立位や歩行練習を行うことで,麻痺側への重心移動が円滑化される可能性が示唆された。これにより,歩行リズムが改善され歩行速度に影響を与えている可能性がある。
本研究の限界と課題は,サンプルサイズが小さいこと研究デザインのさらなる工夫が必要である。
【理学療法学研究としての意義】
脳卒中片麻痺患者に対し,HALを使用することで歩行速度では4日目以降で改善を認めた。また,麻痺側単脚支持での重心移動が円滑化する可能性が示唆された。特に,麻痺側への重心移動が乏しい患者に対し,HALを使用することで,歩行能力が向上する可能性が考えられる。
脳・神経系と筋骨格系の両方を捉えている神経理学療法は,近年重要なキーワードとなっている。また,ロボットスーツHAL(Hybrid Assistive Limb:以下,HAL)は神経理学療法を開拓する最新のテクノロジーとして近年,世界的に注目を集めており,ヨーロッパでも使用され始めている。主に,起立や歩行練習等に用いられており,歩行速度や歩幅を中心に歩行能力の改善が認められている。本研究の目的は,脳卒中片麻痺患者にHALを使用し立位や歩行練習を行うことで,歩行速度,立脚相と遊脚相時間の歩行周期に対する割合にどのような影響を与えているかを明らかにすることであった。
【方法】
対象は,2014年6月から10月まで当院の回復期病棟に入院した脳卒中片麻痺患者で,歩行補助具や装具の有無に関わらず,見守りまたは自立で10m歩行可能な7名とした。
HALを使用し,主に立位,歩行練習を5日間連続で行い,介入後に10m歩行を測定した。1回介入後を即時効果,5回介入後を治療効果とし,評価項目は,①歩行速度,②麻痺側・非麻痺側立脚相と遊脚相時間の歩行周期に対する割合(以下,立脚相割合,遊脚相割合)とした。遊脚相と立脚相割合は,10m歩行時に動画を撮影し(frame rate 30fps),動画編集ソフトウェアVirtual Dub Mod(Virtual Dub Mod project)により動画を写真に変換した後,麻痺側・非麻痺側の1歩行周期における立脚相と遊脚相割合を算出し,5歩行周期の平均をそれぞれ算出した。得られたデータは,統計ソフトR ver 3.0.2(R project)を用い,一元配置分散分析を行った後,Tukey-Kramer法により多重比較検定にて解析した。有意水準は0.05とした。
【結果】
連続5日間のHALを使用した練習により,歩行速度が有意に向上した(p<0.05)。また,多重比較検定の結果,介入前と4日目,介入前と5日目の間に有意差を認めた(p<0.05)。
麻痺側立脚相,遊脚相割合は即時効果,治療効果ともに有意差を認めなかった。非麻痺側立脚相,遊脚相割合はともに有意差を認めた(p<0.05)。多重比較検定の結果,非麻痺側立脚相割合では即時効果と治療効果の間に有意差を認め(p<0.05),非麻痺側遊脚相割合では介入前と即時効果,介入前と治療効果の間に有意差を認めた(p<0.05)。
【考察】
本研究結果では,HALを使用して立位や歩行練習を行うことで,4日目以降に歩行速度が向上すること,また,非麻痺側立脚相割合の減少を認めた。HALでは,モニターを使用しながら,重心の位置や生体電位をリアルタイムで確認できるため,患者や治療者も動作を修正しやすい。その結果,重心移動が円滑に行えるようになったことが予測される。HALでの運動学習による効果は4日以上必要であることが示唆された。
また,非麻痺側遊脚相割合の減少を認めているが,非麻痺側遊脚相と対応する麻痺側単脚支持時間が延長したことが考えられる。よって,HALを使用して立位や歩行練習を行うことで,麻痺側への重心移動が円滑化される可能性が示唆された。これにより,歩行リズムが改善され歩行速度に影響を与えている可能性がある。
本研究の限界と課題は,サンプルサイズが小さいこと研究デザインのさらなる工夫が必要である。
【理学療法学研究としての意義】
脳卒中片麻痺患者に対し,HALを使用することで歩行速度では4日目以降で改善を認めた。また,麻痺側単脚支持での重心移動が円滑化する可能性が示唆された。特に,麻痺側への重心移動が乏しい患者に対し,HALを使用することで,歩行能力が向上する可能性が考えられる。