[O-0156] ロコモ度テストの陽性該当数と運動機能およびQOLとの関連
地域在住中高齢者におけるロコモ度テストの有用性の検討
Keywords:ロコモティブシンドローム, ロコモ度テスト, 地域在住中高齢者
【はじめに,目的】
2007年より運動器の機能低下により移動能力の低下を来たし,将来の介護になるリスクを高めるロコモティブシンドローム(ロコモ)の概念が提唱されている。その評価ツールの1つにロコモ度テストがある。ロコモ度テストは2013年に日本整形外科学会から老若男女問わず自身の運動器の衰えに対して気付きを与え,将来のロコモの危険性を判定するためのツールとして開発された。ロコモ度テストは立ち上がりテスト,2ステップテスト,ロコモ25の3つのテストから成り立ち,各テストには20歳代から70歳代まで年代に応じた基準値が設定されている。近年,ロコモ度テストを用いた調査研究は散見されるようになってきたが,まだ十分ではない。また3つのテストにおける陽性該当数による運動機能の差異は明らかとなっていない。今回,ロコモ度テストの陽性該当数ごとの対象者の特徴を明らかにすることを目的とする。
【方法】
対象は埼玉県伊奈町に在住する身体障害ならびに要支援・要介護に該当しない765名(平均年齢69.7±5.3歳,男性354名,女性411名)を対象とした。
調査項目は身体特性(身長,体重,BMI),運動機能(握力,片脚立位,FRT,最大歩行速度,5回起立時間,膝伸展筋力,足趾把持力,立ち上がりテスト,2ステップテスト)およびアンケート(ロコモ25,ロコチェック,EQ-5D)を測定した。
ロコモ度テストにおける陽性の判定は,各テストに設定されている年代基準値に満たない者を陽性とし,陽性になった項目数(0個,1個,2個,3個)を数え該当数に応じて対象者を分類した。
本研究でのロコモの判定はロコチェックおよびロコモ度テストそれぞれで実施し,ロコモ度テストでは3つのテストのうち1つでも陽性となった者をロコモとした。ロコチェックでは7項目のうち1つでも該当する項目があった者をロコモとした。
統計解析では,まずロコチェックならびにロコモ度テストそれぞれのロコモ該当率を集計した。その後,ロコモ度テストの陽性該当数ごとの身体特性や運動機能およびアンケートについて群間比較を行った。群間比較については一元配置分散分析ならびに多重比較検定(Tukey法)およびχ2検定を実施した。統計解析ソフトはJMP SAS ver11.2を使用し,有意水準5%未満とした。
【結果】
ロコチェックおよびロコモ度テストによるロコモの判定の結果は474名(62.0%),566名(74.0%)であった。ロコモ度テストそれぞれの陽性該当率は2ステップテスト:473名(61.8%),立ち上がりテスト:279名(36.4%),ロコモ25:101名(13.2%)であった。ロコモ度テスト陽性該当数では性別,年齢に有意差はみられなかった。BMIは21.7kg/m2,22.6 kg/m2,23.8 kg/m2,24.2 kg/m2となり,陽性該当数が増えるに連れて有意に増加した。握力では29.2kg,29.0kg,27.7kg,23.8kgと3個群にのみ有意な低下を示した。片脚立位:61.4秒,52.4秒,37.7秒,21.8秒,FRT:38.7cm,38.6cm,37.2cm,34.9cm,5回起立:7.5秒,8.3秒,8.8秒,11.3秒,最大歩行速度:1.98m/s,1.87m/s,1.80m/s,1.61m/s,膝伸展筋力:1.90Nm/kg,1.74Nm/kg,1.53Nm/kg,1.24Nm/kg,足趾把持力:0.26kg/kg,0.23kg/kg,0.20kg/kg,0.16kg/kg,2ステップテスト:1.52,1.37,1.31,1.21のいずれも陽性該当数が増加するごと有意に低下していた。アンケートにおいてもロコモ25では2.9点,3.8点,7.3点,19.2点となり,EQ-5Dでは0.92,0.91,0.87,0.72と,ともに該当数が増加するに連れ悪化する結果となった。
【考察】
本研究の結果,ロコモ度テストの陽性該当数が増えるに連れ,運動機能やQOLの低下がみられた。また陽性該当数3個の者は顕著に運動機能やQOLが低下していた。
ロコモ度テストである3つのテストは簡単に実施可能であり,年齢を問わず足腰の衰えの把握することができる。さらに陽性該当数を数えることで運動機能を段階分けできる可能性もあり,介護予防などにおいて有用な指標であると考える。しかしロコモ度テストの各テストのカットオフ値は未定であるため,判定への利用としては今後の発表が待たれるところである。
【理学療法学研究としての意義】
介護予防教室などの地域で体力測定を行う場合には,多くの項目が実施できない場合が多い。そのためロコモ度テストを用いることで少ない項目で筋力やバランス能力および移動能力の把握が可能となると考える。また該当数を数えることで運動機能の段階的な衰えを把握することができ,対象者に適した対処も可能となると考える。
2007年より運動器の機能低下により移動能力の低下を来たし,将来の介護になるリスクを高めるロコモティブシンドローム(ロコモ)の概念が提唱されている。その評価ツールの1つにロコモ度テストがある。ロコモ度テストは2013年に日本整形外科学会から老若男女問わず自身の運動器の衰えに対して気付きを与え,将来のロコモの危険性を判定するためのツールとして開発された。ロコモ度テストは立ち上がりテスト,2ステップテスト,ロコモ25の3つのテストから成り立ち,各テストには20歳代から70歳代まで年代に応じた基準値が設定されている。近年,ロコモ度テストを用いた調査研究は散見されるようになってきたが,まだ十分ではない。また3つのテストにおける陽性該当数による運動機能の差異は明らかとなっていない。今回,ロコモ度テストの陽性該当数ごとの対象者の特徴を明らかにすることを目的とする。
【方法】
対象は埼玉県伊奈町に在住する身体障害ならびに要支援・要介護に該当しない765名(平均年齢69.7±5.3歳,男性354名,女性411名)を対象とした。
調査項目は身体特性(身長,体重,BMI),運動機能(握力,片脚立位,FRT,最大歩行速度,5回起立時間,膝伸展筋力,足趾把持力,立ち上がりテスト,2ステップテスト)およびアンケート(ロコモ25,ロコチェック,EQ-5D)を測定した。
ロコモ度テストにおける陽性の判定は,各テストに設定されている年代基準値に満たない者を陽性とし,陽性になった項目数(0個,1個,2個,3個)を数え該当数に応じて対象者を分類した。
本研究でのロコモの判定はロコチェックおよびロコモ度テストそれぞれで実施し,ロコモ度テストでは3つのテストのうち1つでも陽性となった者をロコモとした。ロコチェックでは7項目のうち1つでも該当する項目があった者をロコモとした。
統計解析では,まずロコチェックならびにロコモ度テストそれぞれのロコモ該当率を集計した。その後,ロコモ度テストの陽性該当数ごとの身体特性や運動機能およびアンケートについて群間比較を行った。群間比較については一元配置分散分析ならびに多重比較検定(Tukey法)およびχ2検定を実施した。統計解析ソフトはJMP SAS ver11.2を使用し,有意水準5%未満とした。
【結果】
ロコチェックおよびロコモ度テストによるロコモの判定の結果は474名(62.0%),566名(74.0%)であった。ロコモ度テストそれぞれの陽性該当率は2ステップテスト:473名(61.8%),立ち上がりテスト:279名(36.4%),ロコモ25:101名(13.2%)であった。ロコモ度テスト陽性該当数では性別,年齢に有意差はみられなかった。BMIは21.7kg/m2,22.6 kg/m2,23.8 kg/m2,24.2 kg/m2となり,陽性該当数が増えるに連れて有意に増加した。握力では29.2kg,29.0kg,27.7kg,23.8kgと3個群にのみ有意な低下を示した。片脚立位:61.4秒,52.4秒,37.7秒,21.8秒,FRT:38.7cm,38.6cm,37.2cm,34.9cm,5回起立:7.5秒,8.3秒,8.8秒,11.3秒,最大歩行速度:1.98m/s,1.87m/s,1.80m/s,1.61m/s,膝伸展筋力:1.90Nm/kg,1.74Nm/kg,1.53Nm/kg,1.24Nm/kg,足趾把持力:0.26kg/kg,0.23kg/kg,0.20kg/kg,0.16kg/kg,2ステップテスト:1.52,1.37,1.31,1.21のいずれも陽性該当数が増加するごと有意に低下していた。アンケートにおいてもロコモ25では2.9点,3.8点,7.3点,19.2点となり,EQ-5Dでは0.92,0.91,0.87,0.72と,ともに該当数が増加するに連れ悪化する結果となった。
【考察】
本研究の結果,ロコモ度テストの陽性該当数が増えるに連れ,運動機能やQOLの低下がみられた。また陽性該当数3個の者は顕著に運動機能やQOLが低下していた。
ロコモ度テストである3つのテストは簡単に実施可能であり,年齢を問わず足腰の衰えの把握することができる。さらに陽性該当数を数えることで運動機能を段階分けできる可能性もあり,介護予防などにおいて有用な指標であると考える。しかしロコモ度テストの各テストのカットオフ値は未定であるため,判定への利用としては今後の発表が待たれるところである。
【理学療法学研究としての意義】
介護予防教室などの地域で体力測定を行う場合には,多くの項目が実施できない場合が多い。そのためロコモ度テストを用いることで少ない項目で筋力やバランス能力および移動能力の把握が可能となると考える。また該当数を数えることで運動機能の段階的な衰えを把握することができ,対象者に適した対処も可能となると考える。