[O-0158] 高齢者の2ステップテストと転倒転落スクリーニング評価との関連
キーワード:2ステップテスト, 転倒転落アセスメント, 転倒リスク
【はじめに,目的】
2ステップテストは,バランスを崩さずに実施可能な最大2歩幅を測定する検査であり,測定値を身長で除した値(以下,2ステップ値)から歩行能力を推定することができる。先行研究では,2ステップ値と転倒歴,転倒不安感との関連を調査し,転倒リスクの身体機能面のスクリーニングとしても有用であると報告されている(村永,2003)。
転倒転落アセスメントは,「リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン」に記述されている転倒・転落予測方法を基に予測精度の検証を重ねて作成された6項目10点満点から構成される予測方法であり,転倒リスクのスクリーニングに用いられている。
本研究の目的は,2ステップ値と転倒転落アセスメントの関連を調査し,転倒リスクのスクリーニングおよびリスク指標としての2ステップテストの有用性を明らかにすることである。
【方法】
対象は2013年7月1日から2014年8月31日の期間に理学療法を処方された65歳以上の入院患者で,測定に同意の得られた者とした。除外基準は,運動器外傷のある者,理解力の低い者,測定リスクが高い者,測定が困難な者とした。評価項目は2ステップテストと転倒転落アセスメントとした。
2ステップテストの測定は,退院時に安全面を配慮し平行棒内もしくは手すりを把持できる位置で,セラピストによる監視下で実施した。最大2歩幅を測定し,測定値を身長で除した値を2ステップ値とした。
転倒転落アセスメントは,電子カルテより後方視的に情報収集した。A.判断力低下(問題なし:0点,精神機能低下あり:2点),B.下肢筋力低下(自力歩行が可能:0点,補助具もしくは介助が必要:2点),C.転倒転落の既往(なし:0点,あり:3点),D.神経精神用薬の服用またはアルコール飲用(なし:0点,あり:1点),E.頻尿・尿失禁(なし:0点,あり:1点),F.日常生活に影響する視力障害(なし:0点,あり:1点)の6項目10点満点で構成されている。
合計点が3点未満の者を非リスク群,3点以上の者をリスク群とし,両群間の2ステップ値を比較した。また,転倒転落アセスメントの下位項目であるB.下肢筋力低下の0点の群(以下,0点群)と2点の群(以下,2点群)の2ステップ値を比較した。
統計解析は,2ステップ値と転倒転落アセスメントの合計点,各下位項目との関連をスピアマンの順位相関係数で解析した。各群間の2ステップ値の比較には対応のないt検定を用いた。各々有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象の基準を満たした者は140名(男性53名,女性87名)で,平均年齢(SD)は79.44(7.65)歳であった。
2ステップ値と転倒転落アセスメント合計点(p<0.05,r=-0.36),下位項目のA.判断力低下(p<0.05,r=-0.22),B.下肢筋力低下(p<0.05,r=-0.49)との間に相関を認めた。
2ステップ値の平均値(SD)は,非リスク群76名で1.03(0.27),リスク群64名で0.89(0.22)であり,両群間に有意差を認めた(p<0.05)。また,B.下肢筋力低下の0点群50名で1.13(0.21),2点群90名で0.88(0.23)であり,両群間に有意差を認めた(p<0.05)。
【考察】
転倒転落アセスメントは,身体機能・精神機能を含めた6項目で構成されており,多様な予測因子から転倒リスクをスクリーニングする評価指標である。予測精度の検証では,ROC曲線下面積は0.82(95%信頼区間0.80-0.84)であり,3点をカットオフ値としたところ,感度0.73,特異度0.77であったと報告されている(宮越,2014)。
本研究では,2ステップ値は転倒転落アセスメント合計点,下位項目のA.判断力低下と弱い負の相関関係を認め,B.下肢筋力低下と中程度の負の相関関係を認めた。この結果は,先行研究の,2ステップ値が低くなるにつれて徐々に転倒リスクが高くなり,1.0以下では転倒リスクが高くなるという報告(村永,2003)を支持するものであった。よって,2ステップテストは,歩行能力低下や下肢筋力低下を主体とする転倒転落リスク群のスクリーニングおよびリスク指標として活用できると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
2ステップテストが,身体機能低下を主体とした転倒リスクのスクリーニングおよびリスク指標として活用できる可能性が示唆された。
2ステップテストは,バランスを崩さずに実施可能な最大2歩幅を測定する検査であり,測定値を身長で除した値(以下,2ステップ値)から歩行能力を推定することができる。先行研究では,2ステップ値と転倒歴,転倒不安感との関連を調査し,転倒リスクの身体機能面のスクリーニングとしても有用であると報告されている(村永,2003)。
転倒転落アセスメントは,「リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン」に記述されている転倒・転落予測方法を基に予測精度の検証を重ねて作成された6項目10点満点から構成される予測方法であり,転倒リスクのスクリーニングに用いられている。
本研究の目的は,2ステップ値と転倒転落アセスメントの関連を調査し,転倒リスクのスクリーニングおよびリスク指標としての2ステップテストの有用性を明らかにすることである。
【方法】
対象は2013年7月1日から2014年8月31日の期間に理学療法を処方された65歳以上の入院患者で,測定に同意の得られた者とした。除外基準は,運動器外傷のある者,理解力の低い者,測定リスクが高い者,測定が困難な者とした。評価項目は2ステップテストと転倒転落アセスメントとした。
2ステップテストの測定は,退院時に安全面を配慮し平行棒内もしくは手すりを把持できる位置で,セラピストによる監視下で実施した。最大2歩幅を測定し,測定値を身長で除した値を2ステップ値とした。
転倒転落アセスメントは,電子カルテより後方視的に情報収集した。A.判断力低下(問題なし:0点,精神機能低下あり:2点),B.下肢筋力低下(自力歩行が可能:0点,補助具もしくは介助が必要:2点),C.転倒転落の既往(なし:0点,あり:3点),D.神経精神用薬の服用またはアルコール飲用(なし:0点,あり:1点),E.頻尿・尿失禁(なし:0点,あり:1点),F.日常生活に影響する視力障害(なし:0点,あり:1点)の6項目10点満点で構成されている。
合計点が3点未満の者を非リスク群,3点以上の者をリスク群とし,両群間の2ステップ値を比較した。また,転倒転落アセスメントの下位項目であるB.下肢筋力低下の0点の群(以下,0点群)と2点の群(以下,2点群)の2ステップ値を比較した。
統計解析は,2ステップ値と転倒転落アセスメントの合計点,各下位項目との関連をスピアマンの順位相関係数で解析した。各群間の2ステップ値の比較には対応のないt検定を用いた。各々有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象の基準を満たした者は140名(男性53名,女性87名)で,平均年齢(SD)は79.44(7.65)歳であった。
2ステップ値と転倒転落アセスメント合計点(p<0.05,r=-0.36),下位項目のA.判断力低下(p<0.05,r=-0.22),B.下肢筋力低下(p<0.05,r=-0.49)との間に相関を認めた。
2ステップ値の平均値(SD)は,非リスク群76名で1.03(0.27),リスク群64名で0.89(0.22)であり,両群間に有意差を認めた(p<0.05)。また,B.下肢筋力低下の0点群50名で1.13(0.21),2点群90名で0.88(0.23)であり,両群間に有意差を認めた(p<0.05)。
【考察】
転倒転落アセスメントは,身体機能・精神機能を含めた6項目で構成されており,多様な予測因子から転倒リスクをスクリーニングする評価指標である。予測精度の検証では,ROC曲線下面積は0.82(95%信頼区間0.80-0.84)であり,3点をカットオフ値としたところ,感度0.73,特異度0.77であったと報告されている(宮越,2014)。
本研究では,2ステップ値は転倒転落アセスメント合計点,下位項目のA.判断力低下と弱い負の相関関係を認め,B.下肢筋力低下と中程度の負の相関関係を認めた。この結果は,先行研究の,2ステップ値が低くなるにつれて徐々に転倒リスクが高くなり,1.0以下では転倒リスクが高くなるという報告(村永,2003)を支持するものであった。よって,2ステップテストは,歩行能力低下や下肢筋力低下を主体とする転倒転落リスク群のスクリーニングおよびリスク指標として活用できると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
2ステップテストが,身体機能低下を主体とした転倒リスクのスクリーニングおよびリスク指標として活用できる可能性が示唆された。