[O-0159] COPD患者に対する在宅呼吸ケアの現状調査
キーワード:慢性閉塞性肺疾患, 呼吸リハビリテーション, 訪問リハビリテーション
【はじめに,目的】
現在,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者は増加傾向にあり,今後,包括的呼吸ケアの重要性がさらに高まることが予測される。しかし,我々が過去に調査した在宅医療スタッフに対するアンケートでは,知識・技術がなく在宅での呼吸ケアに難渋しているという回答を多数得た。また,日本呼吸器学会がCOPD患者を対象に行ったアンケート調査では,在宅療養・指導に対する要望において,セルフマネジメントに必要と考えられる様々な情報が不足しているという結果も報告されている。そこで本研究では,現在の在宅呼吸ケアの問題点を明らかにすることを目的に,(1)COPD患者を担当している在宅医療従事者,(2)訪問看護もしくは訪問リハビリテーションを受けているCOPD患者を対象にそれぞれアンケート調査を行った。
【方法】
兵庫県訪問看護ステーション連絡協議会に登録されている兵庫県内の訪問看護ステーション414施設に,医療従事者向けアンケートおよび在宅COPD患者向けアンケートを送付した。在宅COPD患者に対しては,担当の医療従事者に配布を依頼し,期日までにアンケートの返送があった者を対象とした。
【結果】
414施設のうち105施設,医療従事者430名,COPD患者143名からアンケートの返信を得た。
430名の医療従事者の職種の内訳は,看護師(以下Ns)321名,理学療法士(以下PT)77名,その他32名で,そのうちCOPD患者を担当している割合は,Ns51.4%,PT49.4%であった。COPD患者に指導している内容は,Nsでは呼吸法(85.5%),服薬・吸入(73.9%),感染予防(66.7%)の回答率が高かったが,PTでは呼吸法(92.1%),運動療法(92.1%)以外の項目の回答率は30%以下であった。COPD患者の指導に困っていることについては,Nsではセルフマネジメント(56.4%),評価診断(52.7%),PTではセルフマネジメント(55.3%),リスク管理(47.4%)が高値であった。
また,143名のCOPD患者の平均年齢は77.2歳,男性112名,女性31名であり,121名(84.6%)が在宅酸素もしくは人工呼吸器を使用していた。日常生活で難しいと感じる動作については,坂道歩行(72.7%),階段(72.0%),入浴(66.4%),平地歩行(55.2%)の回答率が高かった。難しいと感じる理由については,息切れ(59.2%)と疲労(47.1%)が多かった。通院以外の外出は47.6%が「なし」と回答し,その理由として息切れへの不安(57.4%)が最も多かった。日常生活でもっと教えてほしいことについては,息切れを軽くする日常生活の工夫について(47.5%)や急な息切れの対応について(39.8%)と,息切れに関する項目が高値を示した。
【考察】
本研究の結果より,①COPD患者の在宅呼吸ケアを行っているPTの業務内容が呼吸法と運動療法に偏っていること,②COPD患者の日常生活の制限因子として息切れが大きな要因である可能性があることがわかった。
COPD患者に実施しているケアの内容として,呼吸法および運動療法についてPTの回答率は90%以上であったが,Nsの回答率が40%以上であった感染予防,服薬吸入,機械類の指導についてはPTの回答率は15%未満と低値であった。呼吸法についてはNs・PTともに高い回答率であったが,COPD患者の日常生活動作を難しいと感じる理由の多くが息切れであり,呼吸法のみでは息切れを防ぐことが困難である可能性が示唆された。
また,COPD患者の指導で困っていることについてNs,PTともにセルフマネジメントの項目で回答率が高く,セルフマネジメントの不足がCOPD患者の日常生活の阻害因子の一つであることが考えられる。COPD患者が在宅生活でもっと教えてほしいと思う項目は息切れの改善に関するものが多くを占めたことから,機能面中心のアプローチだけでなく,効率の良いADL動作指導に関与し活動量の向上につなげていく必要がある。さらに,困っていることについては,特にリスク管理およびもしものための対処法についてPTの回答率が高かった。すぐに診察や治療を行うことができない在宅場面において,職種を問わずその場に居合わせた医療スタッフが適切な対応を迅速に行わなければならない。在宅酸素療法を導入した理由の半数以上を急性増悪が占めているとの報告もあり,在宅酸素が日常生活を阻害する要因であることからも,在宅であっても異常の早期発見・介入できるシステムの確立が急務であり,PTもさらにリスク管理や対処法についても知識を備える必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
在宅呼吸ケアの現状を提示することで,地域包括ケアシステムにおける在宅呼吸器疾患患者に対する訪問リハビリテーションのさらなる進展が期待できる。
現在,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者は増加傾向にあり,今後,包括的呼吸ケアの重要性がさらに高まることが予測される。しかし,我々が過去に調査した在宅医療スタッフに対するアンケートでは,知識・技術がなく在宅での呼吸ケアに難渋しているという回答を多数得た。また,日本呼吸器学会がCOPD患者を対象に行ったアンケート調査では,在宅療養・指導に対する要望において,セルフマネジメントに必要と考えられる様々な情報が不足しているという結果も報告されている。そこで本研究では,現在の在宅呼吸ケアの問題点を明らかにすることを目的に,(1)COPD患者を担当している在宅医療従事者,(2)訪問看護もしくは訪問リハビリテーションを受けているCOPD患者を対象にそれぞれアンケート調査を行った。
【方法】
兵庫県訪問看護ステーション連絡協議会に登録されている兵庫県内の訪問看護ステーション414施設に,医療従事者向けアンケートおよび在宅COPD患者向けアンケートを送付した。在宅COPD患者に対しては,担当の医療従事者に配布を依頼し,期日までにアンケートの返送があった者を対象とした。
【結果】
414施設のうち105施設,医療従事者430名,COPD患者143名からアンケートの返信を得た。
430名の医療従事者の職種の内訳は,看護師(以下Ns)321名,理学療法士(以下PT)77名,その他32名で,そのうちCOPD患者を担当している割合は,Ns51.4%,PT49.4%であった。COPD患者に指導している内容は,Nsでは呼吸法(85.5%),服薬・吸入(73.9%),感染予防(66.7%)の回答率が高かったが,PTでは呼吸法(92.1%),運動療法(92.1%)以外の項目の回答率は30%以下であった。COPD患者の指導に困っていることについては,Nsではセルフマネジメント(56.4%),評価診断(52.7%),PTではセルフマネジメント(55.3%),リスク管理(47.4%)が高値であった。
また,143名のCOPD患者の平均年齢は77.2歳,男性112名,女性31名であり,121名(84.6%)が在宅酸素もしくは人工呼吸器を使用していた。日常生活で難しいと感じる動作については,坂道歩行(72.7%),階段(72.0%),入浴(66.4%),平地歩行(55.2%)の回答率が高かった。難しいと感じる理由については,息切れ(59.2%)と疲労(47.1%)が多かった。通院以外の外出は47.6%が「なし」と回答し,その理由として息切れへの不安(57.4%)が最も多かった。日常生活でもっと教えてほしいことについては,息切れを軽くする日常生活の工夫について(47.5%)や急な息切れの対応について(39.8%)と,息切れに関する項目が高値を示した。
【考察】
本研究の結果より,①COPD患者の在宅呼吸ケアを行っているPTの業務内容が呼吸法と運動療法に偏っていること,②COPD患者の日常生活の制限因子として息切れが大きな要因である可能性があることがわかった。
COPD患者に実施しているケアの内容として,呼吸法および運動療法についてPTの回答率は90%以上であったが,Nsの回答率が40%以上であった感染予防,服薬吸入,機械類の指導についてはPTの回答率は15%未満と低値であった。呼吸法についてはNs・PTともに高い回答率であったが,COPD患者の日常生活動作を難しいと感じる理由の多くが息切れであり,呼吸法のみでは息切れを防ぐことが困難である可能性が示唆された。
また,COPD患者の指導で困っていることについてNs,PTともにセルフマネジメントの項目で回答率が高く,セルフマネジメントの不足がCOPD患者の日常生活の阻害因子の一つであることが考えられる。COPD患者が在宅生活でもっと教えてほしいと思う項目は息切れの改善に関するものが多くを占めたことから,機能面中心のアプローチだけでなく,効率の良いADL動作指導に関与し活動量の向上につなげていく必要がある。さらに,困っていることについては,特にリスク管理およびもしものための対処法についてPTの回答率が高かった。すぐに診察や治療を行うことができない在宅場面において,職種を問わずその場に居合わせた医療スタッフが適切な対応を迅速に行わなければならない。在宅酸素療法を導入した理由の半数以上を急性増悪が占めているとの報告もあり,在宅酸素が日常生活を阻害する要因であることからも,在宅であっても異常の早期発見・介入できるシステムの確立が急務であり,PTもさらにリスク管理や対処法についても知識を備える必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
在宅呼吸ケアの現状を提示することで,地域包括ケアシステムにおける在宅呼吸器疾患患者に対する訪問リハビリテーションのさらなる進展が期待できる。