[O-0160] 回復期リハビリテーション病棟入院患者における自宅退院後の生活空間の変化と要因について(第1報)
Keywords:生活空間, 回復期, 在宅生活
【はじめに,目的】
近年,在宅高齢者や障がい者における身体活動量低下や閉じこもりが問題視されており,地域包括ケアシステムの構築を目指す動向も重なって,障がいのある者が地域において社会参加を達成することの重要性が叫ばれている。先行研究では,屋外歩行自立を達成するための歩行能力や閉じこもりに関する要因について検討がされているが,回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)を退院した患者の生活空間の変化の状況と関連する要因については明らかになっていない。本研究は,回復期病棟退院者における退院後の生活空間の変化を入院前・退院後の比較を以て検討し,外出への不安と屋外歩行自立度が相互にどのように影響を与えるのかを明らかにすることを目的とする。なお,本研究は筆者の所属する施設の平成26~28年度地域貢献研究の一部として実施された。
【方法】
研究協力者は,2013年10月1日~2014年8月31日の期間中,A病院回復期病棟においてリハビリテーションが提供され,自宅退院した成人患者(以下,退院者)のうち,本研究への同意が得られ,退院後調査に返信が得られた48名である。なお,退院先が自宅以外の者,歩行不能の者,著しい認知機能・高次脳機能障害を有する者,本研究に同意が得られない者は除外とした。調査項目は,年齢,性別,主疾患名,退院後の屋外歩行自立の可否,入院中の日常生活活動(Functional Independence Measure;FIM)をカルテから情報収集した。また,入院前の生活空間(Life-Space Assessment;LSA)および外出に対する不安の有無について対面調査にて聴取した。退院後LSAについては退院後1ヶ月時点に郵送法にて調査を行った。統計処理は,SPSS ver.21を用い,入院前・退院後LSAを被験者内要因,退院後の外出に対する不安の有無,屋外歩行自立度を被験者間要因とする反復測定分散分析を用いて解析を行った。さらに各調査時点における群間の比較には,独立サンプルのt検定またはMann-WhitneyのU検定を用いた。
【結果】
研究協力者の基礎情報は,年齢64.5±14.7歳,男性28名,女性20名であり,脳血管疾患32名(67%),整形外科疾患12名,脊椎・脊髄関連疾患4名,退院時FIM118.8±7.7点であった。退院時に外出に対する不安があると答えた者が13名(27.1%),ないと答えた者が35名であり,屋外歩行自立度に関しては,自立36名(75%),非自立12名であった。分散分析の結果,LSAの比較において有意な主効果を認め(p<0.01),外出の不安の有無による交互作用も確認されたが(p<0.05),屋外歩行自立度に関する交互作用は認められなかった(p>0.05)。外出に対する不安の有無,屋外歩行自立度,LSAによる3者の交互作用が有意傾向にあったため(p=0.050),自立度別に外出の不安とLSAの関係性について確認を行った。その結果,自立群においては入院前・退院後ともに外出への不安の有無による有意差は認めなかったが,非自立群では,不安が有る群でのみLSAの有意な低下を認めた(p<0.01)。
【考察】
本研究では,回復期病棟退院者における退院後の生活空間の変化と,外出への不安と屋外歩行自立度が与える影響を明らかにすることを目的に検討を行った。基礎情報から,研究協力者は比較的年齢が若く,入院中の日常生活活動の自立度が高く,退院時には屋外歩行が自立している群で構成されている傾向にあったが,入院前と比較して,退院後のLSAは有意な低下を示した。また,歩行自立度などの客観的な要因と比較して,外出に対する不安などの主観的な要因でLSAが低下をきたしやすいことが示された。さらに,本結果では有意傾向でではあるものの,外出への不安によるLSAへの影響は,歩行自立群より非自立群において強い影響を与える可能性がある。回復期病棟に入院した患者に対して,地域への外出を支援していくためには,患者自身の主観的な要因も考慮して介入していく必要性が示され,特に屋外歩行自立が達成できず,外出することへ不安がある者に対しては,身体活動量低下や閉じこもりのリスクが高い可能性が推察された。対象者数を増やし,退院後の長期的な経過について検討を続け,回復期病棟退院から地域生活へ円滑に復帰するための支援の在り方について,今後さらなる検討が必要である。
【理学療法学研究としての意義】
回復期リハビリテーションに関わる理学療法士は,患者のよりよい在宅生活復帰および社会参加を促進していくために,歩行自立の可否だけでなく外出に対する不安など主観的な要因も含めて評価・介入を行う必要性が示唆された。
近年,在宅高齢者や障がい者における身体活動量低下や閉じこもりが問題視されており,地域包括ケアシステムの構築を目指す動向も重なって,障がいのある者が地域において社会参加を達成することの重要性が叫ばれている。先行研究では,屋外歩行自立を達成するための歩行能力や閉じこもりに関する要因について検討がされているが,回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)を退院した患者の生活空間の変化の状況と関連する要因については明らかになっていない。本研究は,回復期病棟退院者における退院後の生活空間の変化を入院前・退院後の比較を以て検討し,外出への不安と屋外歩行自立度が相互にどのように影響を与えるのかを明らかにすることを目的とする。なお,本研究は筆者の所属する施設の平成26~28年度地域貢献研究の一部として実施された。
【方法】
研究協力者は,2013年10月1日~2014年8月31日の期間中,A病院回復期病棟においてリハビリテーションが提供され,自宅退院した成人患者(以下,退院者)のうち,本研究への同意が得られ,退院後調査に返信が得られた48名である。なお,退院先が自宅以外の者,歩行不能の者,著しい認知機能・高次脳機能障害を有する者,本研究に同意が得られない者は除外とした。調査項目は,年齢,性別,主疾患名,退院後の屋外歩行自立の可否,入院中の日常生活活動(Functional Independence Measure;FIM)をカルテから情報収集した。また,入院前の生活空間(Life-Space Assessment;LSA)および外出に対する不安の有無について対面調査にて聴取した。退院後LSAについては退院後1ヶ月時点に郵送法にて調査を行った。統計処理は,SPSS ver.21を用い,入院前・退院後LSAを被験者内要因,退院後の外出に対する不安の有無,屋外歩行自立度を被験者間要因とする反復測定分散分析を用いて解析を行った。さらに各調査時点における群間の比較には,独立サンプルのt検定またはMann-WhitneyのU検定を用いた。
【結果】
研究協力者の基礎情報は,年齢64.5±14.7歳,男性28名,女性20名であり,脳血管疾患32名(67%),整形外科疾患12名,脊椎・脊髄関連疾患4名,退院時FIM118.8±7.7点であった。退院時に外出に対する不安があると答えた者が13名(27.1%),ないと答えた者が35名であり,屋外歩行自立度に関しては,自立36名(75%),非自立12名であった。分散分析の結果,LSAの比較において有意な主効果を認め(p<0.01),外出の不安の有無による交互作用も確認されたが(p<0.05),屋外歩行自立度に関する交互作用は認められなかった(p>0.05)。外出に対する不安の有無,屋外歩行自立度,LSAによる3者の交互作用が有意傾向にあったため(p=0.050),自立度別に外出の不安とLSAの関係性について確認を行った。その結果,自立群においては入院前・退院後ともに外出への不安の有無による有意差は認めなかったが,非自立群では,不安が有る群でのみLSAの有意な低下を認めた(p<0.01)。
【考察】
本研究では,回復期病棟退院者における退院後の生活空間の変化と,外出への不安と屋外歩行自立度が与える影響を明らかにすることを目的に検討を行った。基礎情報から,研究協力者は比較的年齢が若く,入院中の日常生活活動の自立度が高く,退院時には屋外歩行が自立している群で構成されている傾向にあったが,入院前と比較して,退院後のLSAは有意な低下を示した。また,歩行自立度などの客観的な要因と比較して,外出に対する不安などの主観的な要因でLSAが低下をきたしやすいことが示された。さらに,本結果では有意傾向でではあるものの,外出への不安によるLSAへの影響は,歩行自立群より非自立群において強い影響を与える可能性がある。回復期病棟に入院した患者に対して,地域への外出を支援していくためには,患者自身の主観的な要因も考慮して介入していく必要性が示され,特に屋外歩行自立が達成できず,外出することへ不安がある者に対しては,身体活動量低下や閉じこもりのリスクが高い可能性が推察された。対象者数を増やし,退院後の長期的な経過について検討を続け,回復期病棟退院から地域生活へ円滑に復帰するための支援の在り方について,今後さらなる検討が必要である。
【理学療法学研究としての意義】
回復期リハビリテーションに関わる理学療法士は,患者のよりよい在宅生活復帰および社会参加を促進していくために,歩行自立の可否だけでなく外出に対する不安など主観的な要因も含めて評価・介入を行う必要性が示唆された。