[O-0161] 訪問リハビリテーション利用者の屋内生活空間における身体活動および動作能力の経時的変化
キーワード:訪問リハビリテーション, 生活空間, 動作能力
【はじめに,目的】
生活機能障害に伴う生活空間の狭小化によって活動範囲が屋内生活空間に限られやすい在宅高齢者では,自宅屋内を基点とした活動範囲および活動量の向上を検討するために,自宅屋内における生活空間での身体活動を把握する必要がある。屋外活動が困難な在宅高齢者では,加齢変化に付随する心身機能低下,老年症候群,既往疾患の症状変化によって屋内生活空間における身体活動が低下する可能性があると考えられるが,屋内生活空間における身体活動の経時的変化の実態は明らかとなっていない。本研究では,訪問リハビリテーション利用者を対象に,2年間追跡調査した屋内生活空間における身体活動の経時的な変化とともに,その経時的変化に関連する要因について検討することを目的とした。
【方法】
訪問リハビリテーションを利用する在宅高齢者のうち,2年間追跡調査を実施できた23人(平均年齢77.4±7.0歳)を対象とした。初回調査から1年ごとに,屋内生活空間における身体活動(home-based life-space assessment(Hb-LSA)),基本動作能力(bedside mobility scale(BMS),30seconds chair stand(CS-30)),日常生活動作能力(functional independence measure(FIM)およびFIM下位項目得点(運動FIM,認知FIM)),認知機能(mental status questionnaire(MSQ))を調査した。Hb-LSAは,過去1か月間において,自宅屋内を中心とした5段階の生活空間(ベッド上,寝室内,自宅住居内,自宅居住空間のごく近くの空間,自宅屋外)での移動または活動の有無,頻度,および自立度を調べた結果を得点化する指標である(得点範囲0-120点)。Hb-LSAおよび動作能力の経時的な変化を明らかにするため,初回調査時,1年後,2年後のHb-LSAおよび他の調査項目を一元配置分散分析および多重比較検定にて比較した。また,動作能力の変化が屋内生活空間における身体活動の変化に及ぼす影響を調べるため,2年後の動作能力(FIM(移乗,歩行,階段昇降),CS-30)の低下の有無を被験者間要因とした二元配置分散分析を,初回調査時の動作能力(FIM(移乗,歩行,階段昇降),CS-30)で調整して実施した。なお,有意確率は5%未満とした。
【結果】
一元配置分散分析にて2年間のHb-LSAを比較した結果,初回調査時60.3±4.8点,1年後58.1±3.9点,2年後51.9±4.3点であり,2年間で有意に低下していた(p<0.01)。また,FIM,認知FIM,BMSでは1年後と比べて2年後に,MSQでは初回調査時と比べて2年後に,有意な低下が認められた(p<0.05)。一方,運動FIMでは有意な経時的変化が認められなかった。初回調査時の動作能力を調整変数とした二元配置分散分析の結果,2年後におけるFIM(歩行)またはCS-30の低下とHb-LSAの経時的変化との間に有意な交互作用が認められ,FIM(歩行)またはCS-30が2年後に維持された群ではHb-LSAの有意な低下が示されたかったのに対して,FIM(歩行)またはCS-30が2年後に低下していた群では,Hb-LSAの有意な低下が認められた。
【考察】
訪問リハビリテーションを利用する在宅高齢者の屋内生活空間における身体活動を経時的に調査した結果,2年間で有意に低下していた。また,動作能力も2年間で低下しており,FIM歩行の自立度低下やCS-30の低下がHb-LSA低下に影響を与えることがわかった。これまで我々は,横断研究において,移動能力がHb-LSAに関連する要因であることを報告しており,今回の縦断研究の結果もこれを支持するものとなった。また,屋内生活空間における身体活動を維持・向上するためには,移動の起点・終点において必要となる起立着座動作のパフォーマンス向上を図るとともに,屋内生活空間を移動する能力そのものを維持・向上することが重要な要因となると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
屋外活動が制限される訪問リハビリテーション利用者において,屋内生活空間における身体活動の経時的な低下に関連する要因を明らかにすることで,屋内生活空間における身体活動の経時的な低下を予防するためには,起立着座動作能力や移動能力を維持・向上する必要があることを示唆した。
生活機能障害に伴う生活空間の狭小化によって活動範囲が屋内生活空間に限られやすい在宅高齢者では,自宅屋内を基点とした活動範囲および活動量の向上を検討するために,自宅屋内における生活空間での身体活動を把握する必要がある。屋外活動が困難な在宅高齢者では,加齢変化に付随する心身機能低下,老年症候群,既往疾患の症状変化によって屋内生活空間における身体活動が低下する可能性があると考えられるが,屋内生活空間における身体活動の経時的変化の実態は明らかとなっていない。本研究では,訪問リハビリテーション利用者を対象に,2年間追跡調査した屋内生活空間における身体活動の経時的な変化とともに,その経時的変化に関連する要因について検討することを目的とした。
【方法】
訪問リハビリテーションを利用する在宅高齢者のうち,2年間追跡調査を実施できた23人(平均年齢77.4±7.0歳)を対象とした。初回調査から1年ごとに,屋内生活空間における身体活動(home-based life-space assessment(Hb-LSA)),基本動作能力(bedside mobility scale(BMS),30seconds chair stand(CS-30)),日常生活動作能力(functional independence measure(FIM)およびFIM下位項目得点(運動FIM,認知FIM)),認知機能(mental status questionnaire(MSQ))を調査した。Hb-LSAは,過去1か月間において,自宅屋内を中心とした5段階の生活空間(ベッド上,寝室内,自宅住居内,自宅居住空間のごく近くの空間,自宅屋外)での移動または活動の有無,頻度,および自立度を調べた結果を得点化する指標である(得点範囲0-120点)。Hb-LSAおよび動作能力の経時的な変化を明らかにするため,初回調査時,1年後,2年後のHb-LSAおよび他の調査項目を一元配置分散分析および多重比較検定にて比較した。また,動作能力の変化が屋内生活空間における身体活動の変化に及ぼす影響を調べるため,2年後の動作能力(FIM(移乗,歩行,階段昇降),CS-30)の低下の有無を被験者間要因とした二元配置分散分析を,初回調査時の動作能力(FIM(移乗,歩行,階段昇降),CS-30)で調整して実施した。なお,有意確率は5%未満とした。
【結果】
一元配置分散分析にて2年間のHb-LSAを比較した結果,初回調査時60.3±4.8点,1年後58.1±3.9点,2年後51.9±4.3点であり,2年間で有意に低下していた(p<0.01)。また,FIM,認知FIM,BMSでは1年後と比べて2年後に,MSQでは初回調査時と比べて2年後に,有意な低下が認められた(p<0.05)。一方,運動FIMでは有意な経時的変化が認められなかった。初回調査時の動作能力を調整変数とした二元配置分散分析の結果,2年後におけるFIM(歩行)またはCS-30の低下とHb-LSAの経時的変化との間に有意な交互作用が認められ,FIM(歩行)またはCS-30が2年後に維持された群ではHb-LSAの有意な低下が示されたかったのに対して,FIM(歩行)またはCS-30が2年後に低下していた群では,Hb-LSAの有意な低下が認められた。
【考察】
訪問リハビリテーションを利用する在宅高齢者の屋内生活空間における身体活動を経時的に調査した結果,2年間で有意に低下していた。また,動作能力も2年間で低下しており,FIM歩行の自立度低下やCS-30の低下がHb-LSA低下に影響を与えることがわかった。これまで我々は,横断研究において,移動能力がHb-LSAに関連する要因であることを報告しており,今回の縦断研究の結果もこれを支持するものとなった。また,屋内生活空間における身体活動を維持・向上するためには,移動の起点・終点において必要となる起立着座動作のパフォーマンス向上を図るとともに,屋内生活空間を移動する能力そのものを維持・向上することが重要な要因となると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
屋外活動が制限される訪問リハビリテーション利用者において,屋内生活空間における身体活動の経時的な低下に関連する要因を明らかにすることで,屋内生活空間における身体活動の経時的な低下を予防するためには,起立着座動作能力や移動能力を維持・向上する必要があることを示唆した。