[O-0164] 訪問リハビリテーション利用者の終了要因から検討したサービス導入時の注意点
キーワード:訪問リハビリテーション, 利用終了, 要因
【はじめに,目的】
厚生労働省の発表する平成25年度介護給付費実態調査では,年間の介護保険の総受給者数は前年比4.5%の増加が見られると報告されている。前年度に比べ訪問看護では,6.2%の増加があったが,訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)は2.5%増加にとどまっており,未だ十分に周知されていないことがうかがえる。当院では,平成19年6月より訪問リハ事業所を開設し,サービスの提供を行ってきた。訪問リハへのサービスの導入は,利用者の希望や介護支援専門員のケアプランの方向性により決定されている。サービスの終了に至った利用者から原因を調査することは,訪問リハの適切なサービスの提供方法を検討する上で重要である。本調査の目的は,訪問リハの終了に至る要因を明らかにし,改善できる点について検討することである。
【方法】
対象は,当院訪問リハを平成19年6月23日から平成26年9月30日までに利用した全413例(78.9±10.8歳,男性202名,女性211名)から,現在利用継続中の利用者133例を除いた,280例であった。終了理由については,カルテ,報告書より後方視的に調査を行い,不明であったものについては,担当者より直接聴取を行った。終了の要因は,死亡,入院,施設入所,通所・短期入所サービスへ移行,ゴール達成,本人・家族意向,その他に分類した。各項目について全体に占める割合を算出した。
【結果】
終了者280例は平均年齢79.6±10.7歳で,男性140例,女性140例であった。終了要因の割合および件数は,入院24.6%69例,ゴール達成24.6%69例,死亡14.3%40例,本人・家族の意向12.5%35例,施設入所10.4%29例,通所・短期入所サービスへ移行が8.9%25例,その他4.6%13例(転居1.4%4例,本人・家族の生活の変化による終了1.4%4例,金銭的事由1.1%3例,不明0.7%2例)であった。
【考察】
終了理由では,入院とゴール達成による中止が24.6%と同率で最も多い割合となっていた。入院に関しては,在宅生活が困難となる身体機能の急性増悪や認知機能の低下を最小限に抑えていく方法が必要である。先行研究では,呼吸器疾患や悪性新生物,ADLが低い利用者において在宅生活が困難になりやすいと報告されており,訪問リハだけでなく,他の在宅サービスと連携してそれらへの対応を構築していくことが改善へ繫がると考える。ゴール達成に関しては,介入前の利用者と介護支援専門員の考える目標と訪問リハの目標が整合性を持って達成された結果が示されたものではないかと考える。一方で本人・家族意向による終了が12.5%であった。利用者の要望や介護支援専門員の導入意図が,提供側の訪問リハの意図と合わずに終了にいたることは,地域での訪問リハやリハ専門職の信頼を損ねることにも繫がると考えられる。介入前に訪問リハの内容やリハ後の状態など,事前に十分な説明があれば,避けられた事例もあったのではないかと考えられる。先行研究では,慢性期障害者に対する訪問リハは,IADLやADLの低下を抑え,自己効力感の向上,2年経過後の生存率に影響すると報告されている。利用者や家族,介護支援専門員がどういった要望で訪問リハを選択したのかをサービス導入前に聴取し,その要望のまま利用を受け入れるのではなく,利用者の状況により,これらの訪問リハの目的や効果を伝え,同意を得て導入することが重要であると考える。また,施設入所が10.4%,通所・短期入所サービスへ移行が8.9%であった。入院と合わせると,43.9%となり,心身の機能が変化することが,訪問リハが終了となる大きな原因となっていると考えられた。しかし,今回の調査では,入院やサービスの変更後,利用者がどういった状態になったかを調査することはできなかった。今後,終了後に経過を各担当者が聴取していくことで,より明確な改善点の検討が可能になると考える。
【理学療法学研究としての意義】
訪問リハの終了者より,その原因を調査した報告は少ない。今回の調査より訪問リハ被提供側の要望と実際の訪問リハの実態がそぐわず,終了となる例が見られた。訪問リハ導入時には,それらの齟齬の解消に努めることが重要であることが示唆され,サービス導入時に関わる理学療法士にとって有益な情報であると考える。
厚生労働省の発表する平成25年度介護給付費実態調査では,年間の介護保険の総受給者数は前年比4.5%の増加が見られると報告されている。前年度に比べ訪問看護では,6.2%の増加があったが,訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)は2.5%増加にとどまっており,未だ十分に周知されていないことがうかがえる。当院では,平成19年6月より訪問リハ事業所を開設し,サービスの提供を行ってきた。訪問リハへのサービスの導入は,利用者の希望や介護支援専門員のケアプランの方向性により決定されている。サービスの終了に至った利用者から原因を調査することは,訪問リハの適切なサービスの提供方法を検討する上で重要である。本調査の目的は,訪問リハの終了に至る要因を明らかにし,改善できる点について検討することである。
【方法】
対象は,当院訪問リハを平成19年6月23日から平成26年9月30日までに利用した全413例(78.9±10.8歳,男性202名,女性211名)から,現在利用継続中の利用者133例を除いた,280例であった。終了理由については,カルテ,報告書より後方視的に調査を行い,不明であったものについては,担当者より直接聴取を行った。終了の要因は,死亡,入院,施設入所,通所・短期入所サービスへ移行,ゴール達成,本人・家族意向,その他に分類した。各項目について全体に占める割合を算出した。
【結果】
終了者280例は平均年齢79.6±10.7歳で,男性140例,女性140例であった。終了要因の割合および件数は,入院24.6%69例,ゴール達成24.6%69例,死亡14.3%40例,本人・家族の意向12.5%35例,施設入所10.4%29例,通所・短期入所サービスへ移行が8.9%25例,その他4.6%13例(転居1.4%4例,本人・家族の生活の変化による終了1.4%4例,金銭的事由1.1%3例,不明0.7%2例)であった。
【考察】
終了理由では,入院とゴール達成による中止が24.6%と同率で最も多い割合となっていた。入院に関しては,在宅生活が困難となる身体機能の急性増悪や認知機能の低下を最小限に抑えていく方法が必要である。先行研究では,呼吸器疾患や悪性新生物,ADLが低い利用者において在宅生活が困難になりやすいと報告されており,訪問リハだけでなく,他の在宅サービスと連携してそれらへの対応を構築していくことが改善へ繫がると考える。ゴール達成に関しては,介入前の利用者と介護支援専門員の考える目標と訪問リハの目標が整合性を持って達成された結果が示されたものではないかと考える。一方で本人・家族意向による終了が12.5%であった。利用者の要望や介護支援専門員の導入意図が,提供側の訪問リハの意図と合わずに終了にいたることは,地域での訪問リハやリハ専門職の信頼を損ねることにも繫がると考えられる。介入前に訪問リハの内容やリハ後の状態など,事前に十分な説明があれば,避けられた事例もあったのではないかと考えられる。先行研究では,慢性期障害者に対する訪問リハは,IADLやADLの低下を抑え,自己効力感の向上,2年経過後の生存率に影響すると報告されている。利用者や家族,介護支援専門員がどういった要望で訪問リハを選択したのかをサービス導入前に聴取し,その要望のまま利用を受け入れるのではなく,利用者の状況により,これらの訪問リハの目的や効果を伝え,同意を得て導入することが重要であると考える。また,施設入所が10.4%,通所・短期入所サービスへ移行が8.9%であった。入院と合わせると,43.9%となり,心身の機能が変化することが,訪問リハが終了となる大きな原因となっていると考えられた。しかし,今回の調査では,入院やサービスの変更後,利用者がどういった状態になったかを調査することはできなかった。今後,終了後に経過を各担当者が聴取していくことで,より明確な改善点の検討が可能になると考える。
【理学療法学研究としての意義】
訪問リハの終了者より,その原因を調査した報告は少ない。今回の調査より訪問リハ被提供側の要望と実際の訪問リハの実態がそぐわず,終了となる例が見られた。訪問リハ導入時には,それらの齟齬の解消に努めることが重要であることが示唆され,サービス導入時に関わる理学療法士にとって有益な情報であると考える。