[O-0182] スクワット膝関節伸展運動時における健常膝関節の動態解析
Keywords:膝関節, スクワット, 三次元動作解析
【はじめに,目的】
膝関節は膝蓋大腿関節と脛骨大腿関節からなり,脛骨大腿関節は外側と内側で骨形態が異なる。膝関節は股関節や肩関節のような臼(球)関節と異なり,形状の異なる外側顆部と内側顆部によって回旋運動を行っている。先行研究において,非荷重下では膝関節は両顆部の非対称的な運動によって回旋運動を行うと報告されている。しかし,知見の大半は剖検例によるものであり,荷重下における膝関節両顆部の動きを検討した報告は少ない。日常動作の多くは荷重下で行われるため,荷重下における膝関節の運動特性を知ることは重要である。そこで今回,日常的に行われ,運動療法としても用いられるスクワット動作に着目した。本研究は,三次元動作解析装置を用いてスクワット膝関節伸展運動時における健常膝関節の運動特性を明らかにし,その移動量を求めることを目的とした。
【方法】
被験者は,下肢に手術や外傷の既往がない女性30名(年齢20.6±1.0歳,身長1.6±0.1m,体重54.9±6.5kg)とし,全員右下肢で計測した。開始肢位は足部内側を上前腸骨棘幅に合わせた立位とした。課題動作は下肢中間位,両上肢屈曲90度,踵接地した状態で膝関節完全伸展位から屈曲90度の範囲でスクワットを5回連続で行わせ,それを3セット計測した。課題動作速度は40bpmとした。課題動作中の赤外線マーカー位置を三次元動作解析装置VICON MX(Vicon社製)を用い,サンプリング周波数120 Hzにて計測した。マーカー位置は両上前腸骨棘,両大転子,右大腿中点(大転子と大腿骨外側上顆を結ぶ線上),右大腿骨外側上顆,右大腿骨内側上顆,右腓骨頭,右脛骨内側上顆,右下腿中点(大腿骨外側上顆と腓骨外果を結ぶ線上),右足関節内果,右足関節外果の合計12箇所とした。得られたデータを演算ソフトBodybuilder(Vicon社製)を用いて,膝関節屈曲・伸展角度,外旋・内旋角度,外反・内反角度を算出した。本研究は,大腿骨内側上顆と外側上顆の代表点を求めた。各々の代表点は,大腿骨外側上顆頂点と大腿骨内側上顆頂点の中間を大腿骨顆部中点とした。大腿骨顆部中点と大腿骨外側上顆頂点の中点を大腿骨外側顆部中点とし,これを大腿骨外側上顆の代表点と定めた。大腿骨顆部中点と大腿骨内側上顆頂点の中点を大腿骨内側顆部中点とし,これを大腿骨内側上顆の代表点と定めた。大腿骨外側上顆の代表点と大腿骨内側上顆の代表点を,下腿座標系に座標変換し,位置を求めた。腓骨頭と脛骨内側上顆に貼付したマーカーを結ぶ線の中点を,座標系の原点と定めた。誤差を最小限とするため解析区間は膝関節屈曲70°から10°までとした。分析項目は,膝関節伸展運動時の脛骨面上における大腿骨外側顆部中点・大腿骨内側顆部中点の前後移動量,左右移動量,各角度間の移動量の比較,大腿骨外側顆部中点・大腿骨内側顆部中点の移動量の比較とした。大腿骨(外側顆部中点・内側顆部中点)と膝関節屈曲角度を要因として2元配置の分散分析を用いた。上記の条件で有意差が確認されたのちTukeyの多重比較検定を行った。また,膝関節屈曲角度ごとの大腿骨外側顆部中点・内側顆部中点の移動量の比較にはT検定を用いた。
【結果】
膝関節屈曲70°~10°までのスクワット伸展運動時に,大腿骨外側顆部・内側顆部はともに前方・内側に移動した(大腿骨外側顆部中点の移動量:前方へ12.30 mm,内側へ1.97 mm大腿骨内側顆部中点の移動量:前方へ10.85 mm,内側へ1.42 mm)。特に大腿骨外側顆部は,大腿骨内側顆部よりも有意に前方へ移動した(p<0.05)。また,角度間における脛骨面上の大腿骨外側顆部・内側顆部の左右移動量は,大腿骨外側顆部の方が内側顆部よりも,70°~40°間で有意に内側へ移動した(p<0.05)。
【考察】
先行研究と同様に,本研究においても膝関節両顆部は非対称的な運動を行うことが明らかとなった。骨形態を考えると,外側顆部は脛骨凸面上の大腿骨凸面の運動であり,脛骨面上の大腿骨の運動軸は前方で前内側,後方で後内側を向く。一方,内側顆部は脛骨凹面上の大腿骨凸面の運動であり,脛骨面上の大腿骨の運動軸は直線的である。また,前額面からみて膝関節屈曲時に大腿骨両顆部の高さは同じであるが,伸展位では外側顆部が高位となる。これらの骨形態の違いも両顆部で非対称的な運動が引き起こされている原因と関係している可能性が考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
荷重下における健常生体膝の運動特性を明らかにすることは変形性膝関節症の発症・進行に関係するメカニズムの解明に繋がり,それらの予防や改善を目的とした理学療法確立のための基礎情報になる。
膝関節は膝蓋大腿関節と脛骨大腿関節からなり,脛骨大腿関節は外側と内側で骨形態が異なる。膝関節は股関節や肩関節のような臼(球)関節と異なり,形状の異なる外側顆部と内側顆部によって回旋運動を行っている。先行研究において,非荷重下では膝関節は両顆部の非対称的な運動によって回旋運動を行うと報告されている。しかし,知見の大半は剖検例によるものであり,荷重下における膝関節両顆部の動きを検討した報告は少ない。日常動作の多くは荷重下で行われるため,荷重下における膝関節の運動特性を知ることは重要である。そこで今回,日常的に行われ,運動療法としても用いられるスクワット動作に着目した。本研究は,三次元動作解析装置を用いてスクワット膝関節伸展運動時における健常膝関節の運動特性を明らかにし,その移動量を求めることを目的とした。
【方法】
被験者は,下肢に手術や外傷の既往がない女性30名(年齢20.6±1.0歳,身長1.6±0.1m,体重54.9±6.5kg)とし,全員右下肢で計測した。開始肢位は足部内側を上前腸骨棘幅に合わせた立位とした。課題動作は下肢中間位,両上肢屈曲90度,踵接地した状態で膝関節完全伸展位から屈曲90度の範囲でスクワットを5回連続で行わせ,それを3セット計測した。課題動作速度は40bpmとした。課題動作中の赤外線マーカー位置を三次元動作解析装置VICON MX(Vicon社製)を用い,サンプリング周波数120 Hzにて計測した。マーカー位置は両上前腸骨棘,両大転子,右大腿中点(大転子と大腿骨外側上顆を結ぶ線上),右大腿骨外側上顆,右大腿骨内側上顆,右腓骨頭,右脛骨内側上顆,右下腿中点(大腿骨外側上顆と腓骨外果を結ぶ線上),右足関節内果,右足関節外果の合計12箇所とした。得られたデータを演算ソフトBodybuilder(Vicon社製)を用いて,膝関節屈曲・伸展角度,外旋・内旋角度,外反・内反角度を算出した。本研究は,大腿骨内側上顆と外側上顆の代表点を求めた。各々の代表点は,大腿骨外側上顆頂点と大腿骨内側上顆頂点の中間を大腿骨顆部中点とした。大腿骨顆部中点と大腿骨外側上顆頂点の中点を大腿骨外側顆部中点とし,これを大腿骨外側上顆の代表点と定めた。大腿骨顆部中点と大腿骨内側上顆頂点の中点を大腿骨内側顆部中点とし,これを大腿骨内側上顆の代表点と定めた。大腿骨外側上顆の代表点と大腿骨内側上顆の代表点を,下腿座標系に座標変換し,位置を求めた。腓骨頭と脛骨内側上顆に貼付したマーカーを結ぶ線の中点を,座標系の原点と定めた。誤差を最小限とするため解析区間は膝関節屈曲70°から10°までとした。分析項目は,膝関節伸展運動時の脛骨面上における大腿骨外側顆部中点・大腿骨内側顆部中点の前後移動量,左右移動量,各角度間の移動量の比較,大腿骨外側顆部中点・大腿骨内側顆部中点の移動量の比較とした。大腿骨(外側顆部中点・内側顆部中点)と膝関節屈曲角度を要因として2元配置の分散分析を用いた。上記の条件で有意差が確認されたのちTukeyの多重比較検定を行った。また,膝関節屈曲角度ごとの大腿骨外側顆部中点・内側顆部中点の移動量の比較にはT検定を用いた。
【結果】
膝関節屈曲70°~10°までのスクワット伸展運動時に,大腿骨外側顆部・内側顆部はともに前方・内側に移動した(大腿骨外側顆部中点の移動量:前方へ12.30 mm,内側へ1.97 mm大腿骨内側顆部中点の移動量:前方へ10.85 mm,内側へ1.42 mm)。特に大腿骨外側顆部は,大腿骨内側顆部よりも有意に前方へ移動した(p<0.05)。また,角度間における脛骨面上の大腿骨外側顆部・内側顆部の左右移動量は,大腿骨外側顆部の方が内側顆部よりも,70°~40°間で有意に内側へ移動した(p<0.05)。
【考察】
先行研究と同様に,本研究においても膝関節両顆部は非対称的な運動を行うことが明らかとなった。骨形態を考えると,外側顆部は脛骨凸面上の大腿骨凸面の運動であり,脛骨面上の大腿骨の運動軸は前方で前内側,後方で後内側を向く。一方,内側顆部は脛骨凹面上の大腿骨凸面の運動であり,脛骨面上の大腿骨の運動軸は直線的である。また,前額面からみて膝関節屈曲時に大腿骨両顆部の高さは同じであるが,伸展位では外側顆部が高位となる。これらの骨形態の違いも両顆部で非対称的な運動が引き起こされている原因と関係している可能性が考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
荷重下における健常生体膝の運動特性を明らかにすることは変形性膝関節症の発症・進行に関係するメカニズムの解明に繋がり,それらの予防や改善を目的とした理学療法確立のための基礎情報になる。