[O-0183] スクワット動作時の大腿直筋およびハムストリングスの長さと骨盤矢状面アライメントの関係
キーワード:3次元動作解析, 大腿直筋, ハムストリングス
【はじめに,目的】
二関節筋は単関節筋と異なった特異的作用を有することが報告されている。そのため,二関節筋の機能を改善する際に,収縮力のみならず収縮様式や筋の長さ変化を考慮する必要がある。下肢の代表的な二関節筋である大腿直筋とハムストリングスのエクササイズとしてスクワットがある。スクワット動作中の骨盤アライメントの変化が2関節筋の筋活動に及ぼす影響は報告されているが,筋の長さに及ぼす影響については報告されていない。そこで本研究の目的は,骨盤前傾位と後傾位でスクワット動作を行った際の大腿直筋とハムストリングスの長さの変化について三次元動作解析機を用いて明らかにすることとした。
【方法】
被験者は下肢の手術の既往がなく踵部を挙上せずスクワット動作可能な男性10名(年齢18~23歳,20.5±1.58歳)とした。課題動作である骨盤前傾位スクワットと後傾位スクワットを5回ずつ3セット行った。スクワット中の運動力学データは赤外線反射マーカーを臨床歩行分析研究会の推奨する方法を参考に身体各標点に貼付し,赤外線カメラ8台を用いた三次元動作解析装置VICON MX(Vicon Motion Systems社製,Oxford)を用いて関節角度,大腿直筋全長,大腿直筋遠位部長,大腿直筋近位部長,ハムストリングス全長,ハムストリングス遠位部長,ハムストリングス近位部長を以下の方法で算出した。上前腸骨棘に貼付したマーカーと膝蓋骨上面に貼付したマーカーとの距離を求め,これを大腿直筋全長の近似値とした。次に大転子に貼付したマーカーと大腿骨外側上顆に貼付したマーカーを直線で結び,その直線の中点を大腿骨中点とした。中点から上前腸骨棘に貼付したマーカーと膝蓋骨上面に貼付したマーカーを結んだ線に対して垂線を引き,その交点を求めた。交点から上前腸骨棘に貼付したマーカーまでの距離を大腿直筋近位部長,交点から膝蓋骨上面に貼付したマーカーまでの距離を大腿直筋遠位部長とした。ハムストリングスの長さは,坐骨結節に貼付したマーカーと腓骨頭に貼付したマーカーとの距離を求め,これをハムストリングス全長の近似値とした。大腿骨中点から坐骨結節と貼付したマーカーと腓骨頭に貼付したマーカーを結んだ線に対して垂線を引き,その交点を求めた。交点から坐骨結節に貼付したマーカーまでの距離をハムストリングス近位部長,交点から腓骨頭に貼付したマーカーまでの距離をハムストリングス遠位部長とした。スクワット動作での伸展から屈曲運動中膝関節屈曲15°,30°,45°,60°の大腿直筋とハムストリングスの長さを算出した。筋の長さは被験者の身長(mm)で補正を行った。骨盤肢位と膝関節屈曲角度を要因として2元配置の分散分析を用いた。その後の検定は,Tukey法を用いた。また,骨盤肢位の違いによる比較はT検定を用いて行いp<0.05をもって有意差とした。
【結果】
大腿直筋全長は後傾位と比較して膝関節屈曲15°,30°,45°,60°全てにおいて前傾位で有意に短くなった(22.9,21.9,20.8,19.6,p<0.0001)。ハムストリングス全長は後傾位と比較して膝関節屈曲15°,30°,45°,60°全てにおいて前傾位で有意に長くなった(23.7,24.3,24.6,24.8,p<0.0001)。大腿直筋近位部長は骨盤後傾位と比較して膝関節屈曲15°,30°,45°,60°全てにおいて,前傾位で有意に短くなった(13.7,12.6,11.3,9.8,p<0.0001)。ハムストリングス近位部長は骨盤後傾位と比較して膝関節屈曲15°,30°,45°,60°全てにおいて前傾位で長くなった(11.5,12.4,13.3,14.1,p<0.0001)。
【考察】
本研究は骨盤前傾スクワットにおいて大腿直筋は短くなり,ハムストリグスは長くなった。骨盤後傾スクワットは骨盤前傾スクワットに比べて,大腿直筋とハムストリングスの長さの変化が乏しかった。熊本らは二関節筋がうまく機能すると本来,両端の一方では求心性収縮を行い,他方では遠心性収縮を起こして運動制御すると報告している。このことは,骨盤前傾スクワットにおいて大腿直筋およびハムストリングスの起始部と停止部で長さの変化様式が異なっているという本研究の結果を反映している。
【理学療法学研究としての意義】
スクワット動作中に骨盤アライメントを変化させることは,筋の長さを意識した特異的トレーニングになる可能性を示唆した。
二関節筋は単関節筋と異なった特異的作用を有することが報告されている。そのため,二関節筋の機能を改善する際に,収縮力のみならず収縮様式や筋の長さ変化を考慮する必要がある。下肢の代表的な二関節筋である大腿直筋とハムストリングスのエクササイズとしてスクワットがある。スクワット動作中の骨盤アライメントの変化が2関節筋の筋活動に及ぼす影響は報告されているが,筋の長さに及ぼす影響については報告されていない。そこで本研究の目的は,骨盤前傾位と後傾位でスクワット動作を行った際の大腿直筋とハムストリングスの長さの変化について三次元動作解析機を用いて明らかにすることとした。
【方法】
被験者は下肢の手術の既往がなく踵部を挙上せずスクワット動作可能な男性10名(年齢18~23歳,20.5±1.58歳)とした。課題動作である骨盤前傾位スクワットと後傾位スクワットを5回ずつ3セット行った。スクワット中の運動力学データは赤外線反射マーカーを臨床歩行分析研究会の推奨する方法を参考に身体各標点に貼付し,赤外線カメラ8台を用いた三次元動作解析装置VICON MX(Vicon Motion Systems社製,Oxford)を用いて関節角度,大腿直筋全長,大腿直筋遠位部長,大腿直筋近位部長,ハムストリングス全長,ハムストリングス遠位部長,ハムストリングス近位部長を以下の方法で算出した。上前腸骨棘に貼付したマーカーと膝蓋骨上面に貼付したマーカーとの距離を求め,これを大腿直筋全長の近似値とした。次に大転子に貼付したマーカーと大腿骨外側上顆に貼付したマーカーを直線で結び,その直線の中点を大腿骨中点とした。中点から上前腸骨棘に貼付したマーカーと膝蓋骨上面に貼付したマーカーを結んだ線に対して垂線を引き,その交点を求めた。交点から上前腸骨棘に貼付したマーカーまでの距離を大腿直筋近位部長,交点から膝蓋骨上面に貼付したマーカーまでの距離を大腿直筋遠位部長とした。ハムストリングスの長さは,坐骨結節に貼付したマーカーと腓骨頭に貼付したマーカーとの距離を求め,これをハムストリングス全長の近似値とした。大腿骨中点から坐骨結節と貼付したマーカーと腓骨頭に貼付したマーカーを結んだ線に対して垂線を引き,その交点を求めた。交点から坐骨結節に貼付したマーカーまでの距離をハムストリングス近位部長,交点から腓骨頭に貼付したマーカーまでの距離をハムストリングス遠位部長とした。スクワット動作での伸展から屈曲運動中膝関節屈曲15°,30°,45°,60°の大腿直筋とハムストリングスの長さを算出した。筋の長さは被験者の身長(mm)で補正を行った。骨盤肢位と膝関節屈曲角度を要因として2元配置の分散分析を用いた。その後の検定は,Tukey法を用いた。また,骨盤肢位の違いによる比較はT検定を用いて行いp<0.05をもって有意差とした。
【結果】
大腿直筋全長は後傾位と比較して膝関節屈曲15°,30°,45°,60°全てにおいて前傾位で有意に短くなった(22.9,21.9,20.8,19.6,p<0.0001)。ハムストリングス全長は後傾位と比較して膝関節屈曲15°,30°,45°,60°全てにおいて前傾位で有意に長くなった(23.7,24.3,24.6,24.8,p<0.0001)。大腿直筋近位部長は骨盤後傾位と比較して膝関節屈曲15°,30°,45°,60°全てにおいて,前傾位で有意に短くなった(13.7,12.6,11.3,9.8,p<0.0001)。ハムストリングス近位部長は骨盤後傾位と比較して膝関節屈曲15°,30°,45°,60°全てにおいて前傾位で長くなった(11.5,12.4,13.3,14.1,p<0.0001)。
【考察】
本研究は骨盤前傾スクワットにおいて大腿直筋は短くなり,ハムストリグスは長くなった。骨盤後傾スクワットは骨盤前傾スクワットに比べて,大腿直筋とハムストリングスの長さの変化が乏しかった。熊本らは二関節筋がうまく機能すると本来,両端の一方では求心性収縮を行い,他方では遠心性収縮を起こして運動制御すると報告している。このことは,骨盤前傾スクワットにおいて大腿直筋およびハムストリングスの起始部と停止部で長さの変化様式が異なっているという本研究の結果を反映している。
【理学療法学研究としての意義】
スクワット動作中に骨盤アライメントを変化させることは,筋の長さを意識した特異的トレーニングになる可能性を示唆した。