[O-0201] 教室型運動介入と日々の身体活動量介入の複合型運動プログラムによる認知機能,脳活動改善効果
―無作為化比較対照試験―
キーワード:運動介入, 認知機能, fMRI
【はじめに,目的】
近年,認知症発症や認知機能低下の予防を目的とした運動の有用性が多く報告されるようになった。しかし,短期間の運動介入における認知機能向上効果を示す研究は散見される程度であり,十分なエビデンスが構築されているとは言い難い。加えて,運動による認知機能向上を説明できるような神経基盤の変化を検証した研究は少なく,そのメカニズムは未だ不明確である。そこで本研究では,教室型運動介入と日々の身体活動量記録を組み合わせた複合型運動介入プログラムの効果を認知機能検査及び機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging:fMRI)により検証した。
【方法】
対象は地域在住高齢者48名(73.2±5.2歳,男性26名,女性22名)とし,無作為に介入群24名,対照群24名に群分けした。なお,Mini-Mental State Examination(MMSE)<24点の者,重度な神経学的・整形外科的疾患の既往を有する者は除外した。介入群には,週1回90分間の二重課題を中心とした教室型運動介入(ストレッチ,筋力トレーニング,有酸素運動,二重課題下での座位及び立位のステッピング運動)と,歩数計を用いた身体活動介入(カレンダーに日々の歩数を記録させ,自主的な身体活動量向上を促し,月1回の頻度で1ヶ月間の平均歩数と翌月の目標歩数(月々15%up)をフィードバック)を12週間実施した。一方,対照群には特別な介入は実施していない。介入前後における認知機能として,MMSE,ウェクスラー記憶検査論理記憶(WMS-LM)の直後・遅延再生,Trail Making Test(TMT)のpart-A・Bを測定した。さらに,working memory(WM)課題中の脳活動をfMRI装置によって撮像した。統計解析には二元配置分散分析を用いて,これらのアウトカムの介入効果を検討した。また,fMRIデータに関しては統計処理ソフトウェアSPM8を用いて,両群の介入前後のWM課題中の脳活動変化を検討した。
【結果】
介入群の平均歩数は3ヶ月間で54.1%増加し,有意な交互作用を示した(F=30.2,p<0.001)。また,WMS-LM直後再生(F=7.44,p=0.009)や遅延再生(F=7.80,p=0.008),TMT-A(F=4.51,p=0.039)やTMT-B(F=18.0,p<0.001)に介入効果を示す有意な交互作用を示した。さらに,両側背外側前頭前皮質を中心とした領域のWM課題中の脳活動において,介入によって活動が減少することを示す有意な交互作用がみられた。
【考察】
本研究の結果,健康な高齢者を対象に12週間の複合的運動プログラム(教室型運動介入と日々の身体活動量介入)を実施することによって記憶・遂行機能向上効果が得られた。さらに,WM課題時の前頭前皮質の脳活動が介入後に減少するという特徴的な神経基盤の変化も明らかとなった。これらより,運動介入には,神経細胞の成長・活性化を促進させ記憶・遂行機能を向上させることに加えて,認知的負荷がかかった際の脳活動効率化に有効であるという新しい知見が得られたと考える。本研究では介入後フォローアップを設けておらず,長期的な運動介入効果は不明であり,今後は長期的な介入効果を検証する必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
運動介入が脳活動の効率化と認知機能の向上に寄与するという本研究の結果は,運動療法を専門とする理学療法学分野において重要な情報となった。近年,介護予防領域等で理学療法に期待される領域は拡大しており,それら新領域でのエビデンス構築は極めて重要な課題である。本研究は,エビデンスレベルの高い研究デザインによって運動介入の効果を証明しており,実践的かつ基礎的な両側面において有益な情報になると考えている。
近年,認知症発症や認知機能低下の予防を目的とした運動の有用性が多く報告されるようになった。しかし,短期間の運動介入における認知機能向上効果を示す研究は散見される程度であり,十分なエビデンスが構築されているとは言い難い。加えて,運動による認知機能向上を説明できるような神経基盤の変化を検証した研究は少なく,そのメカニズムは未だ不明確である。そこで本研究では,教室型運動介入と日々の身体活動量記録を組み合わせた複合型運動介入プログラムの効果を認知機能検査及び機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging:fMRI)により検証した。
【方法】
対象は地域在住高齢者48名(73.2±5.2歳,男性26名,女性22名)とし,無作為に介入群24名,対照群24名に群分けした。なお,Mini-Mental State Examination(MMSE)<24点の者,重度な神経学的・整形外科的疾患の既往を有する者は除外した。介入群には,週1回90分間の二重課題を中心とした教室型運動介入(ストレッチ,筋力トレーニング,有酸素運動,二重課題下での座位及び立位のステッピング運動)と,歩数計を用いた身体活動介入(カレンダーに日々の歩数を記録させ,自主的な身体活動量向上を促し,月1回の頻度で1ヶ月間の平均歩数と翌月の目標歩数(月々15%up)をフィードバック)を12週間実施した。一方,対照群には特別な介入は実施していない。介入前後における認知機能として,MMSE,ウェクスラー記憶検査論理記憶(WMS-LM)の直後・遅延再生,Trail Making Test(TMT)のpart-A・Bを測定した。さらに,working memory(WM)課題中の脳活動をfMRI装置によって撮像した。統計解析には二元配置分散分析を用いて,これらのアウトカムの介入効果を検討した。また,fMRIデータに関しては統計処理ソフトウェアSPM8を用いて,両群の介入前後のWM課題中の脳活動変化を検討した。
【結果】
介入群の平均歩数は3ヶ月間で54.1%増加し,有意な交互作用を示した(F=30.2,p<0.001)。また,WMS-LM直後再生(F=7.44,p=0.009)や遅延再生(F=7.80,p=0.008),TMT-A(F=4.51,p=0.039)やTMT-B(F=18.0,p<0.001)に介入効果を示す有意な交互作用を示した。さらに,両側背外側前頭前皮質を中心とした領域のWM課題中の脳活動において,介入によって活動が減少することを示す有意な交互作用がみられた。
【考察】
本研究の結果,健康な高齢者を対象に12週間の複合的運動プログラム(教室型運動介入と日々の身体活動量介入)を実施することによって記憶・遂行機能向上効果が得られた。さらに,WM課題時の前頭前皮質の脳活動が介入後に減少するという特徴的な神経基盤の変化も明らかとなった。これらより,運動介入には,神経細胞の成長・活性化を促進させ記憶・遂行機能を向上させることに加えて,認知的負荷がかかった際の脳活動効率化に有効であるという新しい知見が得られたと考える。本研究では介入後フォローアップを設けておらず,長期的な運動介入効果は不明であり,今後は長期的な介入効果を検証する必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
運動介入が脳活動の効率化と認知機能の向上に寄与するという本研究の結果は,運動療法を専門とする理学療法学分野において重要な情報となった。近年,介護予防領域等で理学療法に期待される領域は拡大しており,それら新領域でのエビデンス構築は極めて重要な課題である。本研究は,エビデンスレベルの高い研究デザインによって運動介入の効果を証明しており,実践的かつ基礎的な両側面において有益な情報になると考えている。