第50回日本理学療法学術大会

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口述

口述27

地域理学療法3

Fri. Jun 5, 2015 3:00 PM - 4:00 PM 第11会場 (ガラス棟 G610)

座長:風間章好(株式会社 富士リハビリステーション 機能訓練プラザ)

[O-0202] 通所リハビリテーションを利用する要支援高齢者におけるロコモーショントレーニングの効果

~ランダム化比較対照試験における検討~

入山渉, 加藤仁志, 松澤正 (群馬パース大学大学院保健科学研究科保健科学専攻)

Keywords:ロコモーショントレーニング, 要支援高齢者, ランダム化比較対照試験

【はじめに,目的】
近年,運動器の障害の1つとしてロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)が注目されている。ロコモとは2007年に日本整形外科学会が提唱した概念であり,「運動器の障害による要介護の状態や要介護のリスクの高い状態」と定義される。ロコモはロコモーションチェック(以下,ロコチェック)にて判定される。ロコチェックは運動機能に関わる7つの質問項目から構成され,その項目に1つでも該当した場合にロコモと判定される。ロコモと判定された者は,片足立ちとスクワットに加え,ストレッチなど対象者が自由に選択して行う運動を含めたロコモーショントレーニング(以下,ロコトレ)をセルフトレーニングで行うことが推奨されている。このように,ロコトレのコンセプトはセルフチェックとセルフモニタリングであり,運動内容も高齢者に分かりやすく道具を使わずに行えることが特徴である。そのため,高齢者を対象にした研究が盛んに行われており,地域在住高齢者を対象にした細井ら(2011)や橋本ら(2012)は身体機能の改善を,整形外科医院へ外来通院している要支援高齢者および要介護1の高齢者を対象にした藤野ら(2010)は要介護度の維持・改善を報告している。しかし,これらの先行研究では対照群を設けておらず,先行研究の結果がロコトレによる効果であるか明らかではないと考えられる。そこで本研究では,通所リハビリテーション(以下,通所リハ)を利用している要支援高齢者を対象にランダム化比較対照試験を行い,ロコトレの効果を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は通所リハを利用している要支援高齢者38名(男性12名,女性26名,平均年齢81.6±9.6歳,53~94歳)であった。全対象者をランダムにロコトレ群と対照群に割り付けた。ロコトレ群は通所リハで通常実施している理学療法に加え,通所リハの担当理学療法士がロコトレを指導しロコトレを自宅で自主トレーニングとして実施させた。対照群は通所リハで通常実施している理学療法を継続しその他の運動習慣を変化しないように指示した。介入期間は12週間とし,介入前後で身体機能測定(等尺性膝伸展筋力,握力,開眼片足立ち時間,Functional Reach test(以下,FR),5m最大歩行速度,Timed Up and Go test(以下,TUG),長座位体前屈距離)と質問紙調査(変形性膝関節症患者機能評価尺度,腰痛症患者機能評価質問票,肢位強度法身体活動量推定法,Life-Space Assessment,Fall Efficacy Scale-International(以下,FES-I),Euro QOL日本語版5項目法)を行った。統計学的解析は介入前の各評価の群間差と介入前後の変化量の群間差を,独立サンプルのt検定およびウィルコクソンの符号順位検定を用いて比較した。なお,対象者の割り付け,介入前後の評価,統計学的解析は研究者および通所リハの理学療法士以外の理学療法士に依頼し盲検化を図った。解析ソフトはR2.8.1を使用し,有意確率は両側5%未満とした。
【結果】
介入前の評価項目は全ての項目で群間差は認められなかった。介入後調査を実施できなかったロコトレ群5名,対照群2名を除いた対象者において,介入前後の各評価項目の変化量を群間比較した結果,等尺性膝伸展筋力,5m最大歩行速度,TUG,FES-Iで有意差が認められた。それ以外の項目では有意差は認められなかった。
【考察】
介入前では,全ての評価項目で有意差が認められなかったため,介入前のロコトレ群と対照群には差がなかったことが考えられた。介入後では,等尺性膝伸展筋力,5m最大歩行速度,TUG,FES-Iの変化量で群間差が認められたことから,ロコトレを実施することでこれらの項目が良好な変化を示す効果があると考えられた。また,開眼片足立ち時間,FR,TUGにおいて,本研究の対象者の身体機能と先行研究の対象者の身体機能を比較すると,先行研究の対象者の方が良好な数値であり,本研究は先行研究に比べ身体機能の低い者を対象にしていた。そのため,本研究で対象にしたような身体機能の低い者に対してもロコトレは有効であることが明らかになった。
【理学療法学研究としての意義】
ロコトレを行うことで,下肢筋力・移動能力・転倒関連自己効力感への効果を期待できることが明らかになった。本研究の結果は,通所リハで理学療法内容を検討する際の資料として有意義であると考えられた。