[O-0203] 通所リハ利用者のLSAとその関連因子について
要支援・要介護脳卒中者の分析
キーワード:通所リハビリ, 活動範囲, 脳卒中者
【はじめに,目的】脳卒中者の生活期リハビリテーションでは,活動や参加へのリハ効果が求められている。しかし脳卒中者の活動,参加向上は従来の理学療法では対応仕切れない部分も多いため,今後アプローチや業務内容を再構築していく必要がある。本研究の目的は,通所リハに参加する要支援,要介護脳卒中者それぞれの活動範囲の現状とその関連因子を明らかにし,活動範囲を拡大するアプローチを再構築していく上での参考にすることである。
【方法】対象は全国デイ・ケア協会加入施設の通所サービスを利用している脳卒中者で,要支援者92名(平均介護度,要支援1.6±0.5,年齢74.5±9.8歳),要介護者531名(平均介護度,要介護2.7±1.2,年齢75.4±9.7歳)であった。方法は,まず要支援者,要介護者それぞれのLSAと,要介護度,性別,年齢,世帯人数,在宅生活期間,BI,MMSE,Vitality Index(意欲),認知症アセスメントシート(DASC),Zarit介護負担感尺度短縮版(J-ZBI 8)の10項目の相関分析を行なった。さらにLSAを従属変数とし,10項目の中で有意な相関があった項目を独立変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を行い,LSAに寄与する項目と寄与率を導出した。統計ソフトはSPSS ver17.0を使用し,統計学的な有意水準は5%未満とした。
【結果】要支援者,要介護者のLSAはそれぞれ,43.8±22.9と22.4±17.7であり要支援者が有意に高値であった。またLSAと有意な相関があった項目は,要支援者では年齢(-0.61),DASC(0.49),MMSE(0.41),BI(0.38),意欲(0.27),要介護度(-0.23)の6項目であり,要介護者ではBI(0.49),DASC(-0.37),要介護度(-0.36),意欲(0.28),MMSE(0.25),J-ZBI 8(-0.22),年齢(-0.17),性別(-0.13),の8項目であった。またこれらの有意な項目を独立変数,LSAを従属変数とした重回帰分析では,要支援者において「年齢」「DASC」の2要因が選択され,決定係数R2は0.48であった。同じく要介護者では「BI」が選択され,決定係数R2は0.24であった。両群共に算出した回帰モデルは統計学的に優位であった。
【考察】軽度の脳卒中者を対象とする福尾らの先行研究では,LSAが44であり,要支援脳卒中者のLSAを計測した本研究結果の43.8とほぼ同様の水準であった。またLSAの関連要因についての先行研究では前述した福尾らが主観的健康感,年齢,転倒恐怖感,連続歩行距離が関連するとしており,また島田らは地域在住高齢者を対象として,一般健康状態,運動機能,物的環境が直接的な関連がある事を明らかにしている。本研究では脳卒中要支援者において「年齢」「DASC」の2要因が選択された。年齢については前述した先行研究でも要因として選択されており妥当な結果であろう。もう一要因のDASCが選択されたのは,精神機能のみならずIADLや環境も含めた評価ツールであることが大きな要因であろう。要支援者は,身体能力は比較的高いため,基本的な身体能力のみの評価よりは身体機能と環境適応能力を同時に評価することが必要である。次に要介護者の先行研究では,大沼らが33/37人が要介護の対象者でLSAが19.6であると報告している。本研究の結果は22.4でありほぼ同様の結果であった。また本研究では要介護脳卒中者のLSAの関連要因としてBIが選択された。しかし決定係数は0.24と低かった。これは要介護脳卒中者の中でも移動能力や高次脳機能障害の有無など様々な障害像があり,LSAの規定要因も様々になるためであろう。今後の研究では,対象者をさらに層別化し関連要因を探っていくことが必要である。さらにこの結果から要支援,要介護脳卒中者それぞれに対してのLSA向上のためのアプローチを考えてみたい。まず要支援者に対しては身体機能と合わせて応用的なアプローチが重要である。つまり「銀行でお金をおろしたい。」「競馬をしたい。」といった利用者毎の外出目的に合わせたアプローチである。また要介護者には身体機能向上を図ると共に,移動能力や高次脳といった個別の障害像に合わせた外出に対してのバリアを評価していくこと,また地域毎の外出先や介助者等を検討することが必要であろう。要介護者の社会参加のためには我々が地域作りにかかわるようなことも重要ではないだろうか。
【理学療法学研究としての意義】理学療法士協会ではLSAが56以下であると1年以内に寝たきりになる可能性が高いとしている。通所リハビリ対象者のLSA平均は,要支援者でも43.8であり寝たきりになる可能性が高い。本研究結果は通所リハ利用者のLSAを向上させる必要性を明らかにし,さらにLSA向上アプローチの一助となると考える。
【方法】対象は全国デイ・ケア協会加入施設の通所サービスを利用している脳卒中者で,要支援者92名(平均介護度,要支援1.6±0.5,年齢74.5±9.8歳),要介護者531名(平均介護度,要介護2.7±1.2,年齢75.4±9.7歳)であった。方法は,まず要支援者,要介護者それぞれのLSAと,要介護度,性別,年齢,世帯人数,在宅生活期間,BI,MMSE,Vitality Index(意欲),認知症アセスメントシート(DASC),Zarit介護負担感尺度短縮版(J-ZBI 8)の10項目の相関分析を行なった。さらにLSAを従属変数とし,10項目の中で有意な相関があった項目を独立変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を行い,LSAに寄与する項目と寄与率を導出した。統計ソフトはSPSS ver17.0を使用し,統計学的な有意水準は5%未満とした。
【結果】要支援者,要介護者のLSAはそれぞれ,43.8±22.9と22.4±17.7であり要支援者が有意に高値であった。またLSAと有意な相関があった項目は,要支援者では年齢(-0.61),DASC(0.49),MMSE(0.41),BI(0.38),意欲(0.27),要介護度(-0.23)の6項目であり,要介護者ではBI(0.49),DASC(-0.37),要介護度(-0.36),意欲(0.28),MMSE(0.25),J-ZBI 8(-0.22),年齢(-0.17),性別(-0.13),の8項目であった。またこれらの有意な項目を独立変数,LSAを従属変数とした重回帰分析では,要支援者において「年齢」「DASC」の2要因が選択され,決定係数R2は0.48であった。同じく要介護者では「BI」が選択され,決定係数R2は0.24であった。両群共に算出した回帰モデルは統計学的に優位であった。
【考察】軽度の脳卒中者を対象とする福尾らの先行研究では,LSAが44であり,要支援脳卒中者のLSAを計測した本研究結果の43.8とほぼ同様の水準であった。またLSAの関連要因についての先行研究では前述した福尾らが主観的健康感,年齢,転倒恐怖感,連続歩行距離が関連するとしており,また島田らは地域在住高齢者を対象として,一般健康状態,運動機能,物的環境が直接的な関連がある事を明らかにしている。本研究では脳卒中要支援者において「年齢」「DASC」の2要因が選択された。年齢については前述した先行研究でも要因として選択されており妥当な結果であろう。もう一要因のDASCが選択されたのは,精神機能のみならずIADLや環境も含めた評価ツールであることが大きな要因であろう。要支援者は,身体能力は比較的高いため,基本的な身体能力のみの評価よりは身体機能と環境適応能力を同時に評価することが必要である。次に要介護者の先行研究では,大沼らが33/37人が要介護の対象者でLSAが19.6であると報告している。本研究の結果は22.4でありほぼ同様の結果であった。また本研究では要介護脳卒中者のLSAの関連要因としてBIが選択された。しかし決定係数は0.24と低かった。これは要介護脳卒中者の中でも移動能力や高次脳機能障害の有無など様々な障害像があり,LSAの規定要因も様々になるためであろう。今後の研究では,対象者をさらに層別化し関連要因を探っていくことが必要である。さらにこの結果から要支援,要介護脳卒中者それぞれに対してのLSA向上のためのアプローチを考えてみたい。まず要支援者に対しては身体機能と合わせて応用的なアプローチが重要である。つまり「銀行でお金をおろしたい。」「競馬をしたい。」といった利用者毎の外出目的に合わせたアプローチである。また要介護者には身体機能向上を図ると共に,移動能力や高次脳といった個別の障害像に合わせた外出に対してのバリアを評価していくこと,また地域毎の外出先や介助者等を検討することが必要であろう。要介護者の社会参加のためには我々が地域作りにかかわるようなことも重要ではないだろうか。
【理学療法学研究としての意義】理学療法士協会ではLSAが56以下であると1年以内に寝たきりになる可能性が高いとしている。通所リハビリ対象者のLSA平均は,要支援者でも43.8であり寝たきりになる可能性が高い。本研究結果は通所リハ利用者のLSAを向上させる必要性を明らかにし,さらにLSA向上アプローチの一助となると考える。