第50回日本理学療法学術大会

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口述

参加型症例研究ディスカッション 口述3

急性期理学療法

Fri. Jun 5, 2015 4:10 PM - 5:10 PM 第5会場 (ホールB5)

座長:村山芳博((公財)慈愛会 今村病院分院 リハビリセンター), 前田秀博(近森病院 理学療法科)

[O-0215] 敗血症性ショック後に四肢麻痺を呈しCritical illness polyneuropathyと診断された症例における理学療法経過

井上真秀1, 山﨑宗隆1, 高橋洋介1, 高石真二郎1, 高橋秀寿2, 牧田茂2 (1.埼玉医科大学国際医療センターリハビリテーションセンター, 2.埼玉医科大学国際医療センターリハビリテーション科)

Keywords:Critical Illness Polyneuropathy, 末梢神経障害, 筋力

【目的】
Critical illness polyneuropathy(以下,CIP)は,敗血症や多臓器不全などを誘因とした急性軸索神経障害と定義され,四肢の筋力低下や感覚障害を主症状とする。CIPはICU入室患者の5~7割に発症するとの報告があり,リハビリが治療の主体になるにもかかわらず,機能的回復過程を含めた理学療法経過に関する報告は少ない。今回,敗血症性ショック後に四肢麻痺を呈しCIPと診断され,約2ヵ月間の理学療法介入で二次的な有害事象の出現なく運動麻痺の回復,歩行能力向上を認めた一例を経験したので報告する。
【症例提示】
60歳代女性。腹部コンパートメント症候群により敗血症性ショックを来たし緊急入院。第12病日人工呼吸器を離脱したが,四肢弛緩性麻痺を認めCIPと診断された。第16病日理学療法開始。初回介入時は両上肢MMT3~4,両下肢MMT0~2レベルで左右非対称性に筋力低下あり。両下肢感覚は中等度~重度鈍麻,腱反射消失,病的反射陰性であった。
【経過と考察】
第26病日車椅子乗車開始。第52病日平行棒内歩行練習を両側金属支柱付長下肢装具使用下で開始。第64病日両側金属支柱付短下肢装具(以下,SLB)へ変更。第87病日両側SLBを使用し500mの歩行器歩行が可能となった。第90病日リハビリ病院へ転院。転院時のMMTは左前脛骨筋が1レベル,その他の下肢筋は3~4レベル,両上肢は5レベル,両下肢感覚は軽度鈍麻に改善し,ADLは歩行と階段昇降以外は自立に至った。針筋電図検査では右前脛骨筋,両側下腿三頭筋で脱神経電位陰性。左前脛骨筋で脱神経電位陽性であった。
CIPは多発性末梢神経障害であり,筋疲労や血清CK値などに留意した筋力強化や歩行練習の実施により,overwork weaknessの出現なく歩行能力が向上したと思われた。ICU入室患者などにおいて明らかに廃用では説明できない筋力低下を認めた場合,CIPの存在を念頭に置くことで安全かつ効果的な理学療法介入ができると考えられた。