第50回日本理学療法学術大会

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口述

参加型症例研究ディスカッション 口述3

急性期理学療法

Fri. Jun 5, 2015 4:10 PM - 5:10 PM 第5会場 (ホールB5)

座長:村山芳博((公財)慈愛会 今村病院分院 リハビリセンター), 前田秀博(近森病院 理学療法科)

[O-0216] 複数の合併症を併発し理学療法に難渋した重症熱傷症例の経験

竹丸修央1, 薬師寺高明1, 守山峻1, 永冨史子2, 近喰由美子3, 山田祥子3, 花山耕三3 (1.川崎医科大学附属病院, 2.川崎医科大学附属川崎病院, 3.川崎医科大学)

Keywords:急性期, 下肢重症熱傷, 合併症

【目的】
熱傷患者の急性期の理学療法は,ROMと筋力を維持し,離床を進め起居動作の早期獲得へつなぐ役割を持つ。今回,下肢重症熱傷後に,感染症からの敗血症や脳梗塞を合併,病室内隔離を余儀なくされ,理学療法に難渋したが,移乗介助量の軽減を図ることができた症例を経験したので報告する。
【症例提示】
70歳代,男性。両下肢III度熱傷(火焔熱傷,熱傷面積35.5%,熱傷指数34.0,熱傷予後指数112)を受傷し当院へ救急搬送された。左アキレス腱は溶解していた。既往に高血圧,糖尿病,心房細動,脳梗塞があったが,病前ADLは自立していた。
【経過と考察】
入院後,熱傷治療として植皮術を計5回施行された。理学療法は第4病日より開始した。人工換気下で意識はRASS-4,ROM制限はなく,周術期は運動許可関節のROM運動と足部の良肢位保持装具によるポジショニングを行った。第20病日に鎮静が中止され四肢自動運動を開始したが,左上肢筋力が優位に低下しており,両下肢の運動はみられなかった。その後,敗血症等を繰り返したが,全身の炎症反応と発熱が軽快した第116病日より離床を開始した。両足関節背屈ROM制限と全身の筋力低下を認め,座位保持は困難で,立位は両下肢とも膝折れがみられた。熱傷創痛で臥位,座位での筋力増強は困難であったため,最大介助であるが疼痛が少なく抗重力筋の収縮と足関節背屈ROMの改善が図れる立位での運動を選択した。膝折れ予防にソフトニーブレースを用い,植皮後の脆弱な皮膚を保護し立位練習を進めた。足関節ROMと全身の筋力は徐々に改善し,第160病日頃に車椅子・ベッド間の移乗が膝折れなく介助下で可能となった。
本症例は,熱傷周術期の術部安静の影響や合併症に伴う全身状態の悪化により,早期離床を図ることが出来なかった。一方で複雑化した病態に対して,制限された条件の中,創を保護し疼痛の少ない立位練習を選択し,創治癒を進めながら移乗の介助量軽減が図れた。