第50回日本理学療法学術大会

講演情報

口述

参加型症例研究ディスカッション 口述4

回復期理学療法のあり方を考える

2015年6月5日(金) 17:30 〜 18:30 第5会場 (ホールB5)

座長:髙見彰淑(弘前大学大学院 保健学研究科), 松葉好子(横浜市立脳血管医療センター リハビリテーション部)

[O-0257] 脳卒中片麻痺者の実用歩行獲得を目指した運動療法介入の検討

佐藤祐, 荒川武士, 市村篤, 石田茂靖 (森山リハビリテーション病院)

キーワード:脳卒中, 実用歩行, 運動療法

【目的】
脳卒中後歩行において,実用歩行の獲得は重要であり『安定性・速度・耐久性』が重要な条件となる(Janet 2011)。今回,重度感覚障害を呈した症例に対して,実用歩行の獲得を目指した運動療法介入を行いその効果を検証した。
【症例提示】
症例は40歳代男性,左被殻出血,右片麻痺,発症から約4ヶ月経過していた。Brunnstrom recovery stage上肢III,下肢IVで,足底感覚および深部感覚の障害が認められた。特に,「足裏に体重がかかる感じがとても鈍い」との訴えがあり,また股関節伸展位では膝・足関節の動きが全く分からなかった。歩行はT字杖使用し,近位監視にて可能であったが,麻痺側立脚期に骨盤が後外側方向へ流れてしまい,足関節は底屈内反位となっていた。感覚障害に加え,低緊張から生じる骨盤帯の不安定さと,足部のアライメント不良が,立脚期の不安定性につながっていると考えた。そしてこの歩容が速度や耐久性の低下を導き,実用歩行の獲得を困難にさせていると考えた。そのため運動療法は,骨盤帯と足部の協調性に着目して介入した。
介入は課題を段階付けながら施行した。まず,臥位・座位にて足底を参照点にしながらの骨盤帯の選択的運動を誘導し,可動性を拡大した。次に立位にて足関節背屈位での骨盤後傾股関節伸展を促通した。最後にバックステップ練習により,視覚での代償を取り除きながらの立脚期の安定性獲得を促した。介入は歩行練習も含め1日1時間4週間施行した。
【経過と考察】
4週間後の結果は,安定性・速度・耐久性すべてに改善が認められ実用歩行を獲得した。初期→最終。安定性(片脚立位):左支持2秒→15秒・右支持1秒→4秒,歩行速度(10m歩行時):0.56m/s→0.86m/s,耐久性(6分間歩行):136m→211m。足底感覚:0/5→5/5。
骨盤帯と足部の協調性に着目しながら段階的に治療介入し,麻痺側下肢の安定性を獲得したことが,実用歩行獲得に有効であったと推測された。