[O-0259] 補装具を用いたリハビリテーションにおいて理学療法士に求められる役割の再考
義肢装具士へのアンケート調査結果から
キーワード:補装具, 理学療法士の役割, 義肢装具士
【はじめに,目的】
理学療法士(以下,PT)は,補装具を用いたリハビリテーションにおいて重要な役割を担っている。しかし,昨今の経験の浅いPTの急増によりその役割が十分に担えていないことが懸念されている。この状況下において半田(1997年)は,福岡県のPTを対象に「補装具におけるPTの相談相手は誰か」について調査した結果,医師よりも義肢装具士(以下,PO)と多くの情報交換を行っていると報告している。このことは,補装具を用いたリハビリテーションにおいてPTとPOが相互の専門性を理解した上で密な関係性であることを示していると考える。
そこで本調査では,治療用補装具を製作・修正する時期において「POがPTに求めること」を明らかにし,改めてこの時期にPTが求められる役割を再考することを目的とした。
【方法】
関東地域(1都3県)の医療施設から受注を受けている5つの事業所に所属するPO(50名)を対象として,留置調査法にてアンケート調査を実施した(調査期間は平成25年4月~平成26年5月)。調査内容は,経験年数等の個人属性及び義足(治療用大腿義足)と下肢装具(片麻痺者の治療用プラスチック短下肢装具)製作・修正における①情報交換の時期,②情報交換の所要時間,③情報交換の内容,④PTからの情報不足内容等について選択回答及び自由回答方式にて回答を求め集計した。
【結果】
回答者は34名(平均年齢38.3±10.9歳,平均経験年数12.4±8.1年)であった(回収率68.0%)。義足製作における情報交換は,処方時期82.3%,仮合わせ時期94.1%,完成後のフォロー時期76.4%と高い割合で実施されていた。また,その所要時間は,全時期10分未満の占める割合が高かった(処方時期85.7%,仮合わせ時期56.3%,フォロー時期53.8%)。情報交換の内容では,処方時期で「ソケットや膝継手について」,仮合わせ時期及びフォロー時期で「フィッティングやアライメントについて」が最も多かった。この状況下で64.7%のPOが各時期においてPTからの情報不足を感じていた。その具体的な不足内容は,処方及び仮合わせ時期で「機能障害(関節可動域・筋力・疼痛等)の情報不足」,フォロー時期で「今後の能力向上の可能性を含めた歩行能力」を挙げていた。
一方,装具製作時における情報交換は,処方時期76.4%,仮合わせ時期70.6%であったのに対してフォロー時期では,47.1%と低い傾向にあり,さらに注目すべきは2名のPO(6%)は担当PTとの情報交換機会がないと回答していた。また,その所要時間は,各時期ともに10分未満の占める割合が高かった(処方時期84.6%,仮合わせ時期58.3%,フォロー時期62.5%)。情報交換の内容では,処方時期で「装具の種類(足継手の有無や種類)について」,仮合わせ時期で「フィッティングについて」,フォロー時期で「トリミングについて」が最も多かった。この状況下において58.8%のPOが各時期においてPTからの情報不足を感じていた。その具体的な不足内容は,処方時期で「機能障害(関節可動域・筋力・随意性等)」,仮合わせ時期で「今後の能力向上の可能性を含めた歩行能力」,フォロー時期で「フィッティング不良の動作情報」を挙げていた。
【考察】
本調査結果からPTは,医療における補装具を用いたリハビリテーションで専門性を十分に活かした役割は果たせていない可能性が示唆された。現状では,補装具製作・修正のあらゆる時期において高確率でPTとPOとの情報交換機会が設けられていた。しかし,この情報交換機会の多くは10分未満の短時間であり,POはPTからの情報内容に不足を感じていた。その具体的な不足情報内容は,補装具分野に特化した情報ではなく,あらゆる分野においてPTの専門性とされる「身体機能・能力評価の結果」であった。
これらより医療における補装具を用いたリハビリテーションでのPTの役割とは,「補装具を症例に適合させるために身体機能・能力評価結果をPOへ十分に伝え情報交換した上で,治療手段として補装具と運動療法を併用させ機能・能力向上を図ることである」と考えた。
【理学療法学研究としての意義】
本調査成果は,経験の浅いPTが医療における補装具を用いたリハビリテーションでその役割を十分に果たす際の一助となると考える。また,熟練PTが補装具に関与するPTの実態を把握することにより卒前・後の教育活動で早急に対応すべき臨床的視点として活かすことができると考える。
理学療法士(以下,PT)は,補装具を用いたリハビリテーションにおいて重要な役割を担っている。しかし,昨今の経験の浅いPTの急増によりその役割が十分に担えていないことが懸念されている。この状況下において半田(1997年)は,福岡県のPTを対象に「補装具におけるPTの相談相手は誰か」について調査した結果,医師よりも義肢装具士(以下,PO)と多くの情報交換を行っていると報告している。このことは,補装具を用いたリハビリテーションにおいてPTとPOが相互の専門性を理解した上で密な関係性であることを示していると考える。
そこで本調査では,治療用補装具を製作・修正する時期において「POがPTに求めること」を明らかにし,改めてこの時期にPTが求められる役割を再考することを目的とした。
【方法】
関東地域(1都3県)の医療施設から受注を受けている5つの事業所に所属するPO(50名)を対象として,留置調査法にてアンケート調査を実施した(調査期間は平成25年4月~平成26年5月)。調査内容は,経験年数等の個人属性及び義足(治療用大腿義足)と下肢装具(片麻痺者の治療用プラスチック短下肢装具)製作・修正における①情報交換の時期,②情報交換の所要時間,③情報交換の内容,④PTからの情報不足内容等について選択回答及び自由回答方式にて回答を求め集計した。
【結果】
回答者は34名(平均年齢38.3±10.9歳,平均経験年数12.4±8.1年)であった(回収率68.0%)。義足製作における情報交換は,処方時期82.3%,仮合わせ時期94.1%,完成後のフォロー時期76.4%と高い割合で実施されていた。また,その所要時間は,全時期10分未満の占める割合が高かった(処方時期85.7%,仮合わせ時期56.3%,フォロー時期53.8%)。情報交換の内容では,処方時期で「ソケットや膝継手について」,仮合わせ時期及びフォロー時期で「フィッティングやアライメントについて」が最も多かった。この状況下で64.7%のPOが各時期においてPTからの情報不足を感じていた。その具体的な不足内容は,処方及び仮合わせ時期で「機能障害(関節可動域・筋力・疼痛等)の情報不足」,フォロー時期で「今後の能力向上の可能性を含めた歩行能力」を挙げていた。
一方,装具製作時における情報交換は,処方時期76.4%,仮合わせ時期70.6%であったのに対してフォロー時期では,47.1%と低い傾向にあり,さらに注目すべきは2名のPO(6%)は担当PTとの情報交換機会がないと回答していた。また,その所要時間は,各時期ともに10分未満の占める割合が高かった(処方時期84.6%,仮合わせ時期58.3%,フォロー時期62.5%)。情報交換の内容では,処方時期で「装具の種類(足継手の有無や種類)について」,仮合わせ時期で「フィッティングについて」,フォロー時期で「トリミングについて」が最も多かった。この状況下において58.8%のPOが各時期においてPTからの情報不足を感じていた。その具体的な不足内容は,処方時期で「機能障害(関節可動域・筋力・随意性等)」,仮合わせ時期で「今後の能力向上の可能性を含めた歩行能力」,フォロー時期で「フィッティング不良の動作情報」を挙げていた。
【考察】
本調査結果からPTは,医療における補装具を用いたリハビリテーションで専門性を十分に活かした役割は果たせていない可能性が示唆された。現状では,補装具製作・修正のあらゆる時期において高確率でPTとPOとの情報交換機会が設けられていた。しかし,この情報交換機会の多くは10分未満の短時間であり,POはPTからの情報内容に不足を感じていた。その具体的な不足情報内容は,補装具分野に特化した情報ではなく,あらゆる分野においてPTの専門性とされる「身体機能・能力評価の結果」であった。
これらより医療における補装具を用いたリハビリテーションでのPTの役割とは,「補装具を症例に適合させるために身体機能・能力評価結果をPOへ十分に伝え情報交換した上で,治療手段として補装具と運動療法を併用させ機能・能力向上を図ることである」と考えた。
【理学療法学研究としての意義】
本調査成果は,経験の浅いPTが医療における補装具を用いたリハビリテーションでその役割を十分に果たす際の一助となると考える。また,熟練PTが補装具に関与するPTの実態を把握することにより卒前・後の教育活動で早急に対応すべき臨床的視点として活かすことができると考える。