第50回日本理学療法学術大会

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口述

参加型症例研究ディスカッション 口述5

訪問理学療法

Fri. Jun 5, 2015 6:40 PM - 7:40 PM 第5会場 (ホールB5)

座長:増田芳之(静岡県立静岡がんセンター リハビリテーション科), 小山樹(株式会社ジェネラス)

[O-0295] 独居筋萎縮性側索硬化症患者の在宅支援

独居生活を実現させるために必要なことは?

髙木章好1, 後藤利明2, 高田昌弥2, 奥山基紀2 (1.かすみがうら居宅介護支援センター, 2.かすみがうらクリニック)

Keywords:筋萎縮性側索硬化症, 在宅支援, 緩和ケア

【目的】在宅医療の推進に伴い,筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)患者が在宅で療養する例も少なくない。しかし,医療依存度が高くなる進行期に独居で過ごす例は希有であり,それを実現させるには多くの障壁が存在する。本研究の目的は,ALS患者が独居生活に至る経過を検証し,在宅生活を実現させる要素を明らかにすることである。
【症例提示】Aさん。*0歳代女性。ALS。200X年,上肢の脱力により発症。以後,徐々に全身の筋力低下が進行。200X+3年,訪問リハビリテーション(以下訪リハ)開始。訪リハ開始時は,夫,長男,次男,夫の両親と同居し,店舗兼住宅の2階部分に居住。トイレ,浴室は1階にあるため,要監視状態で階段昇降をしていた。200X+4年,訪問看護,訪問介護開始。200X+5年,胃瘻設置。200X+6年,独居開始。
【経過と考察】症状進行に伴い階段昇降が困難になると同時に,同居家族の介護協力が得られにくくなり,関係は悪化。胃瘻設置のための入院を期に,独居生活を決意。介護支援専門員と訪リハ担当者で準備を進め,独居生活を実現した。

独居開始後は,終日ベッド上での臥床状態で,ベッド,テレビのリモコン操作以外は全介助の状態である。そこで,日中夜間の支援スケジュールを設定し,介護保険,福祉制度を最大限活用し,独居生活を支援した。訪リハの介入は,リモコン操作能力の維持,介助下で起立~歩行能力の維持を図ることで,本人のみならず,他職種の援助時の介護量の軽減に貢献した。また,本人の霊的苦痛に対する対処を積極的に実施した。

本症例が独居生活を実現できたのは,本人の強い意志が何より重要であるが,援助する各専門職が目標を共有し,チームとしてその人らしさを尊重したことによる。その根底には本人のQOLの向上を意識した緩和ケアの概念があり,従来より地域で醸成されてきた,難病患者を支える体制が奏功した結果と考えられる。