[O-0321] 走行における機能靴下の効果
足底圧評価による検討
Keywords:機能靴下, 走行, アーチサポート
【はじめに,目的】
近年,足部アーチサポート機能を施した靴下(以下,機能靴下)が流通し,走りやすさや疲労軽減を期待するアスリートやスポーツ愛好家に広まりつつある。我々は先行研究において,立位や歩行でのアーチサポート効果と,勤労女性の長時間着用における疲労軽減効果を報告した。しかし,走行における効果が不明確であった。そこで,本研究では走行中の機能靴下のアーチサポート効果を速度毎に検証することを目的とした。
【方法】
対象は健常成人男性10名(平均年齢:28.27±2.80)の左右20足とし,使用した靴下は通常靴下と機能靴下(N社製),計測靴は統一した。運動課題はトレッドミル上での走行とし,走行は時速10,12,14,16kmの4条件,各速度における走行時間は約10秒間とした。その際,F-scanII(ニッタ社製)を用いて走行中の足底圧を計測した。計測時間は走行が安定した後の5秒間として,分析対象は計測時間中の安定した左右連続3歩とした。分析項目は足部アーチ指数であるCenter of Pressure Excursion index(以下,CPEI),Modified Arch index(以下,MAI)の2項目とした。統計学的検討として,各走行速度のCPEI,MAIを用いて,靴下間の比較検討を対応のあるt検定にて行った。尚,有意水準は5%未満とした。
【結果】
各走行速度におけるCPEI(%)は通常靴下,機能靴下の順に,時速10kmは7.56±4.28,10.21±4.80,時速12kmは7.98±4.20,9.36±4.80,時速14kmは7.96±3.68,9.51±4.02,時速16kmは8.79±3.21,10.50±3.82であり,全ての速度において機能靴下の有意な高値を認めた。各走行速度におけるMAIは通常靴下,機能靴下の順に,時速10kmは0.118±0.051,0.111±0.056,時速12kmは0.118±0.050,0.111±0.055,時速14kmは0.119±0.049,0.113±0.054,時速16kmは0.119±0.046,0.114±0.051であり,全ての速度において機能靴下の有意な低値を認めた。
【考察】
CPEIは足圧中心軌跡から算出され,足圧中心が外側方向へ弧を描きながら推移するほど高い値を示す。結果より,全ての速度条件において機能靴下着用時の足圧中心はより外側を推移した。また,MAIは中足部の荷重割合を示し,その算出には前・中・後足部の3区画に分割したそれぞれの荷重積分値が用いられる。結果より,全ての速度条件において機能靴下着用時に中足部荷重割合は減少した。以上で述べた足圧中心の外側への推移,中足部荷重割合の減少は,走行中の機能靴下のアーチサポート効果によるものと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
機能靴下の走行におけるアーチサポート効果を認めた。機能靴下は足部アーチ低下に起因する種々の足部障害の発生予防やリハビリテーションに活用出来る可能性がある。
近年,足部アーチサポート機能を施した靴下(以下,機能靴下)が流通し,走りやすさや疲労軽減を期待するアスリートやスポーツ愛好家に広まりつつある。我々は先行研究において,立位や歩行でのアーチサポート効果と,勤労女性の長時間着用における疲労軽減効果を報告した。しかし,走行における効果が不明確であった。そこで,本研究では走行中の機能靴下のアーチサポート効果を速度毎に検証することを目的とした。
【方法】
対象は健常成人男性10名(平均年齢:28.27±2.80)の左右20足とし,使用した靴下は通常靴下と機能靴下(N社製),計測靴は統一した。運動課題はトレッドミル上での走行とし,走行は時速10,12,14,16kmの4条件,各速度における走行時間は約10秒間とした。その際,F-scanII(ニッタ社製)を用いて走行中の足底圧を計測した。計測時間は走行が安定した後の5秒間として,分析対象は計測時間中の安定した左右連続3歩とした。分析項目は足部アーチ指数であるCenter of Pressure Excursion index(以下,CPEI),Modified Arch index(以下,MAI)の2項目とした。統計学的検討として,各走行速度のCPEI,MAIを用いて,靴下間の比較検討を対応のあるt検定にて行った。尚,有意水準は5%未満とした。
【結果】
各走行速度におけるCPEI(%)は通常靴下,機能靴下の順に,時速10kmは7.56±4.28,10.21±4.80,時速12kmは7.98±4.20,9.36±4.80,時速14kmは7.96±3.68,9.51±4.02,時速16kmは8.79±3.21,10.50±3.82であり,全ての速度において機能靴下の有意な高値を認めた。各走行速度におけるMAIは通常靴下,機能靴下の順に,時速10kmは0.118±0.051,0.111±0.056,時速12kmは0.118±0.050,0.111±0.055,時速14kmは0.119±0.049,0.113±0.054,時速16kmは0.119±0.046,0.114±0.051であり,全ての速度において機能靴下の有意な低値を認めた。
【考察】
CPEIは足圧中心軌跡から算出され,足圧中心が外側方向へ弧を描きながら推移するほど高い値を示す。結果より,全ての速度条件において機能靴下着用時の足圧中心はより外側を推移した。また,MAIは中足部の荷重割合を示し,その算出には前・中・後足部の3区画に分割したそれぞれの荷重積分値が用いられる。結果より,全ての速度条件において機能靴下着用時に中足部荷重割合は減少した。以上で述べた足圧中心の外側への推移,中足部荷重割合の減少は,走行中の機能靴下のアーチサポート効果によるものと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
機能靴下の走行におけるアーチサポート効果を認めた。機能靴下は足部アーチ低下に起因する種々の足部障害の発生予防やリハビリテーションに活用出来る可能性がある。