第50回日本理学療法学術大会

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口述

セレクション 口述7

呼吸

Sat. Jun 6, 2015 8:15 AM - 9:15 AM 第6会場 (ホールD7)

座長:小川智也(公立陶生病院 中央リハビリテーション部), 田平一行(畿央大学)

[O-0329] COPD患者における生活範囲の広狭とGOLD病期分類で4群に分けた諸項目の差

小栁泰亮1,5, 白仁田秀一1,5, 堀江淳2,5, 平川史央里1,5, 今泉潤紀3,5, 林真一郎4,5, 渡辺尚1,5 (1.長生堂渡辺医院, 2.京都橘大学, 3.佐賀大学医学部附属病院, 4.医療法人社団高邦会高木病院, 5.NPOはがくれ呼吸ケアネット)

Keywords:慢性閉塞性肺疾患, 生活範囲, 呼吸機能

【はじめに,目的】
近年,慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する身体活動量管理は,生命予後や増悪予防の観点において重要であることが報告されている。一方,身体活動量と運動能力の関係性はエビデンスが低い。しかし,臨床において身体活動量の高い症例は運動能力等が良好である事を多く経験する。そこで,今回,身体活動量を生活範囲の観点で評価するLife Space Assessment(LSA)と病期の進行度であるGOLD病期分類(GOLD)で4群に分け,生活範囲の広狭と病期別で息切れなどの諸項目に差が生じるか検討した。
【方法】
対象は外来通院中のCOPD患者76例(年齢は73.1±9.39歳,性別は男性69例,BMIは22.8±3.7,%FEV1.0は57.04±23.4%)である。群間分けをLSAの基準値である84点以上,未満とGOLD1期と2期,3期と4期の4群とし,LSA84点以上かつGOLD1期と2期を①広大・早期群(n=20),LSA84点以上かつGOLD3期と4期を②広大・進行期群(n=17),LSA84点未満かつGOLD1期と2期を③狭小・早期群(n=21),LSA84点未満かつGOLD3期と4期を④狭小・進行期群(n=18)とした。比較する項目は,症状評価はmodified Medical Reseach Council Scale(mMRC),栄養評価は簡易栄養状態評価表(MNA),身体能力評価は呼気筋力(MEP),吸気筋力(MIP),膝伸展筋力体重比(%膝伸展筋力),6分間歩行距離テスト(6MWT),ADL評価は長崎大学呼吸器疾患ADL質問票(NRADL),QOL評価はSt. George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ),精神評価はHospital Anxiety and Depression Scale(HADS不安,鬱)とした。
統計学的解析は,各群の平均値の比較を一元配置の分散分析で行い,その後の検定をTukeyの方法を用いて分析した。なお,帰無仮説の棄却域は有意水準5%未満とした。
【結果】
各項目の結果を,①広大・早期群,②広大・進行期群,③狭小・早期群,④狭小・進行期群の順に記載し,また,()内は有意差が認められた比較を記載した。mMRCは①0.9±0.6②1.2±0.6③2.2±1.0④3.1±1.0(①vs③,①vs④,②vs③,②vs④,③vs④),MNAは①26.2±2.6点,②23.8±3.4点,③22.2±3.0点,④20.1±3.6(①vs③,①vs④,②vs④),MEPは①121.9±41.2cmh2o,②114.5±46.8cmh2o,③78.3±29.0cmh2o,④74.8±32.9cmh2o(①vs③,①vs④,②vs③,②vs④),MIPは①72.7±24.6cmh2o,②59.1±25.8cmh2o,③48.7±24.9cmh2o,④43.9±17.1cmh2o(①vs③,①vs④),%膝伸展筋力は①65.1±12.6%,②64.3±14.4%,③47.1±13.1%,④51.2±11.5%(①vs③,①vs④,②vs③,②vs④),6MWTは①433.5±75.6m,②431.2±63.7m,③320.5±87.3m,④261.7±117.3m(①vs③,①vs④,②vs③,②vs④),NRADLは①92.9±10.9点,②84.2±11.9点,③78.5±11.5点,④59.8±23.7点(①vs③,①vs④,②vs④,③vs④),SGRQは①25.0±15.5点,②40.6±19.1点,③46.1±17.1点,④61.1±16.2点(①vs②,①vs③,①vs④,②vs④,③vs④),HADS不安は①4.4±2.5点,②3.2±3.0点,③6.1±3.9点,④7.3±5.2点(②vs④),HADS鬱は①4.8±3.1点,②5.0±2.9点,③8.3±2.3点,④8.4±3.5点(①vs③,①vs④,②vs③,②vs④)であった。
【考察】
本研究の結果,生活範囲の広大群はGOLDとは関係なく,mMRCスケール,呼気筋力,%膝伸展筋力,6MWT,HADS鬱に有意に良好であること,また,その他の項目も良好な傾向にあることが示された。GOLDが進行しているCOPDにおいても,生活範囲が広大している群は,GOLDが早期かつ生活範囲が広大している群と比較してほとんどの項目で差は認められなかった。また,GOLDが早期においても生活範囲が狭小化している群は広大・進行群と比較して,ほとんどの項目で有意に悪化していることが示された。呼吸機能が悪化しても,生活範囲を広大に保つことは,身体機能を良好にさせ,息切れ症状を軽減させていること,また,早期においても,生活範囲狭小群は,廃用症候群により身体機能を低下させ,息切れ症状を悪化させていることが考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,GOLD病期分類におけるCOPD患者の生活範囲が及ぼす影響について客観的に検証した研究である。今研究結果は,生活範囲の広さを維持・改善させるような呼吸理学療法実施や,プログラム立案の重要なアセスメントとなる研究であると考えられる。