第50回日本理学療法学術大会

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口述

口述45

管理運営3

Sat. Jun 6, 2015 8:15 AM - 9:15 AM 第8会場 (ガラス棟 G402)

座長:薄直宏(東京女子医科大学八千代医療センター リハビリテーション室)

[O-0339] 急性期病院における病棟リハビリテーションの取り組み

村田竜一郎, 立野伸一, 作村里美, 山下梢, 黒木はるか (熊本赤十字病院)

Keywords:急性期病院, 病棟リハビリテーション, 取り組み

【はじめに,目的】
当院は,総合救命救急センターやこども医療センター,ドクターヘリを有し,基幹災害医療センターの指定を受ける急性期施設である。リハビリテーション科においても,救命救急センターや集中治療室からの超急性期リハビリテーションに携わっている。今回,更なる,超急性期リハビリテーション強化プロジェクトの一つとして,平成26年3月より一般病棟内に「病棟リハビリステーション」(以下リハステーション)を新設した。「急性期リハビリテーションは,患者診療に関わる全職種で行い,救命,疾患の治療と並行して早期に機能改善を目指し,廃用症候群を予防して効果的なリハビリテーション(以下リハ)を施行する。それにより,出来る限り機能回復が成された状態で回復期や在宅へ繋ぐ」という目的の下,このリハステーションは,院内連携の拠点として多職種が有効利用できる学際超越的(trans disciplinary)な空間創りを目指し開設した。今回は,新設したリハステーションの運用状況と当院リハビリテーション科の取り組みについて報告する。
【方法】
平成26年3月3日から10月31日までの脳卒中,整形外科病棟入院中の理学療法,作業療法,言語聴覚療法をリハステーションで施行した患者を対象とした。具体的には,①座位耐久性が不十分な患者,②注意障害等の高次脳機能障害がありリハ室でのリハ環境に適応できない患者,③摂食嚥下障害を有する患者,④廃用症候群や認知症の合併症が危惧される患者をリハステーション使用対象患者とした。フローチャートにて対象患者を選定し,リハステーションでの個別ex,摂食嚥下exや病棟フロアーでの起立歩行exを実施した。その他の取り組みとして,①多職種の連携強化を図る為のカンファレンスの実施,②早期リハの啓蒙やリハ看護のスキルアップを目的とした病棟スタッフへのレクチャーを定期的に実施,③病棟スタッフによる集団アクティビティーに対するアドバイスや患者家族への指導を実施,④導入後の脳卒中リハ開始日の推移調査を実施している。
【結果】
対象患者のうちリハステーションにて実施した患者数は延べ391名であった。尚,リハステーションでの個別療法稼働状況は,平均1.9人/日であった。疾患別使用割合としては,脳梗塞が77%,脳出血11%,くも膜下出血3.8%,整形外科0.5%,その他6.9%であった。リハステーション使用時の脳卒中再発等のイベント発生率0%であった。脳卒中平均リハ開始日としては,25年度は2.7日で,26年度は2.3日であった。
【考察】
今回,リハステーションを設置した事で,チーム医療による早期離床と急性期から効率的で良質なリハ医療を提供する態勢について紹介した。リハステーションでの個別療法稼働状況としては,平均1.9人/日であり,脳梗塞の患者が77%と多数を占めており,運用上フローチャートによる患者選定・リスク管理を行う事で,脳卒中再発等のイベント発生もなく使用出来ている状況だった。また,リハステーション導入後の脳卒中リハ開始日の推移としては,25年度の2.7日に比べ26年度は2.3日と早期化を示し,リハステーションの導入効果と思われる。チーム医療の定義が時代とともに変化していく中で,2010年に厚生労働省が開催した「チーム医療の推進に関する検討会」では「医療に従事する多種多様なスタッフが,各々の高い専門性を前提に,目的と情報を共有し,業務を分担しつつもお互いに連携・補定し合い,患者の状況に的確に対応した医療を提供すること」と定義されている。今後もこの取り組みを続け,急性期からの積極的なチーム医療の提供により,在宅復帰率の向上や再入院率低下といった新たな医療制度改革の方向性を視野に入れ,更なる,包括的リハシステムの構築を進めていきたい。
【理学療法学研究としての意義】
「脳卒中ガイドライン」において,急性期リハは十分なリスク管理のもとに早期から積極的なリハを行うこと,脳卒中ユニットなどの組織化された場で,リハチームによる集中的なリハを行い,早期の退院へ向けた積極的な指導を行うこと(グレードA)が強く勧められている。当院での取り組みとしては,ガイドラインの内容に加え,将来の医療制度改革を見据えた,新たな急性期リハシステムのモデルケースとして有意義なものと思われる。