[O-0344] 当院でのクリニカルラダーシステムの取り組みと効果
Keywords:クリニカルラダー, スタッフ評価, 人材育成
【はじめに,目的】
昨今,リハビリセラピストの数は急増し,質を問われる時代となってきている。臨床現場のリハビリセラピストには,リハビリ治療技術に加え,規律・服務,コミュニケーション能力,自己啓発なども求められる。当院リハビリスタッフ(以下スタッフ)は47名在籍し,経験年数は1年~3年目:8名,4~6年目:13名,7~9年目:10名,10年目以上:16名である。リハビリテーションの質向上とトータル的な人材育成を目的に,当院独自のクリニカルラダー(以下ラダー)評価表を作成し,平成25年6月より運用を開始した。当院でのラダーは,①各段階の目標設定によって,スタッフ個々の役割を明確にする。②トータル的な臨床実践能力を評価し,個々の強みと弱みを明確にして育成に役立てる。③スタッフのモチベーションやリハビリ技術の質向上を促すことを目的としている。当院での取り組みと効果を報告する。
【方法】
ラダーは,6段階(1a:新人初期,1b:新人後期,2:新人プリセプター,3:ケースバイザー,4:オールマイティ,5:リーダー・責任者)である。各段階には達成目標を設定し,さらに,7つのカテゴリー(1:規律・服務,2:態度・人間関係,3:患者へのリハ実践,4:多職種・他部門との連携,5:院内外での役割・仕事,6:研修参加・自己啓発,7:ラダーアップ課題)を設け,各カテゴリー内に3~6の具体的評価項目(小項目)を挙げた。小項目内容については,スタッフ全員でのグループワーキングで,当院スタッフとしての必要な能力・意識すべきことなどを出し合い,その結果も参考にして科長(1名)・係長(2名)を中心に作成した。評価は,年2回(6月と12月)の当院の人事考課に合わせて実施している。小項目を5段階(5:特に良い,4:よい,3:ふつう,2:努力を要する,1:非常に努力を要する)で評価してカテゴリー毎に集計している。評価の信頼性・妥当性を考慮し,小項目毎の評価基準表も作成した。スタッフ各自で自己評価を行った後に,科長・係長が他者評価をして個人面談にて本人へフィードバックを行っている。ラダーの目標達成基準は,点数の60%と設定し,科長・係長の最終的な判断にて次の段階へとラダーアップする。また,ラダー実施による効果を確認するため,ラダー使用3回目にアンケート調査を実施した。項目は,①自己の改善点や秀逸点を明確にできたか?②この半年間において,前回ラダーでの改善点・秀逸点を継続して意識できたか?③課題の改善や秀逸点の更なる向上ができたか?④ラダーの実施は良いか?を5段階で評価し,⑤ラダー導入による変化や意見をフリー記載で聴取した。また,スタッフの行動変容にも着目した。
【結果】
アンケート結果では,①自己の秀逸点や改善点の明確化がされているは91%。②この半年間において,前回のラダー評価結果を継続して意識できたは73%,③課題の改善や秀逸点の更なる向上ができたは44%,④ラダーの実施は良いは86%であった。⑤ラダー導入についてのフリー記載では,「自分の役割が明確になった。」「自己の秀逸点と改善点が具体的に示されてわかり易い。」「ステップアップしていくために頑張れる。」など当院ラダーの運用目標に沿ったプラス意見とともに,「ラダー評価実施時期以外は意識できなかった。」「評価基準がわかりにくい項目がある。」「意識しても改善できずに悩んでしまう。」「直属の上司(主任)の評価も反映させてほしい。」などの課題となるような意見もみられた。スタッフの行動変容として,コミュニケーション能力向上のための研修参加,積極的に後輩を指導する姿勢,認定資格を目指す姿勢などがみられはじめた。
【考察】
アンケート結果から,多くのスタッフは秀逸点や改善点を明確化できていた。また,前回の人事考課からの半年間に意識を継続できたスタッフは約7割で,そのうち,約4割のスタッフは向上や改善ができたと回答している。さらに,8割以上がラダーの実施は良いと答えている。点数化できることで自己の強みと弱みが明確になり前向きな捉え方ができ,スタッフの行動変容にも繋がったと考える。一方で,ラダーに対する意識の個人差や評価内容・評価方法についての問題点も見えたため,今後は,スタッフ各自のラダーに対する意識強化と,それを結果に結び付けるためにラダー評価表・評価方法の見直し,さらにはラダー別のスタッフ育成方法も検討していく必要があると考える。
【理学療法学研究としての意義】
クリニカルラダーは,スタッフ個々を育成していく上での一つの有効なツールに成り得ると考える。
昨今,リハビリセラピストの数は急増し,質を問われる時代となってきている。臨床現場のリハビリセラピストには,リハビリ治療技術に加え,規律・服務,コミュニケーション能力,自己啓発なども求められる。当院リハビリスタッフ(以下スタッフ)は47名在籍し,経験年数は1年~3年目:8名,4~6年目:13名,7~9年目:10名,10年目以上:16名である。リハビリテーションの質向上とトータル的な人材育成を目的に,当院独自のクリニカルラダー(以下ラダー)評価表を作成し,平成25年6月より運用を開始した。当院でのラダーは,①各段階の目標設定によって,スタッフ個々の役割を明確にする。②トータル的な臨床実践能力を評価し,個々の強みと弱みを明確にして育成に役立てる。③スタッフのモチベーションやリハビリ技術の質向上を促すことを目的としている。当院での取り組みと効果を報告する。
【方法】
ラダーは,6段階(1a:新人初期,1b:新人後期,2:新人プリセプター,3:ケースバイザー,4:オールマイティ,5:リーダー・責任者)である。各段階には達成目標を設定し,さらに,7つのカテゴリー(1:規律・服務,2:態度・人間関係,3:患者へのリハ実践,4:多職種・他部門との連携,5:院内外での役割・仕事,6:研修参加・自己啓発,7:ラダーアップ課題)を設け,各カテゴリー内に3~6の具体的評価項目(小項目)を挙げた。小項目内容については,スタッフ全員でのグループワーキングで,当院スタッフとしての必要な能力・意識すべきことなどを出し合い,その結果も参考にして科長(1名)・係長(2名)を中心に作成した。評価は,年2回(6月と12月)の当院の人事考課に合わせて実施している。小項目を5段階(5:特に良い,4:よい,3:ふつう,2:努力を要する,1:非常に努力を要する)で評価してカテゴリー毎に集計している。評価の信頼性・妥当性を考慮し,小項目毎の評価基準表も作成した。スタッフ各自で自己評価を行った後に,科長・係長が他者評価をして個人面談にて本人へフィードバックを行っている。ラダーの目標達成基準は,点数の60%と設定し,科長・係長の最終的な判断にて次の段階へとラダーアップする。また,ラダー実施による効果を確認するため,ラダー使用3回目にアンケート調査を実施した。項目は,①自己の改善点や秀逸点を明確にできたか?②この半年間において,前回ラダーでの改善点・秀逸点を継続して意識できたか?③課題の改善や秀逸点の更なる向上ができたか?④ラダーの実施は良いか?を5段階で評価し,⑤ラダー導入による変化や意見をフリー記載で聴取した。また,スタッフの行動変容にも着目した。
【結果】
アンケート結果では,①自己の秀逸点や改善点の明確化がされているは91%。②この半年間において,前回のラダー評価結果を継続して意識できたは73%,③課題の改善や秀逸点の更なる向上ができたは44%,④ラダーの実施は良いは86%であった。⑤ラダー導入についてのフリー記載では,「自分の役割が明確になった。」「自己の秀逸点と改善点が具体的に示されてわかり易い。」「ステップアップしていくために頑張れる。」など当院ラダーの運用目標に沿ったプラス意見とともに,「ラダー評価実施時期以外は意識できなかった。」「評価基準がわかりにくい項目がある。」「意識しても改善できずに悩んでしまう。」「直属の上司(主任)の評価も反映させてほしい。」などの課題となるような意見もみられた。スタッフの行動変容として,コミュニケーション能力向上のための研修参加,積極的に後輩を指導する姿勢,認定資格を目指す姿勢などがみられはじめた。
【考察】
アンケート結果から,多くのスタッフは秀逸点や改善点を明確化できていた。また,前回の人事考課からの半年間に意識を継続できたスタッフは約7割で,そのうち,約4割のスタッフは向上や改善ができたと回答している。さらに,8割以上がラダーの実施は良いと答えている。点数化できることで自己の強みと弱みが明確になり前向きな捉え方ができ,スタッフの行動変容にも繋がったと考える。一方で,ラダーに対する意識の個人差や評価内容・評価方法についての問題点も見えたため,今後は,スタッフ各自のラダーに対する意識強化と,それを結果に結び付けるためにラダー評価表・評価方法の見直し,さらにはラダー別のスタッフ育成方法も検討していく必要があると考える。
【理学療法学研究としての意義】
クリニカルラダーは,スタッフ個々を育成していく上での一つの有効なツールに成り得ると考える。