[O-0364] 5/6腎摘除マウスの酸化ストレスに対する低温サウナ刺激の効果
キーワード:酸化ストレス, 低温サウナ, 5/6腎摘除マウス
【はじめに,目的】
酸化ストレスとは,活性酸素種の産生と消去の平衡関係が崩れた状態である。腎不全者における酸化ストレスの亢進は,心血管リスクを高める因子として注目されている。近年,深部体温を約1℃上昇させるマイルドな低温サウナの反復が血管内皮機能を改善させ,慢性心不全患者の酸化ストレスを軽減させることが示された。本研究の目的は,低温サウナの反復刺激が,5/6腎摘除マウスモデルの酸化ストレスを抑制するか確認することである。
【方法】
雄性マウス(129X1/SvJ,10週齢)を用い無作為に5/6腎摘除術(Nx;n=14)および偽手術(Sh;n=10)に分けた。Nxマウスは術後2週間の血清クレアチニン(Cr)値,24時間尿中アルブミン排泄量(u-Alb)と体重が均等になるように,低温サウナに暴露する群(NxS;n=7),偽低温サウナとして25℃の室温に暴露する群(NxC:n=7)に分けた。Shマウスも同様に低温サウナに暴露する群(ShS;n=5),25℃の室温に暴露する群(ShC;n=5)に分け,ShCマウスをコントロールとした。低温サウナに暴露するマウスは39℃で15分間加熱した後,35℃で20分間保温を5回/週,12週間実施した。実験の開始と終了時に体重,収縮期血圧,24時間蓄尿量,水分摂取量,クレアチニンクリアランス,u-Albを確認した。酸化ストレス関連項目として,尿中8-OHdG,AOPP,抗酸化能(PAO),NOX1 mRNAを測定した。次にそれぞれの群で術後u-Alb排泄を認めたマウス(NxC;n=4,NxS;n=4)と認められなったマウス(NxC;n=3,NxS;n=3)に分けて検討した。統計学的分析にはSPSSを使用し,4群間の差の検定にはSteel-Dwass testを,2群間の検定にはt検定を行った。また,u-Albと尿中8-OHdGとの関係性を確認するためにPearson product-moment correlation coefficientを行い,有意水準はいずれも5%未満とした。なお本研究は,「平成24年度熊本県理学療法士協会研究助成」を受けて実施した。
[y1]
[y1]8-OHdGの見直しをして再検討しましょう。
【結果】
実験終了時のNxS群のCr値(0.3±0.1mg/dL)は,ShC群(0.1±0.0mg/dL)に比して有意な高値を示したが,NxC群(0.3±0.1mg/dL)と有意差は認められなかった。NxS群の24時間u-Alb値(1.8±1.0mg)は,NxC群(3.4±2.8mg)に比して減少傾向であった(NS)。NxS群とNxC群のu-Albと尿中8-OHdGには,それぞれ有意な正の相関が認められた(NxC;r=0.91,R2=0.83,p<0.05,NxS;r=0.82,R2=0.68,p<0.05)が,2群間に有意差は認められなかった。次に術後u-Alb排泄を認めたグループの検討では,NxSマウスのCr値(0.31±0.0mg/dL)は,NxCマウス(0.41±0.1mg/dL)に比して低下傾向であった(NS)。NxSマウスの24時間u-Alb値(2.2±0.4mg/dL)は,NxCマウス(5.3±2.0mg/dL)に比して有意に低下した(p<0.05)。NxSマウスの尿中8-OHdG(NxC;34.9±18.8μg/mg,NxS;24.2±4.8μg/mg)とAOPP(NxC;105.7±87.4μmol/L,NxS;86.1±43.1μmol/L)はNxCに比して低下傾向であり,NxSマウスのPAO(630.4±116.0μmol/L)はNxCマウス(387.5±6.57μmol/L)に比して高値であった。
【考察】
低温サウナへの介入は,術後u-Albが認められたNxSマウスのu-AlbはNxCマウスに比して有意に低下し,酸化ストレスも減少傾向であった。低温サウナは,明らかに尿タンパクが漏れ出ている腎不全状態に対して酸化ストレスを抑制する可能性が示唆された。低温サウナは抗酸化酵素を活性化させるHeat Shock Protein(HSP)32やHSP70を誘導することが報告されており,HSPの活性が酸化ストレスを軽減させ,u-Albを抑制したと推察される。腎障害の進行したNxマウスでは,低温サウナにより酸化ストレスを軽減させることで腎機能保護に作用することが期待できる。
【理学療法学研究としての意義】
運動に腎保護作用があることは既知であるが,温熱の腎保護作用や酸化ストレスの減少が確認できれば,慢性腎不全に対する新しい非薬物療法(物理療法)として期待できる。また,運動機能障害や運動制限のある慢性腎不全患者へも適応できるのではないかと考える。
酸化ストレスとは,活性酸素種の産生と消去の平衡関係が崩れた状態である。腎不全者における酸化ストレスの亢進は,心血管リスクを高める因子として注目されている。近年,深部体温を約1℃上昇させるマイルドな低温サウナの反復が血管内皮機能を改善させ,慢性心不全患者の酸化ストレスを軽減させることが示された。本研究の目的は,低温サウナの反復刺激が,5/6腎摘除マウスモデルの酸化ストレスを抑制するか確認することである。
【方法】
雄性マウス(129X1/SvJ,10週齢)を用い無作為に5/6腎摘除術(Nx;n=14)および偽手術(Sh;n=10)に分けた。Nxマウスは術後2週間の血清クレアチニン(Cr)値,24時間尿中アルブミン排泄量(u-Alb)と体重が均等になるように,低温サウナに暴露する群(NxS;n=7),偽低温サウナとして25℃の室温に暴露する群(NxC:n=7)に分けた。Shマウスも同様に低温サウナに暴露する群(ShS;n=5),25℃の室温に暴露する群(ShC;n=5)に分け,ShCマウスをコントロールとした。低温サウナに暴露するマウスは39℃で15分間加熱した後,35℃で20分間保温を5回/週,12週間実施した。実験の開始と終了時に体重,収縮期血圧,24時間蓄尿量,水分摂取量,クレアチニンクリアランス,u-Albを確認した。酸化ストレス関連項目として,尿中8-OHdG,AOPP,抗酸化能(PAO),NOX1 mRNAを測定した。次にそれぞれの群で術後u-Alb排泄を認めたマウス(NxC;n=4,NxS;n=4)と認められなったマウス(NxC;n=3,NxS;n=3)に分けて検討した。統計学的分析にはSPSSを使用し,4群間の差の検定にはSteel-Dwass testを,2群間の検定にはt検定を行った。また,u-Albと尿中8-OHdGとの関係性を確認するためにPearson product-moment correlation coefficientを行い,有意水準はいずれも5%未満とした。なお本研究は,「平成24年度熊本県理学療法士協会研究助成」を受けて実施した。
[y1]
[y1]8-OHdGの見直しをして再検討しましょう。
【結果】
実験終了時のNxS群のCr値(0.3±0.1mg/dL)は,ShC群(0.1±0.0mg/dL)に比して有意な高値を示したが,NxC群(0.3±0.1mg/dL)と有意差は認められなかった。NxS群の24時間u-Alb値(1.8±1.0mg)は,NxC群(3.4±2.8mg)に比して減少傾向であった(NS)。NxS群とNxC群のu-Albと尿中8-OHdGには,それぞれ有意な正の相関が認められた(NxC;r=0.91,R2=0.83,p<0.05,NxS;r=0.82,R2=0.68,p<0.05)が,2群間に有意差は認められなかった。次に術後u-Alb排泄を認めたグループの検討では,NxSマウスのCr値(0.31±0.0mg/dL)は,NxCマウス(0.41±0.1mg/dL)に比して低下傾向であった(NS)。NxSマウスの24時間u-Alb値(2.2±0.4mg/dL)は,NxCマウス(5.3±2.0mg/dL)に比して有意に低下した(p<0.05)。NxSマウスの尿中8-OHdG(NxC;34.9±18.8μg/mg,NxS;24.2±4.8μg/mg)とAOPP(NxC;105.7±87.4μmol/L,NxS;86.1±43.1μmol/L)はNxCに比して低下傾向であり,NxSマウスのPAO(630.4±116.0μmol/L)はNxCマウス(387.5±6.57μmol/L)に比して高値であった。
【考察】
低温サウナへの介入は,術後u-Albが認められたNxSマウスのu-AlbはNxCマウスに比して有意に低下し,酸化ストレスも減少傾向であった。低温サウナは,明らかに尿タンパクが漏れ出ている腎不全状態に対して酸化ストレスを抑制する可能性が示唆された。低温サウナは抗酸化酵素を活性化させるHeat Shock Protein(HSP)32やHSP70を誘導することが報告されており,HSPの活性が酸化ストレスを軽減させ,u-Albを抑制したと推察される。腎障害の進行したNxマウスでは,低温サウナにより酸化ストレスを軽減させることで腎機能保護に作用することが期待できる。
【理学療法学研究としての意義】
運動に腎保護作用があることは既知であるが,温熱の腎保護作用や酸化ストレスの減少が確認できれば,慢性腎不全に対する新しい非薬物療法(物理療法)として期待できる。また,運動機能障害や運動制限のある慢性腎不全患者へも適応できるのではないかと考える。