第50回日本理学療法学術大会

講演情報

口述

口述48

生体評価学2

2015年6月6日(土) 10:15 〜 11:15 第9会場 (ガラス棟 G409)

座長:武田要(関西福祉科学大学 保健医療学部リハビリテーション学科理学療法学専攻)

[O-0365] ダーツスロー・モーション面用ゴニオメーターの妥当性の検討:in vivo 3次元運動解析を用いて

粕渕賢志1, 森友寿夫1,2, 有光小百合2, 行岡正雄2 (1.大阪行岡医療大学, 2.行岡病院手外科センター)

キーワード:ダーツスロー・モーション, 妥当性, 3次元運動解析

【はじめに,目的】近年,手関節の機能的な運動方向として橈背屈から掌尺屈のダーツスロー・モーション(以下DTM)が注目されており,DTMで日常生活活動(以下ADL)に不自由をきたさないといわれている。我々はDTM面用ゴニオオメーターを作成し,高い信頼性が得られたことを報告した。また,橈骨遠位端骨折後症例のROMとADL能力の関係を調査し,DTM面ROMとADL能力に相関が得られたことを報告した。本研究の目的は,3次元運動解析を用いてDTM面用ゴニオメーターの再現性とDTM時の手根骨の動態を調査することとした。

【方法】対象は,健常成人7名,平均年齢21.9±3.4歳,男性5例,女性2例の7右手関節であった。DTM面用ゴニオメーターを用いて,被験者は前腕回内45°の肢位でゴニオメーターのグリップを把持し,上方への運動を橈掌屈,下方への運動を尺背屈として測定した。DTMは手根中央関節の動きが大きく,手根中央関節の回転軸が橈掌側から尺背側に向かって45°斜めに走っていることから前腕回内45°の肢位で測定した。前腕の回内外の動きを伴わない範囲で,手関節橈背屈位,中間位,掌尺屈位の3肢位で3D-CTを撮影後,動作解析システムを用いて解析した。得られた画像から3次元骨モデルを作成し,volume registration法を用いて3次元アニメーションを作成し,相対的な骨の空間的位置を計算した。橈骨に対する第3中手骨の可動域を手関節の動きとし,DTM面ROMの正確値とした。撮影時のDTM面のROMをゴニオメーターにて5°間隔で評価し実測値とした。また,DTM面用ゴニオメーター使用時の手根骨の動態として,橈骨舟状骨関節,橈骨月状骨関節,舟状骨有頭骨関節,月状骨有頭骨関節の可動域を計測した。統計学的解析は級内相関係数を用いて,DTM面ROMの正確値と実測値から妥当性を算出した。また,橈骨舟状骨関節と橈骨月状骨関節の可動域の差と,舟状骨有頭骨関節と月状骨有頭骨関節の可動域の差を対応のあるt検定を用いて算出した。なお有意水準は5%未満とした。

【結果】DTM面ROMの正確値は96.6°,実測値は89.4°であった。各関節の可動域は橈骨舟状骨関節で44.3°,橈骨月状骨関節23.6°,舟状骨有頭骨関節50.2°,月状骨有頭骨関節76.7°であった。正確値と実測値の級内相関係数はICC=0.712(p<0.02)であった。橈骨月状骨関節は橈骨舟状骨関節より有意に小さく(p<0.01),月状骨有頭骨関節は舟状骨有頭骨関節より有意に大きかった(p<0.01)。

【考察】DTM面用ゴニオメーターは中等度の妥当性が得られた。橈骨に対する第3中手骨の可動域を手関節の動きとしたことから,DTM面用ゴニオメーターにてDTM面ROMを測定することにより,DTM面での運動時の実際の手関節の動きを評価することが可能であると示唆された。また,前腕回内45°でのDTM用ゴニオメーター使用時の手根骨の動態は,舟状骨,月状骨ともに橈骨手根関節より手根中央関節が大きく動いており,橈骨月状骨関節は橈骨舟状骨関節より有意に小さく,月状骨有頭骨関節は舟状骨有頭骨関節より有意に大きく動いていた。矢状面から45°傾斜したDTMは橈骨に対する舟状骨の動きが0に近づき,30°傾斜したDTMでは月状骨の動きが0に近づくと報告されている。また,舟状骨と月状骨の動きが0に近いDTMはpure DTMと呼ばれ,ADLで用いるDTMは舟状骨と月状骨の動きが生じ,functional DTMと呼ばれている。本研究ではfunctional DTMを評価していると考えられる。さらに,DTMは運動方向が矢状面からの角度によりさまざまな運動面を持つ。本研究より,リハビリテーションにてDTMのROM exerciseを回内45°で行えば,手根中央関節を橈骨手根関節より大きく動かせ,特に橈骨月状骨関節の動きが小さい運動が可能であることが示唆された。

【理学療法学研究としての意義】日常生活に重要なDTM面のROMが臨床で妥当性を持って測定できることが示唆された。また,回内45°でのDTMは評価,治療のどちらにも応用可能であることが示された。