[O-0388] 足部接地パターンの違いによるランニングの動作分析
キーワード:三次元動作解析, ランニング, 足部接地パターン
【はじめに,目的】これまで,ランニングの足部接地パターンは,後足部から接地することが一般的であった。しかし,近年のマラソン競技において,速いタイムを出しているケニアやエチオピアの選手は前足部から接地する傾向にある。それに伴い,後足部接地よりも前足部接地の方がランニングには適しているという考えが広まり,前足部から接地するランナーが増加している。しかし,前足部接地と後足部接地の推進特性については明確にされていない。本研究の目的は,衝撃吸収と推進特性という観点から異なる2つの接地方法のメリットとデメリットについて調べ,それぞれのフォームを選択する際の適応と,障害予防の方策を提示することである。
【方法】対象は,健常成人18名(男性14名,女性4名,平均年齢25.9±3.7歳)とした。課題動作は,意識的に後足部から接地したランニング(以下RFS)と,前足部から接地したランニング(以下FFS)とした。計測には,三次元動作解析装置VICON-612(VICON PEAK社製)と床反力計(AMTI社製)6枚を使用した。被検者の体表面上に,臨床歩行分析研究会が提唱する方法に従って赤外線反射マーカーを計11か所に貼付した。三次元動作解析装置によって計測した各標点の三次元座標位置と床反力データを歩行分析演算プログラムDIFF-gaitで演算処理を行い,課題動作中の身体重心位置(前後,上下),床反力作用点,床反力成分(前後,鉛直方向)を算出した。身体重心回りのモーメント(以下,回転力)は,身体重心位置と,床反力作用点,床反力成分から算出した。また,床反力前後成分を用いて立脚期を,立脚前半(後方成分から前方成分に切り替わるまで),立脚後半(前方成分に切り替りからつま先離地まで)に分けて解析を行った。解析項目は立脚期の重心前方移動量(移動距離/平均速度),遊脚期の重心前方移動量(移動距離/平均速度),立脚期前半の床反力鉛直・後方成分積分値,立脚期後半の床反力鉛直・前方成分積分値,立脚期前半の後方への回転力のピーク値とした。統計学的分析は,各解析項目ごとにRFSとFFSの差をt検定を用い比較した。なお,有意水準は危険率5%とした。
【結果】立脚前半床反力後方成分積分値には,有意な差が認められなかった。立脚期の重心の前方移動量はRFSでは0.25±0.05(距離/速度),FFSでは0.24±0.04(距離/速度)であり,RFSが有意に高い値を示した。遊脚期の重心前方移動量は,RFSでは0.12±0.04(距離/速度),FFSでは0.14±0.04(距離/速度)であり,FFSが有意に高い値を示した。立脚後半床反力前方成分積分値は,RFSでは13.2±2.6 N,FFSでは17.4±3.9 Nであり,FFSが有意に高い値を示した。立脚前半床反力鉛直成分積分値は,RFSでは120.2±19.3 N,FFSでは98.5±15.0 Nであり,RFSが有意に高い値を示した。立脚後半床反力鉛直成分積分値は,RFSでは89.0±15.0 N,FFSでは108.6±19.8Nであり,FFSが有意に高い値を示した。立脚前半の身体後方回転力のピーク値は,RFSでは-30.4±21.6 Nm,FFSでは-12.2±20.1Nmであり,RFSが有意に低い値を示した。
【考察】ランニングでは,足部が接地したときに重心は前方への速度を持っているため,足部接地後も重心は慣性により前方に回転していく。RFSとFFSではこの慣性による回転力を,床反力による回転力で対処する方法に違いがみられた。RFSでは,立脚前半において十分に衝撃を吸収することができず,大きな床反力鉛直成分が生じる。の大きな床反力鉛直成分により身体には後方回転力が生じ,慣性による前方回転力が軽減する。慣性による前方回転力を軽減させることで,立脚期に重心が最下点に達するまでの時間が長くなり,立脚期に重心を大きく前方に移動させることを可能としていた。一方FFSでは,立脚前半に十分に衝撃を吸収することで,慣性による前方回転力を軽減させることなく,早期に重心を前方に回転させることで,素早く立脚の後半に切り替え,立脚後半の床反力を大きくすることで,遊脚期に重心を大きく前方に移動させることを可能としていた。
【理学療法研究としての意義】本研究結果から,RFSでは大きな衝撃を利用することで大きく前方に進んでおり,FFSでは衝撃を少なくし蹴り出す力を大きくすることで,遊脚期に大きく前方に進んでいた。RFSとFFSのそれぞれの推進特性を考慮した運動療法や靴の選択を行うことで,ランニングによる障害を予防できると考える。
【方法】対象は,健常成人18名(男性14名,女性4名,平均年齢25.9±3.7歳)とした。課題動作は,意識的に後足部から接地したランニング(以下RFS)と,前足部から接地したランニング(以下FFS)とした。計測には,三次元動作解析装置VICON-612(VICON PEAK社製)と床反力計(AMTI社製)6枚を使用した。被検者の体表面上に,臨床歩行分析研究会が提唱する方法に従って赤外線反射マーカーを計11か所に貼付した。三次元動作解析装置によって計測した各標点の三次元座標位置と床反力データを歩行分析演算プログラムDIFF-gaitで演算処理を行い,課題動作中の身体重心位置(前後,上下),床反力作用点,床反力成分(前後,鉛直方向)を算出した。身体重心回りのモーメント(以下,回転力)は,身体重心位置と,床反力作用点,床反力成分から算出した。また,床反力前後成分を用いて立脚期を,立脚前半(後方成分から前方成分に切り替わるまで),立脚後半(前方成分に切り替りからつま先離地まで)に分けて解析を行った。解析項目は立脚期の重心前方移動量(移動距離/平均速度),遊脚期の重心前方移動量(移動距離/平均速度),立脚期前半の床反力鉛直・後方成分積分値,立脚期後半の床反力鉛直・前方成分積分値,立脚期前半の後方への回転力のピーク値とした。統計学的分析は,各解析項目ごとにRFSとFFSの差をt検定を用い比較した。なお,有意水準は危険率5%とした。
【結果】立脚前半床反力後方成分積分値には,有意な差が認められなかった。立脚期の重心の前方移動量はRFSでは0.25±0.05(距離/速度),FFSでは0.24±0.04(距離/速度)であり,RFSが有意に高い値を示した。遊脚期の重心前方移動量は,RFSでは0.12±0.04(距離/速度),FFSでは0.14±0.04(距離/速度)であり,FFSが有意に高い値を示した。立脚後半床反力前方成分積分値は,RFSでは13.2±2.6 N,FFSでは17.4±3.9 Nであり,FFSが有意に高い値を示した。立脚前半床反力鉛直成分積分値は,RFSでは120.2±19.3 N,FFSでは98.5±15.0 Nであり,RFSが有意に高い値を示した。立脚後半床反力鉛直成分積分値は,RFSでは89.0±15.0 N,FFSでは108.6±19.8Nであり,FFSが有意に高い値を示した。立脚前半の身体後方回転力のピーク値は,RFSでは-30.4±21.6 Nm,FFSでは-12.2±20.1Nmであり,RFSが有意に低い値を示した。
【考察】ランニングでは,足部が接地したときに重心は前方への速度を持っているため,足部接地後も重心は慣性により前方に回転していく。RFSとFFSではこの慣性による回転力を,床反力による回転力で対処する方法に違いがみられた。RFSでは,立脚前半において十分に衝撃を吸収することができず,大きな床反力鉛直成分が生じる。の大きな床反力鉛直成分により身体には後方回転力が生じ,慣性による前方回転力が軽減する。慣性による前方回転力を軽減させることで,立脚期に重心が最下点に達するまでの時間が長くなり,立脚期に重心を大きく前方に移動させることを可能としていた。一方FFSでは,立脚前半に十分に衝撃を吸収することで,慣性による前方回転力を軽減させることなく,早期に重心を前方に回転させることで,素早く立脚の後半に切り替え,立脚後半の床反力を大きくすることで,遊脚期に重心を大きく前方に移動させることを可能としていた。
【理学療法研究としての意義】本研究結果から,RFSでは大きな衝撃を利用することで大きく前方に進んでおり,FFSでは衝撃を少なくし蹴り出す力を大きくすることで,遊脚期に大きく前方に進んでいた。RFSとFFSのそれぞれの推進特性を考慮した運動療法や靴の選択を行うことで,ランニングによる障害を予防できると考える。