[O-0398] 在宅脳卒中者の自宅内外歩行時における下肢装具使用有無の予測因子に関する検討
Keywords:脳卒中者, 自宅内外歩行, 下肢装具
【はじめに,目的】
脳卒中治療ガイドライン2009において,下肢装具(以下,装具)を用いたリハビリテーションは推奨されている。また,邑口らは在宅生活において装具を装着することで歩行・バランス能力の改善や転倒恐怖感の軽減に効果があると報告するなど装具は治療・生活場面共に効果的と考えられる。そのため,当院回復期リハビリテーション病棟では,脳卒中者に対して自宅内外での生活を考慮した治療用装具の作製を行うことが多い。しかし,在宅生活における自宅内外での装具の使用と身体機能の関係は明らかではない。そこで本研究では,当院入院中に装具を作製した脳卒中者において退院時の身体機能から在宅生活での自宅内外歩行時における装具使用の有無に関わる予測因子の検討を行うことを目的とした。
【方法】
対象は2009年~2013年の間で当院入院中に装具を作製し,自宅退院した初発脳卒中者118例のうち質問紙法にてアンケートを実施し,有効な回答が得られた61例(男性38例,女性23例,平均年齢65.4±10.5歳,当院退院~回答までの平均期間772.6±462.0日)とした。これらの対象をアンケート内容(自宅内外それぞれの歩行の有無および装具使用の有無)の回答から,歩行非実施者を除外し,装具使用者を使用群(自宅内23例,自宅外18例),装具非使用者を非使用群(自宅内26例,自宅外7例)に分類した。身体機能の測定項目は,Stroke Impairment Assessment Set(以下SIAS)の麻痺側下肢運動合計点,下肢筋緊張合計点,下肢感覚機能合計点,下肢関節可動域点,体幹機能合計点,非麻痺側下肢機能点とし,当院退院時に測定した。統計学的解析は,自宅内外歩行時それぞれの使用群および非使用群における各項目の2群間比較としてMann-whitneyのU検定を行った。また,自宅内外歩行時それぞれにおいて装具使用の有無を従属変数,2群間比較で有意差を認め,項目間の相関が高くない項目を独立変数として,変数増加法の二項ロジスティック回帰分析を行った。選択された変数については,Receiver Operating Characteristic(ROC)曲線を用い,カットオフ値,感度,特異度,ROC曲線下面積(Area Under the Curve;AUC)を求めた。有意水準は5%とした。
【結果】
各項目に対する2群間比較の結果,自宅内歩行時の装具使用の有無は下肢感覚機能合計点と体幹機能合計点,自宅外歩行時の装具使用の有無は麻痺側下肢運動合計点に有意差を認めたが,その他の項目は有意差を認めなかった。ロジスティック回帰分析の結果,自宅内歩行時の装具使用の有無を従属変数とした場合,下肢感覚機能合計点(p>0.05,オッズ比1.45,95%信頼区間;1.04-2.04)が有意に選択され,自宅外歩行時の装具使用の有無を従属変数とした場合,麻痺側下肢運動合計点(p>0.05,オッズ比1.57,95%信頼区間;1.05-2.38)が有意に選択された。ROC曲線から得られたカットオフ値は,自宅内歩行時の下肢感覚機能合計点は4点(感度79.6%,特異度47.8%,AUC 0.69),自宅外歩行時の麻痺側下肢運動機能合計点は10点(感度85.7%,特異度27.8%,AUC 0.84)であった。
【考察】
装具使用の有無の予測因子として自宅内歩行時では下肢感覚機能合計点,自宅外歩行時では麻痺側下肢運動機能合計点が有意に選択された。自宅内歩行時に関しては,桑江らは在宅での床面材質の違いが脳卒中者の装具歩行に影響をもたらすことを報告しており,自宅内の限られた空間においては,環境に適応した歩行・バランス能力の重要性が高いため,下肢感覚機能合計点との関連を認めたと考える。自宅外歩行時に関しては,鈴川らは外出には実用的な歩行機能が必要と報告しており,自宅内歩行に比べて難易度が高く,実用的な歩行には歩行速度が求められるため,麻痺側下肢運動機能合計点との関連を認めたと考える。また,自宅内外歩行時の装具使用因子がそれぞれ異なる結果が得られたことから,装具は環境により異なる身体機能の不足を補うツールとして重要な役割があると示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の意義は,退院時身体機能から在宅脳卒中者の自宅内外歩行時における装具使用の有無に関する予測因子およびその水準を示した点である。また,在宅脳卒中者の装具使用因子は,歩行環境により異なることが示唆された。
脳卒中治療ガイドライン2009において,下肢装具(以下,装具)を用いたリハビリテーションは推奨されている。また,邑口らは在宅生活において装具を装着することで歩行・バランス能力の改善や転倒恐怖感の軽減に効果があると報告するなど装具は治療・生活場面共に効果的と考えられる。そのため,当院回復期リハビリテーション病棟では,脳卒中者に対して自宅内外での生活を考慮した治療用装具の作製を行うことが多い。しかし,在宅生活における自宅内外での装具の使用と身体機能の関係は明らかではない。そこで本研究では,当院入院中に装具を作製した脳卒中者において退院時の身体機能から在宅生活での自宅内外歩行時における装具使用の有無に関わる予測因子の検討を行うことを目的とした。
【方法】
対象は2009年~2013年の間で当院入院中に装具を作製し,自宅退院した初発脳卒中者118例のうち質問紙法にてアンケートを実施し,有効な回答が得られた61例(男性38例,女性23例,平均年齢65.4±10.5歳,当院退院~回答までの平均期間772.6±462.0日)とした。これらの対象をアンケート内容(自宅内外それぞれの歩行の有無および装具使用の有無)の回答から,歩行非実施者を除外し,装具使用者を使用群(自宅内23例,自宅外18例),装具非使用者を非使用群(自宅内26例,自宅外7例)に分類した。身体機能の測定項目は,Stroke Impairment Assessment Set(以下SIAS)の麻痺側下肢運動合計点,下肢筋緊張合計点,下肢感覚機能合計点,下肢関節可動域点,体幹機能合計点,非麻痺側下肢機能点とし,当院退院時に測定した。統計学的解析は,自宅内外歩行時それぞれの使用群および非使用群における各項目の2群間比較としてMann-whitneyのU検定を行った。また,自宅内外歩行時それぞれにおいて装具使用の有無を従属変数,2群間比較で有意差を認め,項目間の相関が高くない項目を独立変数として,変数増加法の二項ロジスティック回帰分析を行った。選択された変数については,Receiver Operating Characteristic(ROC)曲線を用い,カットオフ値,感度,特異度,ROC曲線下面積(Area Under the Curve;AUC)を求めた。有意水準は5%とした。
【結果】
各項目に対する2群間比較の結果,自宅内歩行時の装具使用の有無は下肢感覚機能合計点と体幹機能合計点,自宅外歩行時の装具使用の有無は麻痺側下肢運動合計点に有意差を認めたが,その他の項目は有意差を認めなかった。ロジスティック回帰分析の結果,自宅内歩行時の装具使用の有無を従属変数とした場合,下肢感覚機能合計点(p>0.05,オッズ比1.45,95%信頼区間;1.04-2.04)が有意に選択され,自宅外歩行時の装具使用の有無を従属変数とした場合,麻痺側下肢運動合計点(p>0.05,オッズ比1.57,95%信頼区間;1.05-2.38)が有意に選択された。ROC曲線から得られたカットオフ値は,自宅内歩行時の下肢感覚機能合計点は4点(感度79.6%,特異度47.8%,AUC 0.69),自宅外歩行時の麻痺側下肢運動機能合計点は10点(感度85.7%,特異度27.8%,AUC 0.84)であった。
【考察】
装具使用の有無の予測因子として自宅内歩行時では下肢感覚機能合計点,自宅外歩行時では麻痺側下肢運動機能合計点が有意に選択された。自宅内歩行時に関しては,桑江らは在宅での床面材質の違いが脳卒中者の装具歩行に影響をもたらすことを報告しており,自宅内の限られた空間においては,環境に適応した歩行・バランス能力の重要性が高いため,下肢感覚機能合計点との関連を認めたと考える。自宅外歩行時に関しては,鈴川らは外出には実用的な歩行機能が必要と報告しており,自宅内歩行に比べて難易度が高く,実用的な歩行には歩行速度が求められるため,麻痺側下肢運動機能合計点との関連を認めたと考える。また,自宅内外歩行時の装具使用因子がそれぞれ異なる結果が得られたことから,装具は環境により異なる身体機能の不足を補うツールとして重要な役割があると示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の意義は,退院時身体機能から在宅脳卒中者の自宅内外歩行時における装具使用の有無に関する予測因子およびその水準を示した点である。また,在宅脳卒中者の装具使用因子は,歩行環境により異なることが示唆された。