第50回日本理学療法学術大会

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口述

口述52

脳損傷理学療法7

Sat. Jun 6, 2015 11:25 AM - 12:25 PM 第8会場 (ガラス棟 G402)

座長:保苅吉秀(順天堂大学医学部附属順天堂医院 リハビリテーション室)

[O-0399] 脳卒中患者に対する装具療法の地域連携に向けての取り組み

装具地域連携サマリー作成を通して

猪村剛史1, 梶原淳子2, 今田直樹1, 岩田学1, 蔵田裕子1, 佐藤優子1, 武田純和3, 沖修一4, 荒木攻4 (1.医療法人光臨会荒木脳神経外科病院リハビリテーション部, 2.医療法人社団CMCコールメディカルルクリニック広島, 3.(有)武田義肢装具製作所, 4.医療法人光臨会荒木脳神経外科病院診療部)

Keywords:装具, 地域連携, 脳卒中

【はじめに,目的】
我が国において2025年問題への対策として,地域包括ケアシステムの実現に向けた取り組みが加速している。地域包括ケアシステム構築の要因である高齢社会の到来により,要介護原因疾患の第1位である脳卒中患者は今後ますます増加することが予測される。脳卒中患者に対して理学療法を行う上で,急性期から回復期,そして生活期へとシームレスに展開することが重要である。しかしながら,近年,脳卒中ガイドラインや理学療法診療ガイドラインにおいて,その重要性が強く示されている装具療法ひとつをとっても,病院で展開される『治療』としての装具療法から生活期で展開される『生活を支える』装具療法の連携は不十分であり,具体的な連携システムの構築が急務である。そこで本研究では,情報連携の推進および標準化を目的に装具地域連携サマリーを開発したため,その使用経過を報告する。
【方法】
装具地域連携サマリーの原案は当院における各病期担当(急性期,回復期,生活期)の療法士および義肢装具士との協議を通して作成した。原案の完成後,他院で訪問リハビリテーションに従事する理学療法士との協議を通して内容の修正を行った。装具地域連携サマリーの運用は,当院で装具作成を行い,退院後に他院もしくは他事業所において装具を継続して使用する症例を対象とし,当院退院時に装具地域連携サマリーおよび装具使用時の動画を送付した。
【結果】
装具地域連携サマリーの内容として,装具に関する基本事項は,装具採型日,装具適合日,装具作成の利用制度,身体障害者手帳の有無等とした。また,装具の仕様は,各継手の名称やその選択理由,作製した装具の参考耐用年数とした。さらに,対象者に対し,退院後の装具に関するフォローアップおよび相談先を明確化するため装具作製業者に関する情報も明記した。
【考察】
本研究では,リハビリテーション医療の中で理学療法士が主体的に活動することの多い装具療法における地域連携を目的に装具地域連携サマリーを開発した。装具療法は各種ガイドラインにおいて,積極的な展開が強く勧められているが,病院および事業所間での連携を密に図ることで,その使用効果が高くなることが予測される。また,退院後に理学療法士が関わらない対象者のために他職種に対しても,不具合時の対応先を伝達することで,不具合の早期発見・早期対処に繋がると思われる。今後は装具地域連携サマリーの見直しを進めるとともに,その運用効果を検証したい。
【理学療法学研究としての意義】
地域包括ケアシステムの到来に向け,病院間連携および病院と在宅の連携がますます重要となる。その中で,理学療法士が重要な役割を果たす装具療法における情報連携を図ることは今後の理学療法学の発展に寄与するものと考える。