[O-0400] 糖尿病患者のバランス機能と神経伝導速度との関連
キーワード:2型糖尿病, バランス, 神経伝導検査
【はじめに,目的】
超高齢社会となった我が国では,高齢糖尿病患者が著明に増加している。高齢糖尿病患者ではバランス機能低下などの要因により転倒リスク,さらにそれに伴う骨折リスクが高いことが報告されている。糖尿病患者では耐糖能障害により末梢神経・自律神経が障害されるが末梢神経障害による足底感覚の低下はバランス機能を低下させ転倒リスクを上昇させることが報告されている。そのため,神経障害の客観的評価として神経伝導検査が行われる。
神経伝導検査は糖尿病性神経障害を客観的に評価する有用な検査であり,神経障害病期進行に伴い伝導速度の遅延が認められると報告されている。その他の神経障害の評価として振動覚や表在感覚があげられるが,どちらも患者本人による主観的評価であり神経障害の評価としては間接的評価に位置づけられる。
本研究ではバランス機能の低下を客観的データである神経伝導検査を用いて観察することにより,末梢神経障害とバランス機能との関連性を検討することを目的とした。
【方法】
当院に入院した運動療法可能な2型糖尿病患者18名(男性:10名,女性:8名,年齢:66.5±7.5歳,身長:159.0±10.4cm,体重:64.8±10.4kg,BMI:25.6±3.5,HbA1c:9.1±0.9,罹病期間:11.4±9.9年)を対象とした。測定項目はバランス機能として静止立位の開眼・閉眼総軌跡長を,神経機能として脛骨・腓骨・腓腹神経伝導速度を測定した。
総軌跡長の測定は床反力計1基(AMTI社,USA)を使用し,床反力計上に裸足で立位となり,踵とつま先を揃えた膝伸展位で開眼・閉眼時の静止立位30秒間のデータを算出した。
神経伝導検査は筋電計(Natus Medical社,US)を使用し,運動神経である脛骨神経・腓骨神経,感覚神経である腓腹神経の神経伝導速度を測定した。運動神経は順行性刺激,感覚神経は逆行性刺激とした。
統計手法はPearsonの積率相関係数を用い開眼・閉眼総軌跡長と脛骨・腓骨・腓腹神経伝導速度の関連を調査した。有意水準は0.05未満とした。
【結果】
閉眼軌跡長と腓腹神経伝導速度に有意な負の相関を認めた(p<0.01,r=-0.702)。その他の組み合わせでは有意な相関を認めなかった。
【考察】
本研究では糖尿病患者の閉眼軌跡長と腓腹神経の伝導速度に有意な負の相関がみられた。
腓腹神経は感覚神経であり糖尿病性神経障害では線維径の太い運動神経と比較してより早期に障害されてくるとされている。本研究の対象は神経障害の比較的軽症例が多いことから感覚神経障害がより強く反映されたものと考えられる。
また,足底感覚の低下は転倒リスクとなると報告されており,閉眼状態では視覚による姿勢の修正が出来ないためより感覚の影響を受けやすいと考えられる。本研究でみられた腓腹神経の伝導速度低下は足底感覚の遅延,低下を示唆するものと考えられる。
臨床的に糖尿病性神経障害の評価には「糖尿病性神経障害を考える会」の診断基準である振動覚,自覚症状,アキレス腱反射が用いられる。我々はこれまでの研究より糖尿病患者において閉眼軌跡長と振動覚感知時間に有意な負の相関があることを報告しており,本研究の結果はそれを裏付けるものと考えられる。
結論として臨床的に行われている糖尿病患者に対する振動覚検査はバランス機能の予測が可能であり,それは神経伝導検査により導き出される客観的データからも裏付けられる。
【理学療法学研究としての意義】
糖尿病患者において神経障害の評価方法として臨床的に行われている振動覚での評価と同様に神経伝導検査においてもバランス機能と有意な相関が得られた。本研究の結果は糖尿病患者におけるバランス機能評価のエビデンス構築の一助となると考えられる。
超高齢社会となった我が国では,高齢糖尿病患者が著明に増加している。高齢糖尿病患者ではバランス機能低下などの要因により転倒リスク,さらにそれに伴う骨折リスクが高いことが報告されている。糖尿病患者では耐糖能障害により末梢神経・自律神経が障害されるが末梢神経障害による足底感覚の低下はバランス機能を低下させ転倒リスクを上昇させることが報告されている。そのため,神経障害の客観的評価として神経伝導検査が行われる。
神経伝導検査は糖尿病性神経障害を客観的に評価する有用な検査であり,神経障害病期進行に伴い伝導速度の遅延が認められると報告されている。その他の神経障害の評価として振動覚や表在感覚があげられるが,どちらも患者本人による主観的評価であり神経障害の評価としては間接的評価に位置づけられる。
本研究ではバランス機能の低下を客観的データである神経伝導検査を用いて観察することにより,末梢神経障害とバランス機能との関連性を検討することを目的とした。
【方法】
当院に入院した運動療法可能な2型糖尿病患者18名(男性:10名,女性:8名,年齢:66.5±7.5歳,身長:159.0±10.4cm,体重:64.8±10.4kg,BMI:25.6±3.5,HbA1c:9.1±0.9,罹病期間:11.4±9.9年)を対象とした。測定項目はバランス機能として静止立位の開眼・閉眼総軌跡長を,神経機能として脛骨・腓骨・腓腹神経伝導速度を測定した。
総軌跡長の測定は床反力計1基(AMTI社,USA)を使用し,床反力計上に裸足で立位となり,踵とつま先を揃えた膝伸展位で開眼・閉眼時の静止立位30秒間のデータを算出した。
神経伝導検査は筋電計(Natus Medical社,US)を使用し,運動神経である脛骨神経・腓骨神経,感覚神経である腓腹神経の神経伝導速度を測定した。運動神経は順行性刺激,感覚神経は逆行性刺激とした。
統計手法はPearsonの積率相関係数を用い開眼・閉眼総軌跡長と脛骨・腓骨・腓腹神経伝導速度の関連を調査した。有意水準は0.05未満とした。
【結果】
閉眼軌跡長と腓腹神経伝導速度に有意な負の相関を認めた(p<0.01,r=-0.702)。その他の組み合わせでは有意な相関を認めなかった。
【考察】
本研究では糖尿病患者の閉眼軌跡長と腓腹神経の伝導速度に有意な負の相関がみられた。
腓腹神経は感覚神経であり糖尿病性神経障害では線維径の太い運動神経と比較してより早期に障害されてくるとされている。本研究の対象は神経障害の比較的軽症例が多いことから感覚神経障害がより強く反映されたものと考えられる。
また,足底感覚の低下は転倒リスクとなると報告されており,閉眼状態では視覚による姿勢の修正が出来ないためより感覚の影響を受けやすいと考えられる。本研究でみられた腓腹神経の伝導速度低下は足底感覚の遅延,低下を示唆するものと考えられる。
臨床的に糖尿病性神経障害の評価には「糖尿病性神経障害を考える会」の診断基準である振動覚,自覚症状,アキレス腱反射が用いられる。我々はこれまでの研究より糖尿病患者において閉眼軌跡長と振動覚感知時間に有意な負の相関があることを報告しており,本研究の結果はそれを裏付けるものと考えられる。
結論として臨床的に行われている糖尿病患者に対する振動覚検査はバランス機能の予測が可能であり,それは神経伝導検査により導き出される客観的データからも裏付けられる。
【理学療法学研究としての意義】
糖尿病患者において神経障害の評価方法として臨床的に行われている振動覚での評価と同様に神経伝導検査においてもバランス機能と有意な相関が得られた。本研究の結果は糖尿病患者におけるバランス機能評価のエビデンス構築の一助となると考えられる。