[O-0408] 大腿骨捻転角と片脚着地動作時の膝関節動態の関係
キーワード:前十字靱帯損傷, 大腿骨捻転角, 膝外反
【はじめに,目的】
膝前十字靭帯損傷は非接触型受傷が多く,その要因として骨形態,疲労,体幹機能,神経筋機能等が考えられている。しかし,受傷時着地動作の中殿筋機能に影響を与えうる大腿骨捻転角と膝前十字靱帯損傷(以下ACL損傷)の発生要因との関連についての報告は少ない。そこで,今回の目的は,大腿骨捻転角と片脚着地動作時の膝関節動態の関連性を調査する事である。
【方法】
理学療法士養成校に協力を依頼し,同校の学生男女13名をランダムに選出した。研究の趣旨を説明後,同意を得た後に両下肢のCraig test,navicular dorp test(各テストは2回測定し平均値を算出した。)を実施した。着地動作時の足部からの膝外反への影響を考慮しnavicular drop testが9mm以上の7肢と,前距腓靱帯断裂による手術既往者1名(2肢)を除外した。着地動作分析対象はそれ以外の男性4名,女性4名(平均年齢21歳),16肢を対象とした。片脚着地動作の測定は,高さ30cmの台上で両上肢を胸の前で組み,片脚立位の状態から床までの降下着地動作を3次元動作解析装置(VICON MX-3 vicon motion system,Oxford,UK サンプリング周波数100Hz)を用いて測定した。マーカーは上前腸骨棘,上後腸骨棘,上前腸骨棘と大転子の中点,大腿外側中央,大腿骨外顆,腓骨外果,踵骨中央,第5中足骨骨底に貼付し,計16個使用した。計測カメラは6台使用し,解析ソフトvicon nexus1.8.1にて解析した。測定前に十分な試技を行い左右1回の測定を実施した。
対象者を大腿骨捻転角の基準上限値以上の群(以下H群n=7,身長162.5±4.5,体重55.5±15.1,大腿骨捻転角37.7±3.91°)と基準値下限以下の群(以下L群n=5,身長173.25±5.9体重67±9.9,大腿骨捻転角18.4±4.54°)に分け,片脚着地後0~100ms間の10ms毎の膝内外反角,膝屈曲角をstudent’s t-testを用いて統計処理し群間比較を行い有意水準は5%未満とした。
【結果】
Craig test,Navicular dorp testの測定値に対しては級内相関係数を求め,Craig test(ICC:右0.989左0.987)Navicular dorp test(ICC:坐位右0.918 坐位左0.914 立位右0.918 立位左0.858)と良好であった。
群間比較は,膝内反角は着地後0ms(L群7.24±2.37°,H群1.94±4.11°),10ms(L群18.94±2.39°,H群2.65±8.87°),20ms(L群20.16±3.23°,H群2.17±9.4°),30ms,(L群16.6±4.13°,H群0.81±4.64°),40ms(L群12.26±3.99°,H群0.57±4.28°)で,膝屈曲角は40ms(L群33.54±10.49°,H群19.42±7.93°),50ms(L群30.52±10.42°,H群14.75±7.66°),60ms(L群26.98±8.59°,H群11.12±8.8°),70ms(L群21.7±6.63°,H群7.88±7.9°),80ms(L群17.38±7.03°,H群6.51±7.63°)でH群が有意に低値を示した。
【考察】
今回の結果から両群ともに着地後100ms間で膝内反の動きから外反方向へ移行する傾向が示された。これは足先接地による足関節底屈内反位からの運動連鎖の影響と推察される。L群では着地直後の膝内反角度が大きく,その後内反角が減少しても内反角を維持しているのに対し,H群では着地直後から内反角が少なく内反角0°まで減少した。
先行研究では,着地後40-100ms間で膝前十字靱帯に対する負荷が最大になるとの報告がある。Kanekoらは30cm台からの降下着地動作の3次元解析装置と表面筋電計を用いた研究で大腿骨前捻のグループは,コントロール群と比し着地後70-100msの膝外反角の増大,股関節,膝関節屈曲の減少,接地後100msの大腿直筋の過活動を報告している。
また,Kogaらは女性のハンドボール選手7例とバスケットボール選手3例のACL損傷の受傷シーンのビデオをmodel-based image-matching techniqueを用いた画像解析を行い,ACL損傷は全例で接地40ms後に起こったと報告している。
今回の調査でもH群は片脚着地後0-40msの膝内反角,40-80msの膝関節屈曲角の減少が認められ,大腿骨捻転角の大きい,いわゆる大腿骨前捻股はACL損傷のリスクファクターの一要因となることが示唆された。
しかし,今回は筋機能に対する調査を行っていないため,降下着地動作時の下肢筋の収縮機序が不明確であり今後の課題である。
【理学療法学研究としての意義】
ACL損傷患者における大腿骨前捻股の存在は臨床上よく確認され,今回の調査結果からもリスクファクターとして示唆された。ACL損傷患者における理学療法や再受傷・反対側受傷を含めた予防には,大腿骨捻転角も考慮したプログラム構築が必要であると思われる。
膝前十字靭帯損傷は非接触型受傷が多く,その要因として骨形態,疲労,体幹機能,神経筋機能等が考えられている。しかし,受傷時着地動作の中殿筋機能に影響を与えうる大腿骨捻転角と膝前十字靱帯損傷(以下ACL損傷)の発生要因との関連についての報告は少ない。そこで,今回の目的は,大腿骨捻転角と片脚着地動作時の膝関節動態の関連性を調査する事である。
【方法】
理学療法士養成校に協力を依頼し,同校の学生男女13名をランダムに選出した。研究の趣旨を説明後,同意を得た後に両下肢のCraig test,navicular dorp test(各テストは2回測定し平均値を算出した。)を実施した。着地動作時の足部からの膝外反への影響を考慮しnavicular drop testが9mm以上の7肢と,前距腓靱帯断裂による手術既往者1名(2肢)を除外した。着地動作分析対象はそれ以外の男性4名,女性4名(平均年齢21歳),16肢を対象とした。片脚着地動作の測定は,高さ30cmの台上で両上肢を胸の前で組み,片脚立位の状態から床までの降下着地動作を3次元動作解析装置(VICON MX-3 vicon motion system,Oxford,UK サンプリング周波数100Hz)を用いて測定した。マーカーは上前腸骨棘,上後腸骨棘,上前腸骨棘と大転子の中点,大腿外側中央,大腿骨外顆,腓骨外果,踵骨中央,第5中足骨骨底に貼付し,計16個使用した。計測カメラは6台使用し,解析ソフトvicon nexus1.8.1にて解析した。測定前に十分な試技を行い左右1回の測定を実施した。
対象者を大腿骨捻転角の基準上限値以上の群(以下H群n=7,身長162.5±4.5,体重55.5±15.1,大腿骨捻転角37.7±3.91°)と基準値下限以下の群(以下L群n=5,身長173.25±5.9体重67±9.9,大腿骨捻転角18.4±4.54°)に分け,片脚着地後0~100ms間の10ms毎の膝内外反角,膝屈曲角をstudent’s t-testを用いて統計処理し群間比較を行い有意水準は5%未満とした。
【結果】
Craig test,Navicular dorp testの測定値に対しては級内相関係数を求め,Craig test(ICC:右0.989左0.987)Navicular dorp test(ICC:坐位右0.918 坐位左0.914 立位右0.918 立位左0.858)と良好であった。
群間比較は,膝内反角は着地後0ms(L群7.24±2.37°,H群1.94±4.11°),10ms(L群18.94±2.39°,H群2.65±8.87°),20ms(L群20.16±3.23°,H群2.17±9.4°),30ms,(L群16.6±4.13°,H群0.81±4.64°),40ms(L群12.26±3.99°,H群0.57±4.28°)で,膝屈曲角は40ms(L群33.54±10.49°,H群19.42±7.93°),50ms(L群30.52±10.42°,H群14.75±7.66°),60ms(L群26.98±8.59°,H群11.12±8.8°),70ms(L群21.7±6.63°,H群7.88±7.9°),80ms(L群17.38±7.03°,H群6.51±7.63°)でH群が有意に低値を示した。
【考察】
今回の結果から両群ともに着地後100ms間で膝内反の動きから外反方向へ移行する傾向が示された。これは足先接地による足関節底屈内反位からの運動連鎖の影響と推察される。L群では着地直後の膝内反角度が大きく,その後内反角が減少しても内反角を維持しているのに対し,H群では着地直後から内反角が少なく内反角0°まで減少した。
先行研究では,着地後40-100ms間で膝前十字靱帯に対する負荷が最大になるとの報告がある。Kanekoらは30cm台からの降下着地動作の3次元解析装置と表面筋電計を用いた研究で大腿骨前捻のグループは,コントロール群と比し着地後70-100msの膝外反角の増大,股関節,膝関節屈曲の減少,接地後100msの大腿直筋の過活動を報告している。
また,Kogaらは女性のハンドボール選手7例とバスケットボール選手3例のACL損傷の受傷シーンのビデオをmodel-based image-matching techniqueを用いた画像解析を行い,ACL損傷は全例で接地40ms後に起こったと報告している。
今回の調査でもH群は片脚着地後0-40msの膝内反角,40-80msの膝関節屈曲角の減少が認められ,大腿骨捻転角の大きい,いわゆる大腿骨前捻股はACL損傷のリスクファクターの一要因となることが示唆された。
しかし,今回は筋機能に対する調査を行っていないため,降下着地動作時の下肢筋の収縮機序が不明確であり今後の課題である。
【理学療法学研究としての意義】
ACL損傷患者における大腿骨前捻股の存在は臨床上よく確認され,今回の調査結果からもリスクファクターとして示唆された。ACL損傷患者における理学療法や再受傷・反対側受傷を含めた予防には,大腿骨捻転角も考慮したプログラム構築が必要であると思われる。