[O-0438] パーキンソン病に対する初期介入と社会参加の関連性
Keywords:パーキンソン病, 初期, 社会参加
【はじめに,目的】
パーキンソン病(以下PD)の総患者数は全国で14.1万人(平成23年政府統計患者調査)と言われている。しかし症状を自覚してから医療機関を受診し,PDと診断されても,初期段階では医師による投薬コントロールと生活指導により経過を追うことが多く,早期からの積極的なリハビリテーション(以下リハビリ)による介入を行うケースは少ない。また,これらの初期段階では,生活動作は自立し,就労や地域などへの社会参加が自立していることが殆どである。
当クリニックには,発症の初期段階から中等度のPD患者が通院されている。その多くが初めて積極的なリハビリ介入(以下初期介入)を行っており,社会参加や社会的に自立した生活への問題解決を目的とした指導・管理を行う割合が高い。今回その経過について調査を行ったので報告する。
【方法】
対象と期間:
2013年6月~2014年3月に当クリニックを受診し,PDと診断後初期介入を行った症例72名(男性40名,女性32名,年齢71±9.6歳,発症から初期介入までの期間1ヶ月~17年5ヶ月,平均5年4ヶ月±4年11ヶ月)とした。
方法:
対象患者に対し初期介入を実施し,開始から2~3ヶ月間を初期介入期間とした。初期介入開始日・終了日,初期介入開始日から6ヶ月後について身体状況,周辺環境,社会参加について調査を行った。調査項目は,発症日,初診日,Hoehn&yahrの重症度分類(以下HY),生活指導歴,社会参加(仕事・家事・余暇活動・運動の実施状況),初期介入期間・6ヶ月後の能力変化,初期問題点に対しての解決度,4大徴候及び小刻み歩行の有無,初期介入前後でのFIMの変化を挙げた。
【結果】
初期介入を行った72名におけるHYの内訳は,HYI14名,II24名,III31名,IV3名であった。以前生活指導を受けた者はHYIII~IVが90%を占めたが,生活指導やリハビリの経験が全くない者ではHYI~IIの割合が多くなり,HYIII~IVは40%であった。
4大徴候別では,振戦有り60%,固縮有り89%,無動有り38%,姿勢反射障害有り43%であり,また小刻み歩行を呈す者が44%であった。
能力が向上した者(以下向上群)は38%,維持出来た者(以下維持群)は50%であった。さらに向上群においては初期介入から6ヶ月経過後も,能力が維持もしくは向上していた者が67%であり,一方維持群では6ヶ月後の能力変化が少なかった。
初期介入時に掲げた問題点において,解決・やや解決した者(以下解決群)は57%,変化無し・悪化した者(以下非解決群)は43%であった。また,解決群の中でも,能力の変化を認めない者が54%,非解決群且つ能力の変化を認めない者は84%であった。
社会参加に関して,運動を定期的に行っている者は解決群で約90%,非解決群で65%であった。仕事や家事を全く実施していない者の割合は解決群で39%,非解決群で35%であり顕著な差は認められなかった。しかし,解決群ではリハビリに対する意欲が高く,且つ,セルフトレーニングを積極的に実施する者の割合が81%と高値であり,非解決群ではリハビリやセルフトレーニング意欲が低い・全身状態が悪い・認知機能の低下を含むセルフトレーニングや自己管理を行う上で実行と理解が不十分のいずれかを含む者は91%の割合であった。
【考察】
初期段階のPD患者へのリハビリ介入が重要であることは多くの研究から報告されているが,今回,初期介入を行ったPD患者では,HYIII~IVが半数近く含まれており,初期段階でのリハビリ介入が実施されずに経過しているケースが多く存在することが伺えた。
PDと診断後初期介入を行った患者では,問題解決が必ずしも,能力向上に結びつくわけではない事が示された。問題解決の為には,能力の向上だけでなく問題点に対する助言や生活改善指導,社会参加の促しや運動機会の向上が必要であり,また患者自身の主体性を引き出す事が重要であると考えた。
初期介入後から6ヶ月間の経過では,能力が向上した群はリハビリの介入頻度を減らしても自己管理の獲得に繋がるケースを一部に認め,初期介入の対応の重要性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
PDの初期段階の患者について,リハビリにおける初期介入に伴う能力向上や問題解決などの効果,及び社会参加の改善が得られるかどうかの検証を行なった。
パーキンソン病(以下PD)の総患者数は全国で14.1万人(平成23年政府統計患者調査)と言われている。しかし症状を自覚してから医療機関を受診し,PDと診断されても,初期段階では医師による投薬コントロールと生活指導により経過を追うことが多く,早期からの積極的なリハビリテーション(以下リハビリ)による介入を行うケースは少ない。また,これらの初期段階では,生活動作は自立し,就労や地域などへの社会参加が自立していることが殆どである。
当クリニックには,発症の初期段階から中等度のPD患者が通院されている。その多くが初めて積極的なリハビリ介入(以下初期介入)を行っており,社会参加や社会的に自立した生活への問題解決を目的とした指導・管理を行う割合が高い。今回その経過について調査を行ったので報告する。
【方法】
対象と期間:
2013年6月~2014年3月に当クリニックを受診し,PDと診断後初期介入を行った症例72名(男性40名,女性32名,年齢71±9.6歳,発症から初期介入までの期間1ヶ月~17年5ヶ月,平均5年4ヶ月±4年11ヶ月)とした。
方法:
対象患者に対し初期介入を実施し,開始から2~3ヶ月間を初期介入期間とした。初期介入開始日・終了日,初期介入開始日から6ヶ月後について身体状況,周辺環境,社会参加について調査を行った。調査項目は,発症日,初診日,Hoehn&yahrの重症度分類(以下HY),生活指導歴,社会参加(仕事・家事・余暇活動・運動の実施状況),初期介入期間・6ヶ月後の能力変化,初期問題点に対しての解決度,4大徴候及び小刻み歩行の有無,初期介入前後でのFIMの変化を挙げた。
【結果】
初期介入を行った72名におけるHYの内訳は,HYI14名,II24名,III31名,IV3名であった。以前生活指導を受けた者はHYIII~IVが90%を占めたが,生活指導やリハビリの経験が全くない者ではHYI~IIの割合が多くなり,HYIII~IVは40%であった。
4大徴候別では,振戦有り60%,固縮有り89%,無動有り38%,姿勢反射障害有り43%であり,また小刻み歩行を呈す者が44%であった。
能力が向上した者(以下向上群)は38%,維持出来た者(以下維持群)は50%であった。さらに向上群においては初期介入から6ヶ月経過後も,能力が維持もしくは向上していた者が67%であり,一方維持群では6ヶ月後の能力変化が少なかった。
初期介入時に掲げた問題点において,解決・やや解決した者(以下解決群)は57%,変化無し・悪化した者(以下非解決群)は43%であった。また,解決群の中でも,能力の変化を認めない者が54%,非解決群且つ能力の変化を認めない者は84%であった。
社会参加に関して,運動を定期的に行っている者は解決群で約90%,非解決群で65%であった。仕事や家事を全く実施していない者の割合は解決群で39%,非解決群で35%であり顕著な差は認められなかった。しかし,解決群ではリハビリに対する意欲が高く,且つ,セルフトレーニングを積極的に実施する者の割合が81%と高値であり,非解決群ではリハビリやセルフトレーニング意欲が低い・全身状態が悪い・認知機能の低下を含むセルフトレーニングや自己管理を行う上で実行と理解が不十分のいずれかを含む者は91%の割合であった。
【考察】
初期段階のPD患者へのリハビリ介入が重要であることは多くの研究から報告されているが,今回,初期介入を行ったPD患者では,HYIII~IVが半数近く含まれており,初期段階でのリハビリ介入が実施されずに経過しているケースが多く存在することが伺えた。
PDと診断後初期介入を行った患者では,問題解決が必ずしも,能力向上に結びつくわけではない事が示された。問題解決の為には,能力の向上だけでなく問題点に対する助言や生活改善指導,社会参加の促しや運動機会の向上が必要であり,また患者自身の主体性を引き出す事が重要であると考えた。
初期介入後から6ヶ月間の経過では,能力が向上した群はリハビリの介入頻度を減らしても自己管理の獲得に繋がるケースを一部に認め,初期介入の対応の重要性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
PDの初期段階の患者について,リハビリにおける初期介入に伴う能力向上や問題解決などの効果,及び社会参加の改善が得られるかどうかの検証を行なった。