[O-0490] 月経痛軽減に対する経皮的電気刺激(TENS)の影響
ウィメンズ・ヘルスケアと理学療法
Keywords:月経, 疼痛, TENS
【はじめに,目的】
月経随伴症状は,日常生活に影響がない程度から医療的援助が必要な病的な症状まで多様である。なかでも月経痛を訴える者が多く,NSAIDsや低用量ピルといった薬物療法が用いられるが,副作用が生じるリスクがある。またNSAIDs無効例も報告されている。近年では月経痛に対して経皮的電気刺激(TENS)を用いた研究が散見され,我々もその有効性を確認している。しかしより有効な刺激パラメーターの同定には至っていない。そこで本研究は,TENSが感覚閾値以上の刺激が必要か,検討することを目的とした。
【方法】
月経時に疼痛を有する健常女子学生38名(21±1歳)を対象とした。研究期間は月経周期における3周期とし,感覚閾値レベルのTENSを行う介入A期,感覚閾値以下レベルのTENSを行う介入B期,TENSを行わない非介入期をランダムに実施した。介入には携帯型治療機器(伊藤超短波社製,Trio300)を使用し,パラメーター設定は周波数70-100Hz,強度は介入A期では筋収縮の起こらない感覚閾値レベルとし,介入B期では50μAとした。刺激時間は30分とし,電極は子宮体部感覚支配領域内であるT12-L1皮膚分節領域に貼付した。測定項目には疼痛の指標にVisual Analogue Scale(VAS)を用い,月経開始後,疼痛出現時を0分とし,60分までは10分毎,それ以降は60分毎に240分まで計10回記録した。調査期間中の服薬の有無,服薬するまでの時間,内省報告,副作用の有無を評価した。解析対象は介入A,B期のみとした。また,VAS測定期間中の240分以内に服薬した周期は除外した。両期の疼痛出現時のVAS値に差がないことを確認したうえで,疼痛出現時のVAS値を1として正規化した変化率を二元配置分散分析およびMann-WhitneyのU検定にて検討した。また,両期でDunnettの検定を行った。検定の統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
VAS測定期間中,240分を通して服薬した者を除いた介入A期27例,介入B期21例を解析対象とした。両期の疼痛出現時のVAS値には差がなかった。経時的変化率は二元配置分散分析にて,交互作用が認められ,60分,120分,240分で有意差を認めた。多重比較では,介入A期において疼痛出現時と比較して30分以降で差が認められ,介入B期では疼痛出現時と比較して差が認められなかった。服薬者は介入A期で9例,介入B期で5例であった。なかでも介入A期で30分までに服薬したものは0例,60分までは2例であった。介入B期では30分までに服薬したものは2例,60分までは0例であった。内省報告では,感覚閾値以上の電気が流れているときに痛みがひいた,という報告が多かった。副作用の報告はなかった。
【考察】
感覚閾値のTENSでは疼痛出現時と比較して,30分以降で疼痛軽減が認められた。感覚閾値以下のTENSと比較して早期からの統計学的有意差は認められなかったが,服薬するまでに要する時間は感覚閾値のTENSの方が長かった。今回は月経開始から疼痛が出現したときを0分として240分聴取しており,0分時の痛みが最大の痛みであるとは考えにくい。感覚閾値以上のTENS使用によって,シナプス前抑制が関与し,最大の痛みを少しでも軽減させたことで服薬までに要した時間が長くなったのではないかと考えている。また,介入A期における電流強度設定で,個人によって差があったため,著明な鎮痛効果が得られなかったのではないか,と考えている。
【理学療法学研究としての意義】
TENSは副作用なしに月経痛を軽減させる手段となる可能性がある。より有効な鎮痛効果を得るためには,シナプス前抑制を考慮すると感覚閾値以上の刺激が必要であると考える。感覚閾値レベルのTENSと服薬の併用で,痛みを少しでも軽減できる可能性もあり,QOL改善,ひいては服薬量減少に繋がればと考えている。
月経随伴症状は,日常生活に影響がない程度から医療的援助が必要な病的な症状まで多様である。なかでも月経痛を訴える者が多く,NSAIDsや低用量ピルといった薬物療法が用いられるが,副作用が生じるリスクがある。またNSAIDs無効例も報告されている。近年では月経痛に対して経皮的電気刺激(TENS)を用いた研究が散見され,我々もその有効性を確認している。しかしより有効な刺激パラメーターの同定には至っていない。そこで本研究は,TENSが感覚閾値以上の刺激が必要か,検討することを目的とした。
【方法】
月経時に疼痛を有する健常女子学生38名(21±1歳)を対象とした。研究期間は月経周期における3周期とし,感覚閾値レベルのTENSを行う介入A期,感覚閾値以下レベルのTENSを行う介入B期,TENSを行わない非介入期をランダムに実施した。介入には携帯型治療機器(伊藤超短波社製,Trio300)を使用し,パラメーター設定は周波数70-100Hz,強度は介入A期では筋収縮の起こらない感覚閾値レベルとし,介入B期では50μAとした。刺激時間は30分とし,電極は子宮体部感覚支配領域内であるT12-L1皮膚分節領域に貼付した。測定項目には疼痛の指標にVisual Analogue Scale(VAS)を用い,月経開始後,疼痛出現時を0分とし,60分までは10分毎,それ以降は60分毎に240分まで計10回記録した。調査期間中の服薬の有無,服薬するまでの時間,内省報告,副作用の有無を評価した。解析対象は介入A,B期のみとした。また,VAS測定期間中の240分以内に服薬した周期は除外した。両期の疼痛出現時のVAS値に差がないことを確認したうえで,疼痛出現時のVAS値を1として正規化した変化率を二元配置分散分析およびMann-WhitneyのU検定にて検討した。また,両期でDunnettの検定を行った。検定の統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
VAS測定期間中,240分を通して服薬した者を除いた介入A期27例,介入B期21例を解析対象とした。両期の疼痛出現時のVAS値には差がなかった。経時的変化率は二元配置分散分析にて,交互作用が認められ,60分,120分,240分で有意差を認めた。多重比較では,介入A期において疼痛出現時と比較して30分以降で差が認められ,介入B期では疼痛出現時と比較して差が認められなかった。服薬者は介入A期で9例,介入B期で5例であった。なかでも介入A期で30分までに服薬したものは0例,60分までは2例であった。介入B期では30分までに服薬したものは2例,60分までは0例であった。内省報告では,感覚閾値以上の電気が流れているときに痛みがひいた,という報告が多かった。副作用の報告はなかった。
【考察】
感覚閾値のTENSでは疼痛出現時と比較して,30分以降で疼痛軽減が認められた。感覚閾値以下のTENSと比較して早期からの統計学的有意差は認められなかったが,服薬するまでに要する時間は感覚閾値のTENSの方が長かった。今回は月経開始から疼痛が出現したときを0分として240分聴取しており,0分時の痛みが最大の痛みであるとは考えにくい。感覚閾値以上のTENS使用によって,シナプス前抑制が関与し,最大の痛みを少しでも軽減させたことで服薬までに要した時間が長くなったのではないかと考えている。また,介入A期における電流強度設定で,個人によって差があったため,著明な鎮痛効果が得られなかったのではないか,と考えている。
【理学療法学研究としての意義】
TENSは副作用なしに月経痛を軽減させる手段となる可能性がある。より有効な鎮痛効果を得るためには,シナプス前抑制を考慮すると感覚閾値以上の刺激が必要であると考える。感覚閾値レベルのTENSと服薬の併用で,痛みを少しでも軽減できる可能性もあり,QOL改善,ひいては服薬量減少に繋がればと考えている。