[O-0512] 動作時における超音波画像診断装置のプローブ固定方法
キーワード:動作時, 超音波画像診断装置, プローブ固定
【はじめに,目的】
理学療法分野において超音波画像診断装置は,骨,筋,腱,靭帯をはじめとした骨軟部組織を体表からは触知できない深層筋までをリアルタイムに評価でき,かつ患者の負担も少ないなどの点から,この分野において理想的な検査法の一つであるとされている。近年の理学療法分野においても多くの研究が行われているが,その多くは座位や臥位における筋の観察や,一定条件を保った状態での筋厚や筋の移動距離を評価しているものにとどまっており,動作時の筋収縮動態を追ったものはない。そこにはプローブを当てる位置を常に一定に保つことがエコーを撮影するうえでの必要条件になるからである。しかしながら,理学療法においては歩行などの動作を分析し,課題特異性を考慮した運動療法を提示していくことが重要であり,そのためには,実際に動作を遂行する際の筋収縮動態が経時的にどのような変化を示すのかを理解しておく必要がある。われわれはこのプローブを固定する方法を自主制作し,これまでにカーフレイズ(以下CR)や歩行開始時の下腿三頭筋の収縮動態,歩行時の中殿筋や側腹筋群の収縮動態を報告してきた。本研究の目的は,超音波画像診断装置を用いて歩行中の側腹筋群とCR時の下腿三頭筋におけるプローブ固定方法の信頼性について検討することである。
【方法】
対象は身体に整形外科的疾患を有していない健常成人とした(側腹筋群:男性1名31歳,下腿三頭筋:男性17名,女性3名,平均年齢23.1±4.4歳)とした。超音波画像診断装置にはMyLab.25(株式会社 日立メディコ社製)を使用し,測定モードはBモード,プローブには12MHzのリニアプローブを利用した。プローブは気泡緩衝材を巻きつけた後に発泡スチロールで囲い固定をし,測定部位にプローブを当てて弾性包帯にて体幹あるいは下腿に巻きつけて身体に固定した。側腹筋群は臍レベルで腹直筋,外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋が同時に写る位置を撮影部位とし,外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋の各筋において,画面端から内側端までの距離を呼気終末期で計測した。下腿三頭筋は腓腹筋内側頭近位1/3を撮影部位とし,筋線維束長を羽状角と筋厚から三角関数にて算出した。側腹筋群はプローブを固定してトレッドミル歩行(4.7km/h)を30秒間実施した後に固定を外すまでを1回,下腿三頭筋はプローブを固定してCR(60bpm)を5回実施した後に固定を外すまでを1回として,それぞれ10回ずつ施行し,各課題前後での距離と筋線維束長を,それぞれ級内相関係数(ICC)を用いて比較検討した。
【結果】
側腹筋群は,外腹斜筋が歩行前13.5±2.9mm,歩行後13.7±3.2mmでICC(1,1)0.93,内腹斜筋が歩行前16.4±1.8mm,歩行後16.0±1.5mmでICC(1,1)0.93,腹横筋が歩行前13.5±2.9mm,歩行後13.5±3.2mmでICC(1,1)0.93であった。下腿三頭筋は,CR前48.9±2.6mm,CR後48.11±3.0mmでICC(1,1)0.91であった。
【考察】
歩行中の側腹筋群,CR時の下腿三頭筋におけるプローブ固定は,ともにICCがShroutの分類において“great”となり,高い固定性が得られていることが示された。超音波画像診断装置は体表からは触知できない深層筋も含めてリアルタイムに筋の収縮動態を確認することができる反面,常にプローブを同じ位置に固定しておく必要があるという欠点を持っている。そのため,これまでは動作時の筋収縮動態を確認することは困難であった。しかしながら,われわれは本研究によるプローブ固定方法を用いて,歩行中の側腹筋群は歩行周期を通じてわずかな変化しか起きず,歩行に着目した場合の側腹筋群には,大きな筋収縮を伴わない運動療法が有効であることの示唆(三津橋ら)や,CRエクササイズでは,前足部を約6cmあげて背屈域を拡大させて実施することで,背屈域において下腿三頭筋は等尺性収縮を示す(久田ら)ことなどを報告している。これらの報告は一般的に考えられてきた動態とは異なっており,これは本研究による固定方法を用いることで実際の動作時の筋収縮動態を得ることが可能となった結果であるといえる。また,エコー動画と課題動作時の映像を同期させることで,どのタイミングでどういった動態の変化が起きるかを明確にすることも可能である。本固定方法により,より明確な裏付けをもって動作や運動療法の提示を行うことができると考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の大きな成果は,これまで困難とされてきた動作時の筋収縮動態を示すことが可能になったことにあり,理学療法分野における超音波画像診断装置の活用方法の幅を広げた点において理学療法研究の意義があると考える。
理学療法分野において超音波画像診断装置は,骨,筋,腱,靭帯をはじめとした骨軟部組織を体表からは触知できない深層筋までをリアルタイムに評価でき,かつ患者の負担も少ないなどの点から,この分野において理想的な検査法の一つであるとされている。近年の理学療法分野においても多くの研究が行われているが,その多くは座位や臥位における筋の観察や,一定条件を保った状態での筋厚や筋の移動距離を評価しているものにとどまっており,動作時の筋収縮動態を追ったものはない。そこにはプローブを当てる位置を常に一定に保つことがエコーを撮影するうえでの必要条件になるからである。しかしながら,理学療法においては歩行などの動作を分析し,課題特異性を考慮した運動療法を提示していくことが重要であり,そのためには,実際に動作を遂行する際の筋収縮動態が経時的にどのような変化を示すのかを理解しておく必要がある。われわれはこのプローブを固定する方法を自主制作し,これまでにカーフレイズ(以下CR)や歩行開始時の下腿三頭筋の収縮動態,歩行時の中殿筋や側腹筋群の収縮動態を報告してきた。本研究の目的は,超音波画像診断装置を用いて歩行中の側腹筋群とCR時の下腿三頭筋におけるプローブ固定方法の信頼性について検討することである。
【方法】
対象は身体に整形外科的疾患を有していない健常成人とした(側腹筋群:男性1名31歳,下腿三頭筋:男性17名,女性3名,平均年齢23.1±4.4歳)とした。超音波画像診断装置にはMyLab.25(株式会社 日立メディコ社製)を使用し,測定モードはBモード,プローブには12MHzのリニアプローブを利用した。プローブは気泡緩衝材を巻きつけた後に発泡スチロールで囲い固定をし,測定部位にプローブを当てて弾性包帯にて体幹あるいは下腿に巻きつけて身体に固定した。側腹筋群は臍レベルで腹直筋,外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋が同時に写る位置を撮影部位とし,外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋の各筋において,画面端から内側端までの距離を呼気終末期で計測した。下腿三頭筋は腓腹筋内側頭近位1/3を撮影部位とし,筋線維束長を羽状角と筋厚から三角関数にて算出した。側腹筋群はプローブを固定してトレッドミル歩行(4.7km/h)を30秒間実施した後に固定を外すまでを1回,下腿三頭筋はプローブを固定してCR(60bpm)を5回実施した後に固定を外すまでを1回として,それぞれ10回ずつ施行し,各課題前後での距離と筋線維束長を,それぞれ級内相関係数(ICC)を用いて比較検討した。
【結果】
側腹筋群は,外腹斜筋が歩行前13.5±2.9mm,歩行後13.7±3.2mmでICC(1,1)0.93,内腹斜筋が歩行前16.4±1.8mm,歩行後16.0±1.5mmでICC(1,1)0.93,腹横筋が歩行前13.5±2.9mm,歩行後13.5±3.2mmでICC(1,1)0.93であった。下腿三頭筋は,CR前48.9±2.6mm,CR後48.11±3.0mmでICC(1,1)0.91であった。
【考察】
歩行中の側腹筋群,CR時の下腿三頭筋におけるプローブ固定は,ともにICCがShroutの分類において“great”となり,高い固定性が得られていることが示された。超音波画像診断装置は体表からは触知できない深層筋も含めてリアルタイムに筋の収縮動態を確認することができる反面,常にプローブを同じ位置に固定しておく必要があるという欠点を持っている。そのため,これまでは動作時の筋収縮動態を確認することは困難であった。しかしながら,われわれは本研究によるプローブ固定方法を用いて,歩行中の側腹筋群は歩行周期を通じてわずかな変化しか起きず,歩行に着目した場合の側腹筋群には,大きな筋収縮を伴わない運動療法が有効であることの示唆(三津橋ら)や,CRエクササイズでは,前足部を約6cmあげて背屈域を拡大させて実施することで,背屈域において下腿三頭筋は等尺性収縮を示す(久田ら)ことなどを報告している。これらの報告は一般的に考えられてきた動態とは異なっており,これは本研究による固定方法を用いることで実際の動作時の筋収縮動態を得ることが可能となった結果であるといえる。また,エコー動画と課題動作時の映像を同期させることで,どのタイミングでどういった動態の変化が起きるかを明確にすることも可能である。本固定方法により,より明確な裏付けをもって動作や運動療法の提示を行うことができると考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の大きな成果は,これまで困難とされてきた動作時の筋収縮動態を示すことが可能になったことにあり,理学療法分野における超音波画像診断装置の活用方法の幅を広げた点において理学療法研究の意義があると考える。