第50回日本理学療法学術大会

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口述

口述70

スポーツ・評価

Sat. Jun 6, 2015 3:00 PM - 4:00 PM 第11会場 (ガラス棟 G610)

座長:小尾伸二(山梨大学医学部附属病院 リハビリテーション部), 竹村雅裕(筑波大学体育系)

[O-0525] 成長期腰椎分離症の治療期間に関わる因子の検討

低出力超音波パルス療法を用いた理学療法の成績

塚田雅弘1, 新居美紗子1, 明本聡1, 山科彩乃1, 池田大佑1, 瀧内敏朗2 (1.たきうち整形外科スポーツクリニックリハビリテーション室, 2.たきうち整形外科スポーツクリニック整形外科)

Keywords:成長期腰椎分離症, 低出力超音波パルス療法, 治療期間

【はじめに,目的】
成長期腰椎分離症は椎弓の関節突起間部の疲労骨折と考えられており,その発生には活発なスポーツ活動が深く関わる。MRIによる早期診断が可能になったことで,骨癒合を目的とした保存療法の成績は向上しているものの,実際には治療期間すなわち運動離脱が長期に及ぶ者,またその期間の心身の負担に耐えられず骨癒合を放棄してドロップアウトする者も少なくない。近年,骨折治療に低出力超音波パルス(low intensity pulsed ultrasound:LIPUS)が使用されるようになり,疲労骨折への効果も報告されている。当院では2010年より本症に対して従来の理学療法とLIPUSの併用を開始し,これまでの治療期間を約40%短縮した事を報告した。また,治療期間の短縮にはLIPUSを用いた理学療法の実施頻度が関与する可能性を示唆したが,効果的な治療法を提示するには至らなかった。彼らが望む一日も早い運動再開には,固定や運動量の管理法,また受療とLIPUSの照射法などを具体的に提示し徹底させることが重要である。本研究の目的は,本症の治療期間に関わる因子を明らかにし,効果的な治療法を検討することである。
【方法】
対象は2013年1月から2014年9月までに初期の腰椎分離症(X線上分離を認めず,MRI T2強調像で椎弓根部に高信号変化を認める)と診断された18歳以下の84名88椎弓のうち,治療を完結した48名48椎弓(男性45名,女性3名,14.3±2.1歳)とした。2椎弓以上の分離4名,治療途中での脱落16名,定期通院中の16名は除外した。治療は外固定,運動量制限,運動療法,LIPUSを通院毎に1回20分(日本シグマックス社製アクセラス)に統一した。全対象者外来対応で,1ヵ月毎にX線,2ヵ月毎にMRIを撮影した。これ以外の通院に関しては患者自身が決定した。X線で分離がなく,MRI所見の消退が認められた時点でスポーツ完全復帰を許可し,ここまでを治療期間とした。すべての診断は同一整形外科医が行った。全対象者の治療期間中央値を境界に2群に分類し,年齢,性別,身長,体重,BMI,分離椎弓高位,分離椎弓根,腰痛自覚から診断までの週数(以下,診断週数),治療開始時および復帰許可時の柔軟性評価3項目(立位体前屈で指先接地の可否,腹臥位で殿部と踵部の接触可否,踵接地状態でのしゃがみ可否),治療開始1ヵ月時点でADL上の疼痛有無(以下,疼痛),診断から復帰許可までの治療回数,治療期間を治療回数で除して得られた日数(以下,治療間隔)を調査し比較した。また,治療期間を従属変数,群間比較で有意差を認めた因子を独立変数としてロジスティック回帰分析を実施した。さらに,ロジスティック回帰分析で抽出された有意な項目でROC曲線分析を行い,カットオフ値を求め,検査特性を算出した。有意水準は5%とした。
【結果】
全対象者の治療期間中央値は63.5日で,A群(男性24名,14.0±2.3歳,中央値59.5日,四分位範囲55.8-61.3日)と,B群(男性21名,女性3名,14.7±1.9歳,中央値122日,四分位範囲75.8-164.0日)に分類した。より早期に復帰を果たしたA群は,B群に比べ治療期間,治療間隔,診断週数が有意に短く,疼痛を有する者は有意に少なかった。ロジスティック回帰分析の結果,治療間隔(オッズ比0.67,95%信頼区間0.51-0.89,p<0.01)と疼痛有無(オッズ比5.19,95%信頼区間1.19-22.7,p<0.05)が有意に選択された(モデルχ2検定p<0.01)。Hosmer-Lemeshowの検定結果はp=0.82,判別的中率は77.1%であった。ROC曲線分析から得られた治療期間を鑑別する治療間隔のカットオフ値は4.8日(感度62.5%,特異度87.5%,曲線下面積0.809)であった。
【考察】
本症の一般的な治療期間(3~5ヵ月)やLIPUS併用での治療期間(2~4ヵ月)を鑑みて今回の対象者の治療成績は概ね良好であり,A群に割り付けられた者は,特に優良な成績を得た者と判断した。本結果から,治療期間には治療間隔および治療開始後1ヵ月時点での疼痛が関与することが示唆された。治療間隔の短さ,すなわち高頻度にLIPUS併用理学療法を実施することが治療期間短縮に関わるという従来の推察が支持された。集中的な受療,LIPUS照射によって治癒が効果的に促進される可能性が示唆された。また,今回得られたカットオフ値(4.8日)は,今後具体的な指示を可能にする有益な知見と考えられる。さらに,ADL上で疼痛が1ヵ月以上持続すると治療期間が延長する可能性が示された事で,固定や運動量に関わる生活指導の重要性が確認された。

【理学療法学研究としての意義】
本症の治療期間に関わる因子について知見を示した。治療期間短縮,治療完遂者増加の一助になる可能性があるものと思われる。