第50回日本理学療法学術大会

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口述

口述70

スポーツ・評価

Sat. Jun 6, 2015 3:00 PM - 4:00 PM 第11会場 (ガラス棟 G610)

座長:小尾伸二(山梨大学医学部附属病院 リハビリテーション部), 竹村雅裕(筑波大学体育系)

[O-0529] 自転車エルゴメータと各種体力テストとの相関関係について

深江航也1, 土居健次朗1, 河原常郎1,2, 大森茂樹1 (1.医療法人社団鎮誠会, 2.千葉大学大学院工学研究科)

Keywords:自転車エルゴメータ, フィールドテスト, 等速性膝伸展筋力

【はじめに,目的】
スポーツ外傷後の復帰に向けリハビリでのトレーニングはさまざま行われている。その中で自転車エルゴメータはフィールドでのトレーニングを行えない時期に選択されることが多い。しかし,自転車エルゴメータを用いたトレーニングを積極的に行ったにも関わらず,復帰した選手のパフォーマンスが低下していることが多く,その効果を十分に活用できているとは言えない。現状,自転車エルゴメータとフィールドテスト,身体機能との関係性について言及した研究は少ない。本研究の目的は自転車エルゴメータにおける異なるエネルギー形態のテストと下肢筋力テスト,フィールドテストとの相関関係を明らかにすることである。
【方法】
対象は整形外科的疾患のない,健常成人男性9名(年齢:24.3±1.9歳,身長:168.5±4.6cm,体重:67.3±8.2kg,体脂肪率:20.0±4.7%)とした。対象全員に対し身長,体重,体脂肪率測定をした。測定機器はInBody720(バイオスペース)を使用した。テスト項目は3つの分類で8つのテストを実施した。自転車エルゴメータの分類では計測機器はpowermaxVII(コンビ)を使用した。①無酸素パワーテスト:10秒間の全力ペダリング後,120秒間の休息を3ステップ行い,体重あたりの無酸素パワー値(以下,無酸素パワー値)(W)を得た。②ウィンゲートテスト:体重の7.5%の負荷で30秒間の最大努力のペダリングを行い,対ピーク%(W)を得た。下肢筋力測定の分類では,イージーテックプラス(Easytech)を用い座位における膝関節伸展の等速性筋力測定を行った。3種類の角速度(③60,④120,⑤180deg/sec)を規定し,最大努力で5回の膝関節伸展運動を行い,体重あたりの最大トルク(以下:最大トルク)(Nm)を得た。フィールドテストの分類では,⑥垂直跳び:被験者には最大努力で手を自由にしたカウンタームーブメントジャンプを3回行い,最高値(cm)を採用した。⑦20m走:対象は20mを全力で駆け抜け,2回計測し速い方のタイムを採用した。スタート姿位はスタンディングスタートで行った。⑧Yo-Yo-Intermittent Recovery Test(以下Yo-Yo-IR Test):対象は20mの距離を規定時間内に一往復した。試行毎に10秒間の休息を挟んだ。トータル2回間に合わなかったらテスト終了とし,それまでの距離を記録とした。8つのテストをもとに自転車エルゴメータのテストと,下肢筋力テスト,フィールドテストをピアソンの積率相関係数を用いて検証した。危険率は5%未満とした。
【結果】
各種テストの結果は,①無酸素パワー値:10.49±1.47W,②ウィンゲートテストの対ピーク%:58.01±11.22W,③等速性膝伸展筋力60 deg/sec:2.51±0.56Nm,④120 deg/sec:2.06±0.36Nm,⑤180 deg/sec:1.72±0.29Nm,⑥垂直跳び:50.92±6.83cm,⑦20m走:3.74±0.15秒,⑧Yo-Yo-IR Test:733.33±284.55mであった。無酸素パワー値と垂直跳び(r=0.67,p=0.04),無酸素パワー値と等速性膝伸展筋力60 deg/sec(r=0.66,p=0.04),120 deg/sec(r=0.72,p=0.02),180 deg/sec(r=0.74,p=0.02)で有意な相関を認めた。
【考察】
無酸素パワー値と垂直跳び,無酸素パワー値と各等速性膝伸展筋力の項目で有意な相関を認めた。今回相関が得られた項目は,運動時間が全て数秒で終わるため,それぞれのエネルギー形態は主にATP-CP系であり,運動様式も自転車,垂直跳び,下肢筋力テストともに下肢の屈伸の運動のみで,技術的な要素が関与しにくく単純な運動様式であった。自転車エルゴメータでの結果と20m走,Yo-Yo-IR Testでの相関が得られなかったのは,エネルギー形態としては他のテスト項目と同様であるが,走動作での下肢を振り出すタイミングや,蹴りだしのタイミングなど技術的な要素が大きく関係してくることが原因と考える。今回の結果から,運動様式が異なるとトレーニング効果が乏しくなり,自転車エルゴメータを用いたトレーニングでは走動作には直接結びつかないと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
自転車エルゴメータとフィールド動作では言及されなかったが,垂直跳びと下肢筋力とは関係があった。よって,自転車エルゴメータの結果を下肢筋力とパワーの指標として使うことができると考えられる。自転車エルゴメータは膝関節にかかるストレスが少ない運動であるので,安全にそして効果的に下肢の筋力とパワーの向上を目的に用いることができる。また,他の要素に関係してくるトレーニングと併用することにより,パフォーマンス向上につなげることができると考える。