[O-0549] 変形性股関節症患者のCT画像を用いた筋断面積とCT値の評価
検者間信頼性の検討
Keywords:変形性股関節症, CT画像, 筋断面積
【はじめに,目的】
変形性股関節症(股OA)患者において,疼痛による筋力低下を示す場合,徒手筋力計を用いた評価は困難である。CT画像を用いた筋肉の評価は筋断面積による量的な評価とCT値にて筋肉を質的に評価することが可能である。CT値はX線吸収の程度を濃度として表しており,筋内の脂肪組織が増大すると数値が低下する。そのため,股OA患者の筋肉の評価にCT画像による筋断面積とCT値の計測を用いることは有用であると考えられる。
我々は昨年,CT画像による筋断面積とCT値の計測について,級内相関係数(Intraclass correlation coefficient;ICC)を用いて検討を行い,検者内信頼性ICC(1,1)が0.9以上と高い信頼性があることを報告したが,検者間信頼性ICC(2,1)については不明のままであった。検者が変わっても一定の評価であるか検討が必要であり,本研究ではCT画像を用いた筋断面積とCT値の計測について検者間信頼性を検討した。
【方法】
対象は股OAにて初回THAを目的に当院へ入院した女性20名40肢(平均年齢62歳)である。筋断面積とCT値の計測は,検者A(臨床経験7年目),検者B(臨床経験4年目),検者C(臨床経験2年目)の3名で,対象の筋肉は大腿四頭筋,中殿筋,大殿筋とした。使用するCT画像は,大腿四頭筋は,左右それぞれの膝蓋骨上から大腿骨長軸方向10cmに最も近い画像,中殿筋と大殿筋は左右それぞれの上前腸骨棘の高さの画像とした。筋断面積(mm2)とCT値(HU)の計測はコンピュータ画像上で目視にて対象の筋肉を選択し,マウスを用いて筋肉の周縁を囲み算出した。検者A,B,C 3名による,検者間信頼性ICC(2,1)を求め,有意水準をP<0.001とした。
【結果】
大腿四頭筋の平均筋断面積は,検者A 3393±105mm2,検者B 3365±108mm2,検者C 3300±121mm2,CT値の平均値は検者A 46±1HU,検者B 46±1HU,検者C 49±2HUであり,検者間信頼性ICC(2,1)は,筋断面積は0.82,CT値は0.52であった。中殿筋の平均筋断面積は,検者A 2261±63mm2,検者B 2187±64mm2,検者C 2223±55mm2,CT値の平均値は検者A 25±2HU,検者B 25±2HU,検者C 25±2HUであり,検者間信頼性ICC(2,1)は,断面積は0.70,CT値は0.95であった。大殿筋の平均筋断面積は,検者A 2566±107mm2,検者B 2484±111mm2,検者C 2499±97mm2,CT値の平均値は検者A 11±2HU,検者B 11±3HU,検者C 10±2HUであり,検者間信頼性(2,1)は断面積が0.84,CT値が0.96であった。すべての筋肉におけるICC(2,1)の数値は有意水準P<0.001を満たしていた。
【考察】
ICCの数値は0.7以上で信頼性が高いとされている。筋断面積のICC(2,1)は,大腿四頭筋と大殿筋が0.8以上,中殿筋は0.7であり信頼性は高いと考えられる。CT値のICC(2,1)は,中殿筋と大殿筋が0.9以上と高値だが,大腿四頭筋は0.52と低値を示した。CT値は組織のX線吸収の濃度を平均化しており計測部位の誤差により,数値が変動すると考えられる。大腿四頭筋のみ計測部位が骨と隣接しており,計測中に骨組織を含む場合がある。その結果CT値が変動しICC(2,1)が低値となったと考えられる。
本研究の結果,CT画像による筋断面積とCT値の計測は中殿筋や大殿筋,大腿四頭筋では筋断面積が,検者間でも信頼性が高い計測法であることが明らかとなった。大腿四頭筋のCT値について計測には,ある程度経験が必要であり,計測部位の誤差を少なくする必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
CT画像を用いた筋肉の評価方法を確立するために,筋断面積とCT値の計測における検者間信頼性の検討を行った。疼痛により十分な筋力が発揮できない場合でも,CT画像を用いた評価であれば筋肉量,筋肉の質を評価することが可能であり,術後の理学療法の有用な情報となり得る。
変形性股関節症(股OA)患者において,疼痛による筋力低下を示す場合,徒手筋力計を用いた評価は困難である。CT画像を用いた筋肉の評価は筋断面積による量的な評価とCT値にて筋肉を質的に評価することが可能である。CT値はX線吸収の程度を濃度として表しており,筋内の脂肪組織が増大すると数値が低下する。そのため,股OA患者の筋肉の評価にCT画像による筋断面積とCT値の計測を用いることは有用であると考えられる。
我々は昨年,CT画像による筋断面積とCT値の計測について,級内相関係数(Intraclass correlation coefficient;ICC)を用いて検討を行い,検者内信頼性ICC(1,1)が0.9以上と高い信頼性があることを報告したが,検者間信頼性ICC(2,1)については不明のままであった。検者が変わっても一定の評価であるか検討が必要であり,本研究ではCT画像を用いた筋断面積とCT値の計測について検者間信頼性を検討した。
【方法】
対象は股OAにて初回THAを目的に当院へ入院した女性20名40肢(平均年齢62歳)である。筋断面積とCT値の計測は,検者A(臨床経験7年目),検者B(臨床経験4年目),検者C(臨床経験2年目)の3名で,対象の筋肉は大腿四頭筋,中殿筋,大殿筋とした。使用するCT画像は,大腿四頭筋は,左右それぞれの膝蓋骨上から大腿骨長軸方向10cmに最も近い画像,中殿筋と大殿筋は左右それぞれの上前腸骨棘の高さの画像とした。筋断面積(mm2)とCT値(HU)の計測はコンピュータ画像上で目視にて対象の筋肉を選択し,マウスを用いて筋肉の周縁を囲み算出した。検者A,B,C 3名による,検者間信頼性ICC(2,1)を求め,有意水準をP<0.001とした。
【結果】
大腿四頭筋の平均筋断面積は,検者A 3393±105mm2,検者B 3365±108mm2,検者C 3300±121mm2,CT値の平均値は検者A 46±1HU,検者B 46±1HU,検者C 49±2HUであり,検者間信頼性ICC(2,1)は,筋断面積は0.82,CT値は0.52であった。中殿筋の平均筋断面積は,検者A 2261±63mm2,検者B 2187±64mm2,検者C 2223±55mm2,CT値の平均値は検者A 25±2HU,検者B 25±2HU,検者C 25±2HUであり,検者間信頼性ICC(2,1)は,断面積は0.70,CT値は0.95であった。大殿筋の平均筋断面積は,検者A 2566±107mm2,検者B 2484±111mm2,検者C 2499±97mm2,CT値の平均値は検者A 11±2HU,検者B 11±3HU,検者C 10±2HUであり,検者間信頼性(2,1)は断面積が0.84,CT値が0.96であった。すべての筋肉におけるICC(2,1)の数値は有意水準P<0.001を満たしていた。
【考察】
ICCの数値は0.7以上で信頼性が高いとされている。筋断面積のICC(2,1)は,大腿四頭筋と大殿筋が0.8以上,中殿筋は0.7であり信頼性は高いと考えられる。CT値のICC(2,1)は,中殿筋と大殿筋が0.9以上と高値だが,大腿四頭筋は0.52と低値を示した。CT値は組織のX線吸収の濃度を平均化しており計測部位の誤差により,数値が変動すると考えられる。大腿四頭筋のみ計測部位が骨と隣接しており,計測中に骨組織を含む場合がある。その結果CT値が変動しICC(2,1)が低値となったと考えられる。
本研究の結果,CT画像による筋断面積とCT値の計測は中殿筋や大殿筋,大腿四頭筋では筋断面積が,検者間でも信頼性が高い計測法であることが明らかとなった。大腿四頭筋のCT値について計測には,ある程度経験が必要であり,計測部位の誤差を少なくする必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
CT画像を用いた筋肉の評価方法を確立するために,筋断面積とCT値の計測における検者間信頼性の検討を行った。疼痛により十分な筋力が発揮できない場合でも,CT画像を用いた評価であれば筋肉量,筋肉の質を評価することが可能であり,術後の理学療法の有用な情報となり得る。