第50回日本理学療法学術大会

講演情報

口述

口述73

予防理学療法6

2015年6月6日(土) 16:10 〜 17:10 第9会場 (ガラス棟 G409)

座長:柴喜崇(北里大学医療衛生学部)

[O-0553] 過去の運動習慣が介護予防教室での運動機能改善効果に与える影響

高垣茉由, 外山敦視 (畿央大学健康科学部理学療法学科)

キーワード:介護予防, 地域在住高齢者, 運動習慣

【はじめに,目的】
2015年には65歳以上の人口が26.8%になると予想されている。そのため高齢者自身が運動機能を維持・改善させる必要があり,そのためには運動習慣の定着が必要となる。介護予防教室の運動機能改善効果には一定のエビデンスが示されている一方,教室終了後に運動習慣が定着されているかは疑問の声もある。我々は運動習慣の定着度合いには過去の運動習慣が影響し,また運動機能の改善の程度も異なるのではないかと考えた。本研究は介護予防教室の運動機能改善と過去の運動習慣の関係,運動習慣の定着と過去の運動習慣の有無との関係を明らかにすることを目的として実施した。
【方法】
対象は月1回の介護予防教室に参加した地域高齢者118人(男性31人,女性87人 平均年齢75.9±6.49)とした。独自に作成したアンケート調査票を用いて,現在・過去の運動習慣の有無について聴取し,6ヶ月間の介護予防教室前後における運動機能変化との関係性を調査した。運動習慣に関しては,習慣的な運動を週2回以上行っている場合に運動習慣ありと判定し,過去の運動習慣については20~50代までの間に習慣的な運動を1年以上行っていたものとした。運動機能評価は5m歩行時間,Functional Reach Test(以下FRT),椅座位体前屈距離,Timed Up and Go Test(以下TUG),30秒立ち上がりテスト(以下CS30),膝伸展筋力体重比(%)の6項目行った。過去の運動習慣と運動機能改善量については介護予防教室前後の測定結果の変化量を過去の運動習慣あり群・なし群の2群に分けて比較した。
【結果】
アンケートの結果より①現在運動習慣あり・過去運動習慣あり39人(33.1%),②現在運動習慣あり・過去運動習慣なし43人(36.4%),③現在運動習慣なし・過去運動習慣あり13人(11.0%),④現在運動習慣なし・過去運動習慣なし23人(19.5%)となった。②,④の比較において,過去に運動習慣がない群の約65%は現在運動習慣がある結果となった。③,④間の比較では過去の運動習慣の有無による運動機能の差は椅座位体前屈距離のみに認められた(p<0.05)。教室前後での運動機能の変化はCS30(p<0.01),椅座位体前屈距離(p<0.01),FRT(p<0.05)の3項目で有意に改善がみられた。過去の運動習慣と運動機能改善については過去の運動習慣の有無ですべての項目の変化量に有意差はみられず,同程度の改善がみられた。
【考察】
過去に運動習慣がない人でも約65%は現在運動習慣があるという結果より,過去の運動習慣は現在の運動習慣定着への影響は少なく,これから運動習慣定着に期待できると考えられる。また過去の運動習慣と現在の運動機能については柔軟性の項目のみ有意差をみとめたが,他の項目では有意差はみられなかった。このことから過去の運動習慣の有無による現在の運動機能への影響は少ないと考えられる。過去の運動習慣に関係なく同程度の改善がみられたことより,運動歴を有する者が有利に運動効果を示すわけではなく,その有無に関わらず教室参加による機能改善は見込まれると予想される。
【理学療法学研究としての意義】
本研究結果より,現在の運動機能の改善や運動習慣の定着には過去の運動習慣の影響は少ないということが分かった。したがって,今まで運動習慣がなかった人でも運動機能の改善や運動習慣の定着は可能であり,過去の運動習慣に関係なく介護予防教室でこれから運動習慣をつけるように指導することが健康増進につながると考えられる。