[O-0558] 横浜市青葉区における介護負担感の実態と影響を与える因子
Keywords:訪問リハビリテーション, 在宅介護, 介護負担感
【はじめに,目的】
横浜市青葉区は,市内で2番目に人口が多く,平均年齢は男女ともに高い地域である(男性81.9歳,女性88.0歳)。また,1人暮らし高齢者数は市内18区中12位と少なく,同居している人が多いことが特徴であるといえる。そのため同居家族(主介護者)の役割が大きいと考える。
当院訪問リハビリテーション(以下 訪問リハ)は,横浜市青葉区訪問リハ利用者の約40%(平成25年度)を担当している。訪問リハの役割として介護負担感の軽減が挙げられ,先行研究による報告も多い。しかし当院担当地域における介護負担感へ与える因子は報告されていない。よって当院の利用者の調査を行い,青葉区の高齢者とその家族の特徴を捉えること,更に主介護者の介護負担感へ影響を与える因子を調べることを本研究の目的とし,訪問リハの役割を検討した。
【方法】
対象は平成26年4月~8月の当院訪問リハ利用者106名のうち,独居を除き回答が得られた78名の主介護者とした。利用者は男性38名,女性40名,年齢60~90歳代である。
方法はアンケート調査とし,平成26年6月9日から実施した。主介護者の基本情報として性別・年齢・利用者との関係・家族構成を調査した。介護負担感は8項目から構成される短縮版Zarit介護負担度(以下J-ZBI_8)を使用し中央値を算出,その結果より9点以上を高負担群(37名),9点未満を低負担群(41名)とし2群に分類した。比較項目は身体的・精神的健康度,1日の介護時間,趣味・余暇活動の有無,それによる身体的・精神的開放度,他の介護保険サービスの利用,利用者 のFunctional Independence Measure(以下FIM)とし検討した。統計にはWilcoxonの順位和検定を使用し,有意水準を5%とした。
【結果】
主介護者は,年齢40代未満1名,40代5名,50代16名,60代17名,70代20名,80代18名,90代1名。男性22名,女性56名であった。利用者との関係は妻が最も多く37%(29名),夫が18%(14名)であった。家族構成は2人が最も多く60%,3人が26%であった。
介護負担感はJ-ZBI_8より,各質問項目の合計点数では両群ともに「行動に困ってしまうことがある」,「家族や友人と付き合いづらくなっていると思う」,「自分の社会参加の機会が減った」の項目で高値であり,「そばにいると気が休まらない」の項目では高負担群のみ高値であった。しかし,「誰かに介護を任せてしまいたいと思うことがある」の項目では両群ともに低値であった。
主介護者の身体的健康度ではとても・まあまあ思うと回答した割合は低負担群が73%,高負担群が49%であり高負担群が24%低く,精神的健康度では低負担群88%,高負担群62%であり高負担群が26%低かった。また,趣味・余暇活動に伴う精神的開放度は低負担群が96%,高負担群が72%であり,高負担群が24%低かった。介護期間は高負担群平均64ヶ月,低負担群平均45ヶ月であった。これらの項目は各々有意差を認めた(p<0.05)。介護者年齢,1日の介護時間,趣味・余暇活動の有無,それに伴う身体的開放度,他の介護保険サービスの利用,FIMに有意差は認められなかった。
【考察】
訪問リハ利用家族の半数以上は老々介護であった。J-ZBI_8の結果より,両群ともに介護上の対応や活動範囲の狭小化における項目が高値であった。介護負担感へ影響を与える因子として介護時間やFIM,他の介護保険サービスの利用との関連は認められなかった。高負担群の特徴として,介護期間が長期であること,精神的・身体的健康度が低値であること,趣味・余暇活動に伴う精神的開放度が低値であることが挙げられる。これらより,たとえ自分の時間が確保できていても,心から安らげているわけではないと考えられる。
よって,主介護者の介護予防を含めた社会参加を視野に入れた介入が必要であると考える。西井らは介護者に対しても本人に対すると同様に,介護上の健康不安に対する相談といったような精神的なアプローチが必要になると述べている。そのため,今までのリハビリ内容に加え,写真などを利用した介助方法指導の徹底,主介護者に対しての声かけなど主介護者の精神的な負担を減らすことが重要であると考える。その上で地域の催し物を把握し提案するなど,活動範囲の拡大に対して目を向ける働き掛けが介護負担感の軽減に繋がると考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究では,主に横浜市青葉区の特徴を調査し,訪問リハが医療と地域の繋がりにできる1つの役割を検討した。主介護者に対して精神的・社会参加を念頭においた援助が介護負担感の軽減となる可能性が示唆された。
横浜市青葉区は,市内で2番目に人口が多く,平均年齢は男女ともに高い地域である(男性81.9歳,女性88.0歳)。また,1人暮らし高齢者数は市内18区中12位と少なく,同居している人が多いことが特徴であるといえる。そのため同居家族(主介護者)の役割が大きいと考える。
当院訪問リハビリテーション(以下 訪問リハ)は,横浜市青葉区訪問リハ利用者の約40%(平成25年度)を担当している。訪問リハの役割として介護負担感の軽減が挙げられ,先行研究による報告も多い。しかし当院担当地域における介護負担感へ与える因子は報告されていない。よって当院の利用者の調査を行い,青葉区の高齢者とその家族の特徴を捉えること,更に主介護者の介護負担感へ影響を与える因子を調べることを本研究の目的とし,訪問リハの役割を検討した。
【方法】
対象は平成26年4月~8月の当院訪問リハ利用者106名のうち,独居を除き回答が得られた78名の主介護者とした。利用者は男性38名,女性40名,年齢60~90歳代である。
方法はアンケート調査とし,平成26年6月9日から実施した。主介護者の基本情報として性別・年齢・利用者との関係・家族構成を調査した。介護負担感は8項目から構成される短縮版Zarit介護負担度(以下J-ZBI_8)を使用し中央値を算出,その結果より9点以上を高負担群(37名),9点未満を低負担群(41名)とし2群に分類した。比較項目は身体的・精神的健康度,1日の介護時間,趣味・余暇活動の有無,それによる身体的・精神的開放度,他の介護保険サービスの利用,利用者 のFunctional Independence Measure(以下FIM)とし検討した。統計にはWilcoxonの順位和検定を使用し,有意水準を5%とした。
【結果】
主介護者は,年齢40代未満1名,40代5名,50代16名,60代17名,70代20名,80代18名,90代1名。男性22名,女性56名であった。利用者との関係は妻が最も多く37%(29名),夫が18%(14名)であった。家族構成は2人が最も多く60%,3人が26%であった。
介護負担感はJ-ZBI_8より,各質問項目の合計点数では両群ともに「行動に困ってしまうことがある」,「家族や友人と付き合いづらくなっていると思う」,「自分の社会参加の機会が減った」の項目で高値であり,「そばにいると気が休まらない」の項目では高負担群のみ高値であった。しかし,「誰かに介護を任せてしまいたいと思うことがある」の項目では両群ともに低値であった。
主介護者の身体的健康度ではとても・まあまあ思うと回答した割合は低負担群が73%,高負担群が49%であり高負担群が24%低く,精神的健康度では低負担群88%,高負担群62%であり高負担群が26%低かった。また,趣味・余暇活動に伴う精神的開放度は低負担群が96%,高負担群が72%であり,高負担群が24%低かった。介護期間は高負担群平均64ヶ月,低負担群平均45ヶ月であった。これらの項目は各々有意差を認めた(p<0.05)。介護者年齢,1日の介護時間,趣味・余暇活動の有無,それに伴う身体的開放度,他の介護保険サービスの利用,FIMに有意差は認められなかった。
【考察】
訪問リハ利用家族の半数以上は老々介護であった。J-ZBI_8の結果より,両群ともに介護上の対応や活動範囲の狭小化における項目が高値であった。介護負担感へ影響を与える因子として介護時間やFIM,他の介護保険サービスの利用との関連は認められなかった。高負担群の特徴として,介護期間が長期であること,精神的・身体的健康度が低値であること,趣味・余暇活動に伴う精神的開放度が低値であることが挙げられる。これらより,たとえ自分の時間が確保できていても,心から安らげているわけではないと考えられる。
よって,主介護者の介護予防を含めた社会参加を視野に入れた介入が必要であると考える。西井らは介護者に対しても本人に対すると同様に,介護上の健康不安に対する相談といったような精神的なアプローチが必要になると述べている。そのため,今までのリハビリ内容に加え,写真などを利用した介助方法指導の徹底,主介護者に対しての声かけなど主介護者の精神的な負担を減らすことが重要であると考える。その上で地域の催し物を把握し提案するなど,活動範囲の拡大に対して目を向ける働き掛けが介護負担感の軽減に繋がると考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究では,主に横浜市青葉区の特徴を調査し,訪問リハが医療と地域の繋がりにできる1つの役割を検討した。主介護者に対して精神的・社会参加を念頭においた援助が介護負担感の軽減となる可能性が示唆された。