第50回日本理学療法学術大会

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口述

口述74

地域理学療法7

Sat. Jun 6, 2015 4:10 PM - 5:10 PM 第10会場 (ガラス棟 G602)

座長:鈴木英樹(日高在宅療養支援センター デイサービス)

[O-0560] 若年から中年層の専業主婦と就業女性の健康関連QOLに関連する因子

北川智美1,2, 樋口由美1, 藤堂恵美子1, 今岡真和1, 石原みさ子1, 平島賢一1, 上田哲也1, 安藤卓1, 水野稔基1, 安岡実佳子1 (1.大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科, 2.四條畷学園大学リハビリテーション学部)

Keywords:健康関連QOL, 専業主婦, 就業女性

【はじめに,目的】健康関連QOL(HR-QOL)は血圧や機能障害,慢性疾患等との関連性が報告されており,HR-QOLの維持,向上対策が必要である。健康日本21(第二次)では対象集団ごとの特性に応じた対策を推進している。30歳~50歳代女性においては,健康診断,人間ドッグの受診率が低いことが報告されており,健康状態が把握されづらい状況にある。先行研究では専業主婦は就業女性と比べてHR-QOLの値が低いと報告されているが,HR-QOLに影響する因子についての研究は認められない。HR-QOLを向上させるためには影響因子を把握する必要がある。そこで本研究は,若年~中年層の専業主婦と就業女性のHR-QOLに関連する因子を比較,検討することを目的とした。
【方法】大阪府南部A市一地区の全3,301世帯に無記名自記式の質問紙を2部ずつ配布した。平成25年6月に配布し,900世帯から回答が得られ,回収率は27.3%であった。分析対象者は介助なしに1人で歩けると回答した65歳未満の専業主婦および就業女性とした。調査内容には,性別,年齢,身長,体重,就業形態,家族構成,教育歴,睡眠時間,過去一年間の通院・入院歴(受診歴),歩行能力,身体活動量,SF-8の項目を含んだ。HR-QOLはSF-8の成績から身体的サマリースコア(PCS:physical component summary)と精神的サマリースコア(MCS:mental component summary)を評価した。身体活動量は国際標準化身体活動質問票の結果から3段階で評価した。分析は,年齢,教育歴,睡眠時間を4群,BMIを5群,受診歴,連続歩行可能時間(歩行時間)を3群に再分類した。その後,専業主婦,就業女性それぞれに対し,PCSおよびMCSを50以上と50未満の2群に分け,年齢,BMI,未就学児童の有無,要介護者の有無,教育歴,睡眠時間,受診歴,歩行時間,身体活動量とのχ2乗検定を行なった。さらに,PCSおよびMCSそれぞれを目的変数へ,単変量解析で有意な関連が認められたものを説明変数とし強制投入したロジスティック回帰分析を行なった。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】有効回答が得られた分析対象者は,専業主婦140名,就業女性154名であった。専業主婦は平均47.3歳,BMI21.3,就業女性は47.0歳,BMI21.4であった。PCSは,専業主婦49.8±7.1,就業女性50.2±6.3,MCSは,専業主婦48.8±6.3,就業女性47.8±6.4であり,以上の項目に専業主婦と就業女性間の有意差はなかった。
専業主婦では,PCS50未満群に比して50以上群に受診歴がない者が有意に多かった。MCS50未満群に比して50以上群は,年齢が高く,歩行時間が長く,身体活動量が高い者が有意に多かった。就業女性では,PCS50以上群に,受診歴がない者,歩行時間が長い者が有意に多かった。一方,MCSと有意差を認めたものはなかった。
単変量解析で複数の変数が有意であった専業主婦のMCS,就業女性のPCSに対して多変量解析を行なった結果,専業主婦では,歩行時間が長いこと(OR:1.75,95%CI:1.10-2.76),身体活動量が高いこと(OR:1.63,95%CI:1.01-2.63),年齢が高いこと(OR:1.52,95%CI:1.10-2.11)が,MCSが高い有意な因子であった。就業女性では,受診歴がないこと(OR:2.83,95%CI:1.06-7.55),歩行時間が長いこと(OR:2.34,95%CI:1.51-3.62)が,PCSが高い有意な因子であった。
【考察】本研究において,専業主婦では過去一年間の受診歴がない者はPCSが高く,連続歩行可能時間が長く,身体活動量が高く,高年齢である者はMCSが高かった。就業女性では過去一年間の受診歴がなく,連続歩行可能時間が長い者はPCSが高かった。専業主婦,就業女性とも受診状況が身体面に影響を及ぼしていたが,専業主婦ではさらに,歩行能力,身体活動量が精神面に影響を及ぼしていた。このことから,専業主婦に対しては家族構成などに関わらず,身体機能とともに身体活動量といった生活スタイルへのアプローチにて,精神的な健康状態を改善させる可能性が示された。一方,就業女性の精神的な健康状態は個人的な因子や身体活動量との関連がみられなかったことから,就業状態などの因子が影響を及ぼしている可能性も考えられ,これらの因子を検討する必要がある。
【理学療法学研究としての意義】理学療法士が地域住民の健康増進分野に携わる機会が増えており,健康に関わる因子を把握する必要がある。若年~中年層の専業主婦においては,身体機能面へのアプローチとともに生活スタイルの指導の重要性が示唆された。